北海道からの心

 あの津波の日から半年が過ぎた今日、北海道は札幌でステージがありました。

 これは、現在札幌西高等学校の社会科教諭である田辺先生が、たくさんの仲間たちと計画してくださったものです。
 事前にかなりの数のチケットが売れて熱い気持ちと共に開かれた今日のステージは特別なものでした。
9/11-1
 亡くなった人のことをちゃんと想いだしていくことが、一番の供養になると教えてくれたのは北釜のお母さんでしたが、今日はそんな6回目の月命日。半年前のこの日、たくさんの方が命を落としました。そんな皆さんが生きてきた軌跡を伝えることに「地球のステージ」の役割があります。
 今日は前編にあたる「震災篇」と、続編にあたる「復興篇」を上演させて頂きましたが、途中何度も何度も泣けてしょうがありませんでした。それは一つに江里ちゃんのお父さんのことを想うからです。
 江里ちゃんの一家とは避難所で知り合いました。だから僕は江里ちゃんのお父さんと逢ったことがありません。出来れば生前逢いたかった。こんなに親しくなった江里ちゃんの一家で、知らないのはお父さんだけです。閖上に暮らし、閖上に家を持ち、閖上で家族を持ち、閖上で家族と暮らしてきたお父さん。一回言葉を交わしたかったのです。
 でも、ふと思うんです。
 僕が天国に行った時、逢いたい人はたくさんいるけど、その一人に江里ちゃんのお父さんが仲間入りしました。その時に聴いてみたいことはたくさんあります。
「どうして閖上に暮らそうと思ったのか」
「江里ちゃんが生まれた時、どんな思いだったか」
「あの日、何を思って家に戻ったのか」
「天国から江里ちゃんたちを見守っていてどんな気持ちだったか」
 たくさん聴いてみたいのです。そんな事を「希望」に代えて僕は生きていく。いつか江里ちゃんのお父さんに、
「初めまして。僕が松崎家と仲良くなった桑山と申す者です。」
 と言える日が来ることを信じて。
 半年目を迎えた今日。僕は漠然と被災地のことを考えることは出来ません。でも代わりに江里ちゃんや江里ちゃんのお父さんのことを心の中で強く想うことで過ごしました。それでいいと思う。
 そんな思いでステージを公演しました。
 皆さんも、ぜひこの大切な日に忘れられない人のことを想いながら過ごしてください。それは、逢ったことのない人でもいいと思うのです。
 精一杯の想いを込めて一人の人のことを想う。そうしてこの半年の区切りの日が過ぎていきました。
 まだまだ続く長い毎日。ぜひこれからも被災地にいろんな想いを寄せてくださいね。
桑山紀彦

北海道からの心」への12件のフィードバック

  1. はじめまして。
    今日、ずっと見たいと思っていた桑山先生のステージを
    見ることができました。多くのことを伝えて下さり、
    ありがとうございました。田辺先生にも感謝です。
    先生、ご自身のためにも、そして先生を心の支えとしていらっしゃる多くの方々のためにも、どうぞご自愛下さい。

  2. 半年ですねぇ・・・仙台の街も、駅の周辺と沿岸部では全然風景が違うのに戸惑った日を思い出します。
    息子が住むようになってから、仙台って必ずお天気とか確認してしまう街になったのですが、震災以来名取もふるさとのように思ってしまっています。
    いつも心から仙台や名取が消えることがない半年でした。
    今は、飯館の桜プロジェクトを広めていたりします。
    これからも、東北を忘れないでいる!!それが、日常を取り戻した私に出来ることだと思っています。

  3. 命の大切さを伝える「地球のステージ」とブログで語られる純粋な熱い想いを胸におさめて、その想いを共有して行きます。

  4. 札幌公演、おつかれさまでした!
    お忙しい中、北海道まで来てくださって、ありがとうございました。
    私は、この半年間、津波の「映像」を見ることを自分に禁じてきました。写真は震災2週間目くらいから見ていますが、映像で見てしまうと、自分が崩れてしまいそうだったからです。崩れている暇などなかった、この半年、あっというまでした。
    初めて見た津波の映像・・・体の震えが止まらず、しばらく涙を止められませんでした。
    叫び出さずにいられたのは、半年経った「今」だからだと思います。
    21日、仙台の友人が札幌に来ます。彼女は亘理の友人、知人を沢山亡くしています。震災後、初めて会う友人の話を、ただただ、聞こう、と思います。
    私はこれからも、ここで出来ることを、続けてゆきます。
    その力を今日の公演からいただきました。
    本当に、ありがとうございます。
    桑山先生も、ゆうこさんも、スタッフの皆さんも、どうかお体大切に。

  5. 桑山先生、今日は心打つステージをありがとうございました。3月11日以来、なぜこの国だったのか、なぜあのように多くの人々から大切なものを奪ったのか、残された者に何をせよというのか、祈りながら問い続けてきました。そして、何もできないことに焦りを感じてきました。でも、今日少し、その答えが見えたように思います。教育の現場で働くものとして、「人は何のために学ぶのか」「知識は誰のために生かすのか」を生徒たちに真剣に伝えたいと思います。被災地から遠い所に住むものですが、3月11日のことを心に刻み、私自身居住まいを正して、地球の未来を担う若い人々に語っていきます。
     先生に今何かあったら、再び希望を失う人々が大勢居ることでしょう。私は先生のために祈ります。

  6.  震災から半年経った今、これからも自分は被災した方々のことを思い続けること、そして少しでもできることを見つけて継続していきたいと思っています!
     昨日は、妻のドイツ在住でピアニストの友人・川口さやかさんが東京でコンサートを開いてくれました。ベルギー在住でヴァイオリニストのお姉様・川口エリサさんとの競演でした。コンサートの最後に川口さんは、被災された東北の皆さんのことを思って涙ながらに語られ、「アヴェ・マリア」をお二人で演奏して下さいました。異国に住んでいいても、被災された方々のことを思って、自分でできることをして下さっている方がたくさんいる、それを改めて知ることができました。素晴らしい演奏で、自然に涙が流れ落ちてしまいました。
     8月に名取に寄らせていただいた様子や報道から知るところでは、まだまだ、復興は時間が随分かかりそうですね。被災された方々の一日でも早く心安らかに暮らすことができるようになることを願っています。桑山君はじめスタッフの皆さん、本当にありがとうございます。田辺先生、公演のご尽力ありがとうございました。

  7. 半年を迎えた日にステージが出来て良かったですね。
    田辺先生、有難うございました。
    想いを寄せることをこれからも大事にしていきたいと思います。
    ステージで出会ったロエナス、アリッサ、ワジーム、ダン先生・・・多くの人たち。
    このブログで出会った江里ちゃんや歩さんや太くん・・・みんな大切な人たちです。
    そして、桑山さん始めスタッフの皆さんのご健康を祈っています。

  8. 通勤の為、最寄りの駅にいつもの様に行ったところ、人身事故の為、電車はかなりの遅れで、JRの駅に息子に頼んで送って貰いました。震災後(以前はあんまり記憶にないんですが)多い時は週に2回人身事故の為電車に遅延が生じる事がありました。新宿につくと別の路線での人身事故を知らせる文字を目にしたり…3月11日、自分の思いに反して天に召された人があんなに沢山いて悲しみにくれている人が沢山いるのに…と思わずにはいられません。
    昨日は省吾のライブで長野に行きました。震災から半年という事で、省吾のメッセージ、胸に染みました。

  9. 凄いねえ、凄いねえ。
     診察室の横にパソコンルームがあってインターネット使い放題となっている。最近の病院はここまでサービスがよくなっているのか、感心する。
     さて、わが病状はというと腹部超音波とか心電図検査とかやたらに検査が多くどうなっているのか皆目わからない。それにしてもピロリ菌検査とはいったい何だ。わたしが少々ふざけているからといってピエロに見立ててピエロ検査をもじった検査なのか。またまた胃腸検査のバリウムには閉口した。こう見えてもかなりの辛抱強い方である。富士山に六回も登ったのである。そんなわたしでもバリウムは、富士山の山頂の空気よりしんどかった。今にも吐き出しそうになった。涙を流しながら飲んだのである。そしてレントゲンのベッドに横たわった。上から下から、横から斜めから、レントゲンに撮られまくりである。宇宙飛行士もかくありなんというようにベッドが動き回った。これで宇宙にでも行けるかも。
     パソコンルームの窓からは、六甲の山並みが悠然と佇んでいる。あああーあ、こんなところはもう嫌だ。だって甲子園球場はすぐ近くなのに阪神タイガースの試合は見に行けない。
     みなさん、健康が第一ですよと声を大にして叫びたい。わたしのように、病に倒れたりしたらおしまいですから。
     娯楽室を覗くと、サラリーマン川柳の投稿コーナーがあった。そこにあった2010年のサラリーマン川柳大賞を紹介しておく。
     体脂肪 燃やして発電 できないか
     エコライフ 行かず動かず 何もせず
     そこで、わたしも一句。
     看護士は 笑顔天使で 注射鬼(かんごしは えがおてんしで ちゅうしゃおに)
      和歌山   なかお

  10. 泣けましたよ~。
    お父さんに聴いてみたいって、言ってくれる方がどれだけ
    いるでしょうか?
    震災はあったけれど、桑山先生らしさを感じました(^^)
    「希望に代えていく」忘れていました、ここ最近。
    忘れられない人のことを思い出していました。
    思い出すと希望が見えますね。

  11. 終演後の舞台上で、駄文をお渡ししてご挨拶差し上げた者です。田辺先生にお声掛けいただき、私も僅かながらの協力をさせていただいた札幌公演でした。遅ればせながら、初めて実演に接した「地球のステージ」は、桑山先生のおっしゃる「映像の焼きつき現象」との説明通りの、強く心に響く体験となりました。田辺先生には「ハンカチが2枚は必要ですよ」とお聞きしていたのですが、隣にいる妻の分も合わせて、3枚のハンカチがびしょ濡れになるほど、心が動いてたまらない時間となりました。
    インドネシアでの音楽ワークショップは、私が近年関心を持っている「協働学習 Collaborative Learning」の理想形を見るようでした。最後桑山先生が、若い人たちへのメッセージとして「もう十分傷ついたんだから、これ以上人を傷つけるような言葉を使わないでほしい。もう十分人が死んだんだから、絶対に「死ね」なんて言わないでほしい。今よりも少しでいいから優しくなってほしい」という内容をお話しされた時、ほんの2週間ほど前に尊い命を自ら投げ出した当地の中学生のことが想起され、たまらない気持になりました。
    はるこさんと同じく「教育の現場で働くもの」として、未来を担う子どもたちと共に、「希望を紡ぐもの」でありたいと強く思います。桑山先生、スタッフの皆様、本当にありがとうございました。すぐに来札の予定があると聞いております。またお会いできることを楽しみに待ちたいと思います。
    くれぐれもご自愛の上、健やかにお過ごしください。では失礼します。

  12.  今朝の「ラジオ深夜便」で、桑山さまを知ることができました。これからは桑山様や地球ステージの活動に関心をもって、ささやかですが心から応援していきたいと思いました。

コメントを残す

あなたのメールアドレスは公開されません。必須項目には印がついています *