3月11日が近づいてくる

 今日は今年初めての外来でした。

 たくさんの患者さんがいらっしゃって、新患も増えていらっしゃいます。正直いうと、このままで3月11日を迎えられるのだろうか・・・。という不安が強くなってきています。
 一体「その日」を僕たちはどう迎えればいいのか、見当もつきません。
 前の日は眠れないでしょう。
 当日、朝から落ち着かないでしょう。
 ちょっとしたことですぐに涙が出てきて、まともな食事もとれないでしょう。
 午後2時46分にサイレンが鳴るでしょう。
 身体を電流が駆け抜け、気絶するかもしれません。
 午後4時2分に僕たちは閖上中学校にいるでしょう。
 天を仰ぎ、また気を失うかもしれません。
 どれほどの人が、「その日」を恐れ、「その日」にどう向き合うのか、今から模索が始まっています。今日の外来もそんな外来ばかりでした。
 大切な人や家を失って、みんな年中行事が苦手になっています。
 盆、正月、その人の誕生日、そして9月11日や3月11日。
 その節目ごとに、
「あの人はもうここにいない。」
「わたしたちはもうそこにいない。」
 ことを嫌と言うほど突きつけられてまた落ち込むのです。
 その一番最たるものが、2万人近い人々の命日になってしまった3月11日です。僕たちは遺族会の皆さんと一緒に、閖上中学校で慰霊碑の除幕式という大切な瞬間を過ごす予定があるので、少しは救われるかもしれませんが、何も変わらない仮設住居で独りその瞬間を迎えなければならない人だっています。
 いたたまれない気持ちでいっぱいです。
 早くも3月11日を意識することで不安、焦燥、落ち込み、イライラ、慟哭が始まっています。一体これから3月11日までの心療内科の外来はどうなっていくのでしょうか。
 これが被災地の現状です。
 来るべき最大の記念日反応を前に、無力を感じながらたじろぐばかりです。
 それでも、6日~7日は閖上中学校卒業生のみんなと冬のワークキャンプです。その参加者の一人、浜田くんの中日新聞の記事が載っているので、ぜひご覧下さい。もちろんもう一人の参加者、相沢寿弥くんの記事も合わせてどうぞ。
桑山紀彦

3月11日が近づいてくる」への11件のフィードバック

  1. 5日夜のNHKでジオラマの放映を見ていました。すごく大切なことをしているのが感じ取れ、少し明るい気分になっていました。
    そして今、中日新聞の記事を読んでかなり感傷的になっています。
    3月11日を迎える不安や複雑な気分・・・重く感じます。
    被災地の外では、どのような気持ちで心をあわせれば良いのか、軽々しく云う言葉が見つかりません。
    やはり普段通りに、普通にしていれば良いのでしょうか。

  2. 桑山 紀彦 様
    昨日のNHK拝見しました。
    とても大切なお話で感激をしました。
    先生の想いが全国に広がることを切に望んでいます。

  3. 中部新聞の記事を読みだしたら、涙がこぼれ
    こんなに苦しんでいる人たちがいるのに
    「おめでとうございます」と新年の挨拶をしている場合じゃない!
    という気分になってきました。
    でも、でも、その気持ちばかりでは、3月11日を乗り越えることができない
    とも、分かります。
    三上さんがおっしゃるように、
    「被災地の外では、どのような気持ちで心をあわせれば良いのか、軽々しく云う言葉が見つかりません」
    と、同じ想いです。

  4. 昨晩、1930-2045に、NHK総合の「親子でナットク・イチからQ」という番組で、桑山さんの閖上での活動がでていました。私は、たまたま番組の制作過程にかかわったのですが、震災のことを取りあげる場合は、こどもの心のケアもぜひ取りあげてほしいといってました。オンエアでは,私たちが、話していたことの20%くらいしかでていませんでしたが、推薦していた桑山紀彦さんがでていたのでよかったです(実は知らされていなかったので驚きました)。私は,写真と名前だけが3秒ほどでていました。

  5.  カウンセリングの講習会や講演会に参加するとよく「共感」という言葉を耳にします。
     「共感」とは、相手の悩んでいることや苦しんでいることを受け止め、「大変ですね、あなたが悩んでいることはよく分かります。しかし、そんなことに負けないで強く生きてください。頑張ってください」というのは「共感」ではありません。そんな声をかけても相談者は苦しみから逃れられないというのです。それは「共感」ではない。「共感」とは同じように共有することにあるといいます。そのことにより相談者は救われるというのです。
     そうはいうものの、心療内科医や臨床心理士がつねに真の共感を続けたならば、その悩みを聞いた臨床心理士や心療内科医もこころに悩みを持つことになるといいます。
     「こころの病」は伝染するのです。またそのような臨床心理士や心療内科医だからこそクライアントは相談するのだと思いますが、桑山先生が、すべてのゆりあげで暮らす人々の悩みを背負い込むことはないと思います。素人のボクが医学博士にこのようなことをいうのははなはだ失礼なんですが、人々の悩みを背負い込む桑山先生ではなくて、多くの人々の「力」になる桑山先生を全国の仲間が応援しているのです。
     桑山先生にはボクたちにはできない人助けにボクたちは共感しているのです。
     ボクたちには、人を助ける技量も知識も能力もありません。しかし、それらすべてを持ち合わせている桑山先生にボクたちは託しているのです。人助けをボクたちに代わっておやりになられているのです。
     ですから、3月11日を迎えようとしている「苦しんでいる人々」の力になってあげてください。
     「共感」はあくまで「共感」です。そこにはクライアントと医者が対峙しているだけです。桑山先生は”医者”です。
     ”医者”として「共感」し、”医者”として治療に当たってください。
     多くの「悩める人々」はそれを桑山先生に希望しているのです。全国の多くの「仲間」が、そのことを桑山先生に託しているのです。
     3月11日という日を、こころ静かに迎えられることを桑山先生に託し願っています。
     和歌山  なかお
    追伸
     偉そうなことを言ってしまいました。
     お許しください。
     

  6. 3.11をどう迎えたらいいのか、私もわからないでいます。
    想いを寄せながらも被災地の皆さんの苦しみをどうすることもできません。
    被災地以外の地で、節目だからと、特別なことをすることが本当にいいことなのか?
    ひたすら祈るだけです。

  7. もう 人生ゲームは 終わりましたか?
    のほほ~んと 暮らしていること申し訳ありません。
    災害にあわれた皆さんが 一生懸命 生きていかれているのに
    今回 被害を受けなかった私たちも TVで津波の映像を見るだけで 胸が痛くなります。
    桑山さんのことば ひとつひとつに 涙したり 微笑んだり 頷いたり
    3月11日は 桑山さんが倒れないように 全国の応援団が 後ろから 支えていますよ。

  8. 桑山先生 全国の心配して下さる皆さん 温かいお気持ちありがとうございます。
    まだまだ心から元気にはなりませんが、3月11日だけを特別に思っている人だけではないと思います。
    こちらでは小さいながらも余震はまだ続いています。
    いつまた大きな余震があるか、気を抜いていません。
    心が折れそうになっている人が多いことは事実です。
    自分の心を支えることが日課になり、落ち込んだり励ましたりで一日が終わります。
    救いはこの苦しみが、地震を体験した人ほぼ全員わかってくれることです。
    地震国に住んでいる限り、どこかで大きな地震が起きるかもしれません。自然の力にはかないません。
    出来る限りの備えと覚悟をもって生活しましょう。
    桑山先生 3月11日は静かにその日が来ると思います。
    いつも患者さんの苦しさを受け止めてくださる先生の穏やかな笑顔に、温かい心を取り戻してクリニックを後にします。

  9. 「その日、 どうしたらいいのか 分からない。 倒れてしまうかもしれない。」
    そう思う、桑山さんのその気持ちが 痛いほど解りました。
    私も その日には、息子がなくなった日の記憶が 全身によみがえってきて じっとしている事ができませんでした。
    動悸がしてきて 涙が自然に溢れました。
    周りの人達が
    忘れたかのように、普通にしている事が腹立たしかったり、情緒が安定しませんでした。
    でも、一年一年、鉛が溶けて行くように受け入れて、
    その日を過ごせるようになっていきました。
    私は、
    3月11日 その日は 一緒に 祈り 思いをひとつに していたいと、思っています。
    一緒にその日を頑張りましょう。

  10. 米国で心理カウンセラーをしております。3月11日を挟んで50日間ボランティアで桑山先生のお手伝いが出来ればと願い地球のステージの方へ履歴書をメールで送らせて頂きました。共に活動できる機会に恵まれれば幸いです。どうぞ宜しくご検討下さい。

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