パレスチナ人は、天性の俳優である

モハマッドの撮影方法や編集テイストがプロレベルであることは承知したわけですが、どれだけカメラワークがよくても演技が下手では全てが台無しになります。

その視点で考えると、パレスチナ人は全く演技経験がない素人と言われる人でも、完璧なまでに演じます。今回の短編「魔法の鏡」は、その出演者全てがケアを受ける側の裨益者(ひえきしゃ)なわけですが、その演技力のすごさに圧倒されました。

とにかく演技に入り込む、感情移入が半端ない、真剣そのもの…。

そして今日もシネマワークショップのノウハウを教えるべくファシリテーター自らが演者となり、ある家族を演じたのですが、お父さんがはしごから落ちて大けがを負うというシーンの撮影に臨むファシリテーター(養成中)の演技がこれまた迫真でど迫力です。

そして救急車で運ばれるというシーンなわけですが、何と本物の救急車と救急隊員を借りてきて演技の臨むその姿勢に驚きました。救急隊員に、

「救急要請が来たらどうするの?」

と聞いたら、

「その時はそっちを優先するから、撮影は後回しだ!」

と返ってきましたが、そりゃあ当たり前だろうと思いながらも、救急車も救急隊員もこの「心のケア」が目指す映画制作に賛同してくれているのです。

そしてこの救急隊員たちも「にわか俳優」になって撮影に参加するわけですが、何のてらいも無くカメラの前で演ずる姿にまた感動しました。

もうパレスチナ人は天性の俳優であるという確信が胸に去来します。

するとファシリテーター(養成中)の一人が教えてくれました。

「ずっと抑圧され、ずっと苦労してきたからこそ、演ずることで自分を表現しようとするチカラが強いのよ。」

その言葉にパレスチナで心のケアをおこなう全ての意味が見えた思いでした。

この2本目の映画、「命(原題:Life)」も制作編集が終わり次第公開したいと思います。

請うご期待!

桑山紀彦

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