キリバス2日目

今日はキリバス2日目。協力隊の工藤成美さんの仕事現場に行きました。

協力隊における環境教育という職種は大きく2つに分かれます。一つはその国のローカルな環境をまもろうとするもの。もう一つは地球環境に関するものです。大抵はその国の環境保全の活動なので直接的には地球環境の保全にはつながらないものが多いのですが、成美さんの活動はある意味ローカルだけど、それがグローバルにも関与するというものでした。

現在の仕事は3R(ゴミを減らす(Reduce)、再利用する(Re-use)、再生する(Re-cycle))という視点で行われていますが、ゴミ拾いの啓蒙活動はReduceであり、もう一つの堆肥作りはRe-use&Recycleに相当すると思いました。3ヶ月かけてコンポスト(たい肥)づくりを進めています。それはおそらく何をとっても「この国初」のことばかりのようです。キリバスの問題は「野菜が採れないこと」。それは耕作面積が少ない、農業が盛んではない、高潮被害で塩害がもろにでる、肥料がない等、複数の要件が絡み合って深刻です。スーパーに行ってキャベツを一玉買おうとするとAUD$25~2000円もするのです。つまり野菜は全て輸入品であり、そのために野菜不足に陥り今キリバスでは生活習慣病が大問題。平均寿命はそれでも延びて60歳ですが多くの隣人達が心臓や脳血管による突然死で亡くなっています。だからこのたい肥作りは環境保全でもあるし、健康保全であるということです。実に多様な活動を成美さんは展開していました。

午後からはMTC(Marine Training Center)で活動する石倉志朗さんと会いました。彼は船舶学校で日本語を教えている岡山県の現役高校教師です。今もずっと日本語を教えていますが、その15人の生徒さんの中にいたのがネイナさんでした。

彼はアベママ島という小さな孤島に生まれ育ちました。それ以降の話ははりがねの人生ワークショップで彼なりに表現した内容をたどりたいと思います。専門学校で学ぶ彼らは実に50倍近い倍率をくぐり抜けてこの学校で学んでいます。そんな彼らの人生はきっと笑いと喜びに満ちており、アップダウンなどは少ないのではないかというのが石倉さんの読みでしたが、そんなことはない、どんなに南太平洋の楽園の様な島であっても、容赦なく肉親の死、経済的な困窮、病気、ケガ等が襲いかかってくるのです。ネイナさんの人生もそんなアップダウンの連続でした。そんな彼がメッセージをくれました。

「今のキリバスは地球規模の気象変動で大変です。でも日本も島国と聞いています。だから海に囲まれた国同士の思いは共有出来ると思います。これからもキリバスのために応援をお願いします。でも自分はこの沈み行く国を離れるかもしれない。それは、この国の外に大きな挑戦をかけてみたいからです。だから私は今船に乗る仕事を選ぼうとしています。

キリバスの将来はもちろん心配です。でも同時に沈むか沈まないかは関係なく、私はこの国を出て働きたい。でもそれは決してキリバスを脱出するという選択肢ではなく、外からこの国を応援するということなのです。ぜひあこがれの日本人の船に乗って働きたい。そしてキリバスの将来を一緒に考えたいと思います。」

この国を出るという方向性だけれど、郷土愛は深く、この国のためにできる事を探したいというネイナさん。未来を希求する人物でした。沈み行く国であっても決してあきらめはしない強い気持ちを感じました。

明日は今この国で大問題になっている生活習慣病に取り組む看護師さんの活動。野菜が滅多に手に入らないという、日本では考えられないような食環境をどう生き抜こうとしているのか…。何につけても、特異な問題を持つキリバスです。

桑山紀彦

コメントを残す

あなたのメールアドレスは公開されません。必須項目には印がついています *