「死」をどう捉えるか

 今日も北釜のお母さんに泣かされました。

 前に北釜のお母さんが言いました。北釜のお母さんは大切な娘さんを津波で失っています。
「私はもう死が怖くなくなった。だって、私が死ぬその瞬間、“ああ、これでようやく娘に逢える”と思えて心が楽になることがわかっているから。」
 胸にずしんと来る言葉でした。
 でも心にいつまでも残り、もしかしたら大切な人を失った多くの人たちに、この北釜のお母さんの真実の言葉が通じるのではないかと思うようになりました。
 そんな北釜のお母さんが今日またぽつりと教えてくれました。
「私たち生き残ったものはね、まだ”修行が足りない“ってこの世に残されたものたち。今回亡くなった人たちは“修行が終わった”ということで、次の世界に行けた人たち。だからうちの娘もとりあえずこの世での修行が終わって、ホッとしながら次の世界に旅立ったんだと思うんだ。
 残された私はまだまだ修行が足りないからこうして残されている。
 だから残りの人生をちゃんと修行して、娘に恥じない生き方したうえで、娘のいる世界に行かないとね。」
 強い人です。
 僕たち生き残ったものが、心をたくましく、切磋琢磨して修行をし、それが認められて次の世界へ行けるイメージがとても具体的に持てました。
 ありがとう、北釜のお母さん。
 さて、14日の早朝、午前4時からNHK総合ラジオで「ラジオ深夜便」があります。昨日前編で今日は後編です。そう、桑山の特集です。曲もかかります。まだ十分録音さえ出来ていない「この国へ」。です。それは現在「震災篇」で歌っている新曲ですが、朝の雰囲気には合っていると思います。
 ぜひお聞き下さいませ。
 それから8月末に本が出版されました。
9/13-1
 「救命~東日本大震災~医師たちの奮闘」
 9人の医師が出てきますが、そのうちの一人が桑山です。2人目に書いてもらえました。これは桑山が書いたものではなく、達筆なライターがインタビューした内容をまとめて本にしたものです。監修は海堂尊さんです。
 ぜひ、お読み頂けると幸いです。
 さて、明日から7回連続で「一枚の写真から~あの日、あの時の記憶」と称して、半年前を振り返るブログを書きたいと思っています。
 半年が来て、僕の中でももう一回あの日、あの時のことを心の中で反芻したくなっている気持ちがあります。それをあの頃撮った一枚の写真を頼りに、記憶を紡ぎ出して書き出したいと思っています。
 皆さんといっしょに半年前に戻って、もう一回今回の津波のことを見直したいと思っています。
 請うご期待!
桑山紀彦

「死」をどう捉えるか」への16件のフィードバック

  1. 北釜のお母さんの おっしゃること 胸に響きます。しっかり生きてくださいね。でも 桑山さんには 弱音はいてくださいね。
    頭が痛くて昼寝したからか はたまた 絵本作家の あべ弘士さん・長谷川義史さん・あおきひろえさんたちと食事して興奮しているのか 眠れません(^O^)
    ラジオ バッチリ聴きますね。
    本も買わなくては・・・
    今日 仕事の後 ボランティア会議。その後 幼稚園に紙芝居などをしに行くのに 体力もつかな~

  2. ちょっと涼しかったのに暑くなったせいか、ここの所しんどい毎日です。って、言い訳書いてから… 4時くらいからウダウダしているのですが起きるのは5時!今日も崩れませんでした。
    北釜のお母さんは毎回、“なるほど”とおもわされることをおっしゃいますね。私の母は50代前半で亡くなったので、私はその年齢を目標に過ごしています。一生懸命いきます!

  3. 桑山紀彦様 初めまして。
    昨日のNHKラジオ深夜便を拝聴しました。
    今日の分は携帯ラジオに取り込んでいますのでこれから聞かせて頂きます。 
    プロフィールを拝見しましたがずいぶんな挑戦とご苦労、ご活躍にびっくりしております。
    昨日のラジオでは、患者さんと共に泣いて・・・・これが大事なこととおっしゃっていましたがとても感動しました。
    そのような医師は今までいなかったように思いますから。
    ハワイアンのようなゆったりとした歌声は気分をリラックスさせてくれました。ありがとうございます。 
    声に響きを感じ、今も活躍中の加山雄三さんの歌のような。
    これからも一層のご活躍をこころから期待をしております。 

  4.        「死」をどう捉えるか
     末期がんに冒されたおばあさんがいます。おばあさんが死が迫ったころ話しだしました。
    「夫は四十二歳で急死しました。あれから三十年、本当に寂しい思いばかりしてきました。寂しい寂しいと思いながら、それでも訳もわからずここまで生きてきました。ようやく寂しさに慣れたと思ったらこんな大病をし、大学の先生には見捨てられてしまい、やっぱり孤独で・・・それだけの人生でした」安曇さんの吐き出す息が曇って立ち上がる。
    「でも、最後にこんな幸せな時間が待っていたなんて、本当に人生というものはわからないものです」
     そういって、おばあさんは最後に主治医に宛てた手紙を残して亡くなりました。
     ”先生がこの手紙を読んでいらっしゃるということは、私はもう夫に会いに旅立ってしまったあとのことなのでしょう。
     私は先生に会えたことを本当に感謝しています。ずっと運命の神様を恨んで生きてきましたが、最後の最後に恨みを全部返上して何百倍もの感謝をしています。勝手なものですね。
     大学病院に行った時、えらい先生に言われたことを思い出します。「大学は安曇さんのような人を診る場所はないのです」と。ではどこで診てもらえばよいですか、と問うても大学の先生は困ったような顔をしているだけでした。でも、私はその時、すぐ先生の顔を思い出したのです。きっとどこかで、先生はこんな治りもしない病気のおばあさんにだって手を差し出してくださると、私にはわかっていたんですね。
     病むということは、とても孤独なことです。
     先生、どうかご苦労の絶えぬ身とは思いますが、私にくださった温かい時間をこれからも多くの孤独な人たちにつくってあげてください。いつもなにか考え込んでいらっしゃる様子をお見受けしましたが、私には相談に乗って差し上げるだけの器量も時間もありませんでした。でも、ひとつ確かなことは、先生は私にすばらしい治療をしてくださったということです。
     病いの人にとって、もっとも辛いことは孤独であることです。先生はその孤独を私から取り除いてくださいました。たとえ病気は治らなくても、生きていることが楽しいと思えることがたくさんあるのだと、教えてくださいました。
     私は先生のおかげでこんなにも楽しい時間をすごせました、と。
     もしかしたら、夫が亡くなってから三十年間でもっとも楽しい時間ではなかったか、と。
     もっともっとお伝えしたい気持ちはありますが、これくらいにしておきます。
     どうかどうかご自愛のほどを。
     天国より、めいっぱいの感謝をこめて、安曇”。
     「死」とはなにか、「生きる」とは何かを考えさせられる、文章であった。
                  夏川 草介著 「神様のカルテ」より
       和歌山  なかお

  5. 深夜便は聞けませんでした。再放送があるといいのですが・・・。
    本は買って、桑山さんのところから読み始めました。
    吉井妙子さんがインタビューしてまとめられた文章です。
    エッセンスをうまく書いていると思いました。津波祈念資料館もことも書いていました。
    現場で奮闘している医師たちの姿を何としても記録に残しておかなければと出された本です。
    皆さんもぜひ、手に取ってください。桑山さんのところだけなら立ち読みでもOKかも?

  6.  桑山先生が昨日と今朝放送されたラジオ深夜便に出演されていました。昨日は聞き逃してしまいましたので、今朝はと思って4時に目覚めたのですが、不覚にも30分くらいで眠りに落ちてしまいました。
     さて、震災から半年が経過し、今の自分の課題は事務所の従業員から募った義援金についてです。少ない給料から協力してもらった義援金なので、少しでも有効に活用してもらいたいと考えています。聞くところによると、社会福祉事業団・日本赤十字では義援金の2割方が組織の運営に使用されるそうです。組織があれば当然のことかとは思いますが、信用のある何かがあればと模索中です。

  7. ラジオは聞けませんでした・・・残念。
    ただ、本は、先週たまたま本屋さんで手にとって、桑山さんが載っててびっくりして即買いました。
    TVで繰り返し報道された先生も掲載されてましたね。
    内側から見る、お医者様の言葉って、重いです。そして、医療従事者だって、同じ被災者なんだよねって改めて感じました。
    半年たった今読むから、余計に感じることも多い本でしたね。

  8. みなさま。
     今回の深夜便はインターネットで聴けるようになっています。
     NHKのホームページで、「深夜便」で検索して下さい、とのこと(NHKの方から)です。
     検索してみて下さい~。
    桑山紀彦

  9. ラジオ深夜便 早速、検索してみました。
    「過去の放送の一部がパソコンでお聞きになれます」
    というところにありました。
    10月10日まで聞けるそうです。

  10. 人間、なかなか達観出来ない、修業の連続です。でも修業って云うと大仰なようですが、「娘に恥じない生き方をする」ことが修業そのものではないでしょうか?北釜のお母さん、厳しい状況に直面しても挫けずに、悟りの境地に一歩近づいたすごい精神力だと思います。

  11. いい

    出ましたね。
    ~~
    やはり
    医療関係
    また
    患者さん
    にも
    必要 不可欠な 本
    です。
    おぎようこ
    墨あそび詩あそび土あそび



  12. 話し 避けて いましたが、
    今は、
    スムーズ

    言える
    なんだか
    とても
    軽く
    なりました。

  13. 流石
    現役

    精神か医
    話しが、(^o^) 具体的
    とても
    分かり
    いい です。
    おこらんど
    おぎようこ
    墨あそび詩あそび土あそび

  14. いまだ
    阪神淡路大震災
    での

    受け止め
    られない人
    (^o^)(^o^)(^o^)
    死に
    でも
    忘れない

    やはり
    幼い死
    子どもの死
    若い死
    老いた死
    ひとは、
    死と 何処で おりあい つけるのかしら?
    おぎようこ
    墨あそび詩あそび土あそび

  15. いずれ
    自分

    死を
    迎える。
    って ことで
    折り合い
    つける

    かしら?
    墨あそび詩あそび土あそび

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