初冬の宮城県公演

冬になると復興庁の予算を受けて、宮城県内の学校を回らせてもらえるようになってもう5年。今日も初冬の宮城県北部にお邪魔しました。

栗駒山も近くに見えて、今日は快晴。手前の田んぼに水が入る5月はきっと一面湖のようになるに違いありません。

今日の舞台は栗原市の志波姫中学校。市町村合併で栗原市になりましたが、昔はいろんな名前の町がありました。ここは旧志波姫町です。近くには渡り鳥で有名な伊豆沼があります。この時期は渡り鳥がカッコいいV字を描きながら飛んでいます。

名取事務所からは絵莉香ちゃん、そして遺族会から丹野さんも来てくれて始まった公演の最後には久しぶりに「津波篇」を公演しました。今日は名付ければ「10年目の津波篇」となりますが、今の中学校1年生はあの津波の時3歳か4歳なので、ほとんど記憶にないという子どもたちも増えてきました。そこで私たち津波の被災者はあえてあの日のことから始まり、そこからの9年間をどう歩んできたのかを綴る「津波篇」を持っています。リハーサルで「津波篇」の「あの街へ」を歌うと、あの頃のことがこみ上げて来て涙が出そうになります。

あっという間の9年でした。その間も多くの災害が起こり、人が亡くなっています。そして今年は新型コロナ禍…。人間はこれでもかというほどに「生きる」ことを試されていると思う。それはあの日、2011年の3月11日を筆頭に、まだまだ多くの試練がきっとやってくるのでしょう。それでも光は見えてくる。丹野さんと一緒にいると、共に歩んできた9年が思い出されます。この人と出逢えたことは、悲しい津波という出来事ではあったけれど大きな財産となりました。そして同時に残された者がせめて果たすべき役割を果たしていくことを改めて自覚した公演でした。

また来週も宮城県公演は続いていきます。

桑山紀彦

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