地球のステージスタッフによる日誌です。その日の公演の様子や、なにげない毎日の様子をお伝えしていきます。
みなさんどんどんコメントをお寄せください。ステージに関すること、広く伝えたいことなど書き込んで、つながりの輪を広げていきましょう。

信州松本、穂高養生園のイベント

2017.04.03 Monday

皆さま
 いよいよ近づいてきた長野県松本市のすぐ近くにおける、特別なイベント。
 実はまだ現時点で募集人数に足りておらず、少々寂しい状況です。
 もしも、じゃあ行ってみるか、と思われる方いらっしゃいましたらお申し込みくださいませんでしょうか。

 正直ぽんと支払うような金額ではないかとは思いますが、全食事付き、すべて込みでこの値段です。
 何とぞご検討のほど、よろしくお願いいたします!

 

その詳細は→こちら

 

桑山紀彦

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サディールとの出逢い

2017.04.02 Sunday

その子が遅れて入ってきたとき、一瞬ハッとしました。

 どこかで逢ったことのあるような、前から知っているような、瞳が大きく、でもどこかもの悲しそうな、それがサディールとの出逢いでした。

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 今日は僕が直接スーパーバイズする4日連続講座の1日目です。

 実際にジャラゾーン難民キャンプの子どもたちに来てもらい、その子たちにうちのパレスチナ人スタッフが直接心理社会的ワークショップを行い、それを桑山が脇から指導するというものです。子どもたちは選抜で集められた6人でしたが、サディールは遅れてやってきた12歳でした。

 

 今日は1日目。2次元表現の写真言語法と描画法のスーパーバイズでしたが、写真言語法で「吹き出し法」を使っているときのことでした。サディールは一枚の写真を迷わず手に取り、そしてしばし思案していました。

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 その写真はイスラエル軍の監視塔の写真でした。そこに漫画などでよく使う”吹き出し”を持っていって、自分がその人(この場合は監視塔を人称化したものです)になりきって物語を語るという内容です。

 サディールは静かに語り始めました。

「私は軍の監視塔。そう2つあるうちの古い時代からの監視塔。この前子どもたちが近づいてきたので私は、新しい監視塔にさっそく連絡した。その子たちを撃つようにと…。」

 そこでサディールは泣き崩れました。

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 うちのスタッフが素早くそばに来て背中をさすり始めました。

「いいのよ。よく話したわ。もういいのよ。」

 するとサディールは目を真っ赤にしながら言いました。

「いいえ、最後まで話しをさせて!」

 瞳はまっすぐ前を見ていました。

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「実はね、4人の子どもが銃撃された先週の事件の中に、私のいとこがいたの。彼の名前はゲーセム。頭に銃弾を受けて今重体で入院中なの。大好きで小さいころからずっと遊んできたいとこだったの。」

 サディールは最後までちゃんと説明してくれました。

 たった12歳。でも向き合う力をたたえた12歳。

 写真の中の軍の監視塔になりきり、その事件を伝えようと語った12歳。

 難民キャンプに暮らすなかで、なかなか栄養が足りないのか腕はまだまだ細く、折れそうです。

 でも心は強く、しっかりと向き合おうとしていました。その心の強さがサディールの瞳にあふれる強さにつながっているように思います。

 そしてスタッフに伝えました。

「子どもたちが泣き出しても、決して動揺しないように。辛いことをさせたとか、辛いことを思い出させてしまったと思って、消極的になってはなりません。かえって”泣いてもらえた”と受け止め、そうやって吐き出せたこと、ちゃんと思い出して泣けたことを高く評価していって下さい。もちろん、涙が少し引くまで背中をさすり、時間をゆっくりとるように。そして涙をもってして語ったその子を、たくさんの拍手で最後に評価してあげてください。」

 パレスチナのスタッフはみんなちゃんとわかっていて、大きくうなずきながらサディールに励ましの拍手を伝えていました。とても温かい、大切な時間が流れていました。

 

 考えてみれば、今回の歩さんの消防車破棄の件のように。辛いこと、悲しいことに向き合いきれず、そのことを「なかったこと」のようにして日々を送ろうとする津波後の日本人の”ある大人たち”に対して、このパレスチナの難民キャンプに暮らす12歳の少女のなんと心の強いことか。

 

 サディールの夢や希望も聞きました。現実も聞きました。

 その上で最終日の4日目にみんなで制作する短編映画「オリーブの声」(シナリオ:桑山紀彦)。その主人公になってもらうようにお願いしたところ、大きな瞳で、

「やる!」

 と言ってくれました。

 

 パレスチナ。ヨルダン川西岸のジャラゾーン難民キャンプに暮らす少女、サディール。彼女は確実にまた「地球のステージ」の主人公になっていくでしょう。

 サディールたちとの4日間、まだまだ続いていきます。

 

桑山紀彦

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実習篇

2017.04.01 Saturday

一昨日は心理社会的ケアのセミナー第2日目、実践編でした。

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 通常子どもたちと1年かけてやる演目を1日でやるというのですからそもそも無理がありますが、それでも写真言語法に始まり、描画、粘土細工と次々に進んでいきました。みんな飲み込みが早く、1言うと10わかるスタッフもたくさんいて頼もしい限りでした。

 特にうちの現地駐在田川奈美さんが事前に何回か実践をやってくれていたおかげで、非常にスムースに進んでいきました。

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 しかし、音楽ワークショップに入ると事態は一変。いきなり難しい雰囲気が漂い始めました。そう、アラビア語は日本語と違って音階に言葉が乗りにくいのです。語尾を伸ばしたり切ったり振るわせたり…。四分音符や八分音符にはなかなか乗りにくい言語、それがアラビア語です。だから歌詞作りでは常に苦労します。音階に歌詞がついてこないのです。しかし実はそれはアラビア語そのものが「音楽の一つの形式」に似た言語だからでもあります。だから既存の西洋音楽の「音符」には乗りにくい。アラビア語独自の歌詞作りが必要なのです。

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 それでもうちの常勤スタッフとなってくれたサリーナは実は音楽が大好きで、メロディも一発で覚えたし、難しいアラビア語の「歌うような」歌詞もちゃんと音符の中に収めていきます。見事でした。

 こうして音楽ワークショップのなんたるかを13人のボランティアやスタッフがみんなで一緒になって学習していってくれました。

 最後はシネマワークショップの実践。実際に機材を使って練習してみました。みんな初めての映画制作機材なのでドキドキしながらもスマホで撮影していました。家族に見せるんでしょうね。

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 こうしてファシリテーターになる人たちへの講座は2日間で終わっていきました。4月1日からは実際にモデルとなる子どもたちに来てもらい、子どもたちに対して、トレーニングを受けているスタッフたちが実際に関わっていきます。それを僕が横でスーパーバイズするという形式です。

 ちょっとしたショートフィルムもつくっていけたらと思っています。

 

 季候も段々よくなってきて、過ごしやすいパレスチナ、ヨルダン川西岸の「春」です。

 

桑山紀彦

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破棄された消防車

2017.03.30 Thursday

今日、消防車はそこにありませんでした。

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 昨夜にでも持っていったんでしょうか。今日の午前中にうちのスタッフが行ったところもぬけの殻でした。

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 何の返事もよこさず、何の反応もせず、何事もなかったように持ち去って廃棄する名取市。山田司郎市長。言葉もありません。

 これが行政が考える「復興」というものなのでしょう。

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 日本人はいつからこんなに向き合えなくなってしまったのでしょうか。

 「思い出したくないから」と頑なに破棄を訴えるある一人のご遺族と、「見ていると辛くなるから」と消防車に見向きもしない地元の消防団員。きっと生き残った自分の存在に腹立たしいという気持ちが強いからなんだろうと、関係者がその心情を教えてくれましたが、だったらなおのこと向き合うことが、亡くなった櫻井歩さんへの恩返しなのではないでしょうか。

 

 全国から色んな形で名取市や山田市長にアピールを向けて下さった皆様、本当にありがとうござました。そして結果がこうなってしまって申し訳ありません。

 

 つぶせという一人のご遺族や消防団の「正義」。破棄が決まっていると主張し続ける市役所の「正義」。向き合うために残すべきだと主張する桑山の「正義」。どれもその人なりの「正義」なのだと思いますが、この世に不動の「正義」とはないものなのでしょう。だから世界は常に混乱の中にあります。

 僕が主張する「残すべき」という正義も、一部のご遺族や消防団、名取市長の正義からすれば「おかしなこと」なのでしょう。

 でも、被災して、やっとの思いで立ち上がって、もう二度とこんな目に遭わないようにするためにずっと考えてきた僕たちの6年という時間はかけがえのないものでした。共に悩み、考え、落ち込み、励まし合い、支え合ってきた「向き合う仲間たち」との出逢いが、あの津波によってもたらされた心の傷や苦しみを受け入れていくことにとても役に立ったと思います。

 これからも強固に反対した一人のご遺族と消防団員は、ずっとあの日のことに背を向けて「忘れたような気持ちになって」過ごしていくことになります。それを僕は「それでも正義なのだから」と受け入れることはできません。なぜならば僕は医者だからです。心の健康を取り戻すために医者は闘わなければなりません。「健康であるべき」という「正義」を貫くように教えられてきたからです。

 「見ると辛くなるから破棄してほしい」などという気持ちを持っている人を「心が健康」とはとても言えません。それは心の中に大きな”闇”を抱えている証拠であり、それが近い将来”病気”になる可能性が高いからです。

 手術が痛くて嫌だから、胃にできた腫瘍を取り除きたくないという患者さんを目の前に、

「そうですか、ではやめますか。」

 とは言えない。命のために

「ダメです。痛みに耐えて手術を受けてください。」

 と説得するのが医師の正義です。

 命を飲み込んだ消防車をあえて正視し、そこに向き合うことはとても痛くて辛いことです。でもそれは心の健康のためにとても大切なことです。

 痛みをこらえて治療を受け入れ、頑張って健康になろうとしている人たちがいる中で、

「心が痛くなるので、向き合いたくありません。」

 と言い放つ人を名取市は容認していることになります。

 自分の町に、これからどれほどのPTSDの患者さんが出るかの予測もできないで平気で消防車をつぶしてしまう、そんな町や市長に何の期待ができるのでしょう。

 大変残念な知らせを聞いた、このパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地域もまた、おかしな政治で人々は苦しんでいます。だから僕たちは市民活動をやめない。微力だけど、無力じゃないことを誇りにこれからも正しいと思うことを貫いていきたいと思います。

 でも一方で単なる「モノ」として平気であの消防車をつぶしているであろう、名取市の職員の姿に心底はらわたが煮えくりかえります。破棄を依頼さえた民間の業者さんはどんな気持ちであの消防車をスクラップにしているのでしょう。

 

 天国で見ている櫻井歩さん、あなたは絶対に「あの消防車を残して、次の災害に備えろ!」と訴えているに違いない。そんなあなたの消防車を守り切れず、本当に申し訳ありませんでした。

 

桑山紀彦

 

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歩さんの赤い消防車が破棄されようとしています

2017.03.30 Thursday

以下の見解はあくまで心療内科医としての桑山紀彦が「個人」として行っている主張であり、「地球のステージ」はその内容や方向性について、一切関知していないことを表明します。

 

櫻井歩さんの亡くなった赤い消防車が破棄されようとしています。

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 津波後すぐに一旦借り受け、近くの自動車整備工場に置かせて頂き、山形南高等学校のみんなが泥と塩気を払って保存状態をよくして保存していました。

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 その間、脅迫状をもらったり、誹謗中傷されながらも市役所と消防署と渡り合うなかで、長女の優真さんと出会い、「残してほしい」というメッセージをもらいました。その甲斐あってまずはつぶさないでおこうと、渋々なったのがほぼ5年前。それからは閖上の消防分署の中に安置されてきました。
 しかし土地整備の影響で消防分署を壊すこととなり、それに伴い「消防車を破棄する」とのこと。
 突然の通達です。「もういいだろう」と言わんばかりです。
 そもそも「遺族も破棄を望んでいる」などと言いますが、それは3人のご遺族の中のある一人の人物だけが反対しているものです。直接電話した僕はそれがよく分かります。
 実際に歩さんのご遺族である櫻井優真さんと妹さんは今でも「残してほしい」とはっきりおっしゃいますが、以下の理由で「もう仕方ないかと思っている」とのこと。
・自分たちはぜんぜん関わって来れなかった。今更残してほしいと声高には言えない
・他のご遺族と対立するようなことは避けたいと思う
 とても残念です。
 でも、考えてみればあの消防車はご遺族のものもなければ誰のものでもない、人類のものです。そして「思い出したくないから」と言っている一人のご遺族の意見をを私たちは受け入れていいのでしょうか。
 どれほどのご遺族が「思い出したくない気持ち」を抱えながら苦しんできたでしょう。でも、そこで立ち止まらないで歩き始めたとき、「忘れてはいけないから」に変わって行かれたご遺族をたくさんみてきました。
 「思い出したくないから」を「忘れてはいけないから」に変えることができなかった人が、あの消防車をつぶしてもいいと言っているのです。でも、そんな立ち止まったままのご遺族を非難することはできません。
 だからこそ、みんなの気持ちを集めて消防車を保存することを訴えませんか。
 もちろんそれは「展示」ではなくあくまで今は「保存」なのです。しかも、仙台空港の横で半壊したご自宅を残し続けている鈴木英二さんが「私の家の敷地に引き取ってもいい」といっているのですから、余計に「なぜつぶすのか」と思います。
 以下が名取市役所へのメールによる投書方法です。ぜひ全国の皆さまからのメールで、この動きを阻止していきませんか。
 キーワードは以下です。
 ・市長は「山田司郎」さん
 ・宮城県名取市下増田分団の赤い消防車
 ・3人の消防団員がなくなった消防車
 ・向き合うべき
 ・「思い出したくない」ではなく「忘れてはいけない」
 ・語りつぐ未来への遺産

https://www.shinsei.elg-front.jp/miyagi/uketsuke/dform.do…

 よろしくお願いいたします。
 ちなみに名取市役所秘書室の電話番号は、022-384-2107(直通)です。
 今こそ、力をお貸し下さい。

桑山紀彦

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