自分たちの原点

今日は山形県村山市の西郷小学校のステージでした。

先日からの大雪で道の脇にはたくさんの雪が積もり、山形らしい風景になっていました。

今住んでいる名取は海沿いなので、雪はとても少ないです。
僕たちは1996年に「地球のステージ」の初演をこの山形の地で行いました。そして2009年までこの山形に事務所を置いて活動してきました。
最初の頃は山形県内の公演ばかりでした。
でもあっという間に広がり、いつの間にかたくさんの学校で公演できるようになっていきました。それはいつも山形市のような大きな学校だけでなく、山形の田舎にある小さな町の小さな小学校だったりしたのです。
山形県戸沢村の穂高ちゃんは、中学校3年生の時にステージを見て、医師になろうと決意しました。現在は新潟大学医学部の4年生です。
山形県真室川町の優子さんは、中学校の時にステージを見て世界に目が向き、今はJICAで看護師をしています。
みんなそうやって巣立っていきました。

山形の「田舎」と言われるところには、すばらしく素直で優しい子どもたちがおり、優しいまなざしでその子どもたちを見守る先生たちがおり、一生懸命地元に根を下ろして暮らすお父さんお母さんがおられました。
その頃はそれが当たり前で、今日はどんな田舎のすてきな子どもたちに逢えるか、と思いながら雪の中を、雨の中を、風の中を、嵐の中を機材を積んでみんなで出かけたものです。
美しい山形の風景に感動しながら「故郷篇」のビデオもすべて山形の風景で制作していました。

日が沈んでいくと言うだけで感動していたあの時代、音楽と映像というツールをシンクロさせながら、少しでもより良く伝わるように、と日々努力していました。まだスライドはガッチャン、ガッチャンとアームが出入りして送る「スライド・プロジェクター」でしたし、ビデオはS-VHSテープを使っていました。
いま、日本全国で公演できるようになり、事務所も大きくなって人も増え、名取に拠点を移して5年が過ぎていきました。
実はその昔から名取市の公演は実に多く、今日そのデータを見たら、ありとあらゆる学校で公演していました。だから僕たちは名取へ向かったのです。その中に「下増田中学校で公演」というものがありましたが、これはすぐ横の「下増田小学校」の間違いですね。2002年に公演していました。まさかその学区に引っ越すとは･･･。隔世の感があります。

（積み出しの一コマ。ずっとこうやってスクリーンを屋根に載せていました。）
そして今日の西郷小学校は、本当に素直で我慢強い小学生たちのすばらしい聞く姿勢に感動し、先生たちの暖かで強いまなざしに感動し、そしてお父さんお母さんのやる気の強さに感動する1日でした。
山形は実は「暗幕のない県」なのです。かなり多くの学校で暗幕がありません。だから昼間の公演が難しい場合が多いのです。西郷小学校もそうでした。しかしお父さんお母さんはあきらめない。保護者の中に工事関係の方がいて、このイントレを組んでなんと借りてきた暗幕を吊って会場を暗くしてしまうのです。すごい技術ですよね。感嘆しました。

そんなことをいとも簡単にやってしまう山形のお父さんお母さんたち。
僕たちの原点である「山形」の姿がそこにありました。こういったやる気のある学校や保護者の皆さんに支えられて、僕たちは大きくなってきたんですね。
離れてわかる山形のすばらしさ。切なかったですね。
　
帰路、美しい夕陽が空を染めていきました。

皆さんにとって、故郷はどこでしょう。今離れていますか？
でも、思いを馳せることは誰にでもできるはず。時々、想い出したように、故郷には帰るべきだとつくづく思いました。
明日はいよいよ7年目のJICAエッセイコンテストの受賞された皆さんのためのステージです。毎年多くの出逢いがありました。岐阜の笠松は河合さんとの出逢いもそこでした。
日本が平和でありますように。
桑山紀彦