津久井やまゆり園事件〜3周忌

昨日、25日は第4回目の「ムワンガの会~当事者が語る」でした。

今日は2016年7月26日、神奈川県の津久井やまゆり園で19人が殺害された、その被害者のお母さんが語りました。今日26日で3年を迎えます。お母さんとはずっと外来で話を聞いてきました。そして心のケアの第二段階「語りと物語化」が終わり、いよいよ第三段階「社会化~社会との再結合」のステップを迎えました。それは自分の辛い経験が社会に還元され、社会とのつながりを獲得するというステップです。

 

最初から見事な語りでした。晴れやかに娘のことを語る時、涙ながらに無念の思いを伝える時、全てがほんものの「母の言葉」でした。中でもしっかりと伝えられたのが、

「この世に亡くなっていい命なんてない。あの子の全てが私の生き甲斐であり、生産性もあり、人の幸せに寄与してきた存在だった。」

と言う証言でした。まさにそれはほんものの証言。

会場には無念の中で娘さんを交通事故で亡くされたご夫婦、障がいを持つ息子と訪れたお母さん、同じく障がいを持つ姉と今も関わっている女性、両親の離婚で母の愛情に疑問を持ってしまった高校生など、様々な人たちが集まっていました。そしてそのみんながこの母さんの言葉に触れて涙し、勇気づけられ、本当の自分の気持ちに気付いて名残惜しそうに帰って行かれました。

娘を殺害されるという、とても苦しい思いの中で生きてきたお母さんが、他者を励まし勇気づける力を持っているということを会場の全ての人が感じられたと思うし、何よりそのお母さんご自身がいつの間にか自分の内面に宿っているその「力」に気付いて下さったことが、最高の心のケアにつながったと思います。

これこそ心理社会的ケアの「向き合う」ということ。

今日はその母さんが、

「遺族会が形成されないこの事件において、私にとってまさに遺族会のような存在である4人のマスコミの皆さん」

と言ってたたえたNHK横浜放送局、読売新聞、毎日新聞、共同通信社の記者の皆さんの日々の努力も強く実感できました。担当の弁護士が闇雲に「マスコミはシャットアウトしていますので」などと息巻くことが、どれほど時期遅れで勘違いか、よく分かりました。

人は自ずとつながっていくものです。それは被害者であっても医師であっても、記者であっても誰でも心あるもの同士はつながってきます。それは止められない人間の愛情と思いやりに支えられたすばらしい化学反応に支えられているものです。勘違いの担当弁護士がどれほど妨害してももはや切れることのないこの4人の記者さんたちの今後の活躍にも期待しながら22時過ぎ、お母さんは帰っていかれました。

いよいよ今日、三周忌です。

桑山紀彦

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