夏のワークショップの終了

 今日もたくさんの農家の人と話しました。

 忠義さんは兼業農家ですが、とにかく今回の津波被害に心痛めている誠実なお百姓さんです。
「今回、JA主導で復興委員会つくったんだけどな、まずは雇用の創出だ。田んぼも畑も作れない農家にまず仕事がないといけないってんで、田んぼの中の瓦礫の撤去の仕事をお願いするもんだ。日給いくらで請け負ってもらってる。
 でも、瓦礫の撤去はこの夏草が伸びきった状況では難しいんだよ。もっと早く、瓦礫が見えている時にしなきゃいけなかった。でも“瓦礫には手をつけるな”って指令が4月の時に出て、みんなジリジリしながら瓦礫を見つめてたさ。ダイオキシンが出るとかなんとか、まあ身体への被害を嫌ったんだろうな。
 でもよ、もしかして来年農地を復活させるんなら、この夏草をそのままにはできねえんだ。来年荒れちまって何にもつくれねえよ。でも夏草伸びきってから“まずい”ってんで刈り始めたら危ない危ない。瓦礫にカッターの刃がぶつかってろくに刈れたもんじゃねえんだ。そこでやむなくやったのが除草剤をまく事よ。
 空中散布までやっちまった。
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 それであまり一面もう“秋の枯れススキ”だもんな。農薬の影響が今度は心配になっちまった。とにかくこんな津波被害、誰も経験したことねえからみんな手探りなのはわかるよ。でもどのやり方も行き当たりばったりなんだ。だからここまで来るともう自分を信じるしかねえ。
 自分の頭で考えて、自分で行動する。そうしねえと自分がずっと育ててきた農地がダメになっちまうよ。」
「忠義さん、どうします?」
「オレはよ、とにかく来年を目指して土掘り返す。その前に夏草刈りだ。絶対に農薬はつかわね。丁寧に芝刈り機で刈るさ。そのあとは土起こして下に眠っている黒土上に上げるよ。あとは秋に雨が降ってなるだけ塩分が下に沈むように、“雨降れ~”って叫ぶさ。」
「やる気ですね。」
「これたち百姓は、身体動かしてなんぼだよ。どんなに暑くても絶対に草刈りと耕耘はやり遂げるさ。」
 真っ黒に日焼けした顔で忠義さんは誇らしそうでした。どうか秋こそちゃんと雨が降ってほしいです。
 さて、今日は心理社会的ケアチームの打ち上げでした。
 夏休みの課題全8回が3カ所の仮設住居で終了しました。美田園の仮設住居を中心としたケアは8月22日が最終です。
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(こちらは針金の人生のワークショップです)
 今日は「手のひらの願い」のワークショップ。
 両手を色画用紙に当てて縁取りをします。そして聞き手(主に右手)には、5つの願いを書きます。その場合自分が一番好きな指に一番のお願い事を書いて、以下順番に書き記していくものです。
 一方もう一つの「手形」の方には、
「されたり言われたりしたら嫌なこと。」
 を5つ書いてもらいます。
 そしてマジックペンなどで縁取りをして、切り取り自分の手形にします。それをみんなで決めたテーマ、今日の美田園では「樹」でしたが、それに貼り付けていくものです。貼り付ける時、「どうしてそこに貼りたいか」をちゃんと説明して貼り付け、人に気を遣いながらその「手のひらで飾られた樹木」を完成させていくワークショップです。
 子どもたちの5つの願いにはたくさんの思いがこもっていました。
「お家がほしい」
「200万円くらいの家を建てたい」
「自分の部屋がほしい」
「原発がなくなってほしい」
 親には直接は言いにくいことが、今日のワークショップでは表現されていました。
 さて、そんな心理社会的ケアのチームと「地球のステージ」そしてこれで3回目になる被災地支援できてくださっている田中誠先生もいれて打ち上げに行きました。田中先生は4月に3週間支援できて頂いて以来6月、8月と二ヶ月ごとに福岡の飯塚病院から来てくださっています。
 今回から心理社会的ケアのスタッフになった柴崎悠子さん(ゆーちゃん)も来てくれました。
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 ニューヨークでダンサーとして踊っていたゆーちゃんは、この夏休みのシリーズからメンバーとして参加。今後もリンリン、ケンケンと一緒にワークショップを盛り上げていきます。
 さて、明日から「地球のステージ」はお盆休みに入ります。16日までで17日より通常となりますのでよろしくお願いします。
 とはいえ明日は駒ヶ根訓練所のステージですが・・・。
桑山紀彦

夏のワークショップの終了」への4件のフィードバック

  1. お疲れ様!
    3月11日から、一日一日が飛ぶように過ぎていきました!お盆休みゆっくり、身も心も休養させて下さいね。

  2. 農地への執念、途方もない自然との闘い、驚異の気力です。
    天の恵みを祈ります。
    同時にワークショップの子供たちの心の復興を祈ります。

  3.   ふうひょう(風評)
     いま世の中を席巻しているのはAKB48で、何処へ行ってもなにを見てもAKB48のグループであったりユニットであったり、前田、板野、篠田、大島、小島という個人を見かけたりするのである。
     テレビ番組も歌番組が少なくなったとはいえ、CバラエティーなどでAKB48のメンバーを見かけない日はないぐらいである。それほど世間の耳目を集めれば、あれこれ言われるのもいかしたかたのないことではあるが、中にはいやみやっかみだけでなく、なるほどなと思える「風評」もある。
     フジテレビ系前田敦子主演「イケメン☆パラダイス」がその一つである。男子校に紛れ込んだ前田敦子がイケメン男子として活躍するラブコメディーなのであるが、男子生徒に扮した前田敦子が着用したティーシャツがいけないというのである。ティーシャツにプリントしていたのが「little boy」という文字。視聴者から早速クレームが付いたというのである。
     「little boy」というのは広島に投下した原子爆弾の暗号名である。広島の悲劇を知っている人なら誰でもが知っている名前である。フジテレビは今後対応を考えるそうであるが、原爆で亡くなった方や、今も原爆症で苦しんでいる人のことを考えればこの時期リトル・ボーイはないだろうと思うのは僕だけではないはずだ。前田敦子やAKB48もこれで広島原爆のことを知るかもしれない。そうなればAKBにとってもいいはずだ。もちろん番組スタッフやテレビ局ももっと真摯に考えるのはいうまでもない。
     そうはいっても「ふうひょう」はやっぱり「風評」で、とんでもないことを言い出すこともある。
     お盆の恒例行事、夏の京都の「五山の送り火」に陸前高田の被災松が送られると、京都市はこれを拒否した。理由は放射能に汚染された松は、燃やすと放射能が京都の街に降るからというのである。これには京都在住の作家、瀬戸内寂聴さんが噛み付き怒りを顕わにした。
     「これは京都の恥です。送り火は亡くなった人の魂を慰めるもの。ましてや今回は東日本大震災という大震災で亡くなった人の魂に対してです。私は怒っています。恥ずかしいです。悔しいです。岩手の方が怒るのも当然です」
     瀬戸内さんだけでなく多くの人が京都市のこの対応に怒りをぶつけたはずだ。京都市も陸前高田の松が放射能に汚染されているというのは風評以外のなにものでもないということが分かり、二転三転の後に「被災松」を受け入れることにしたというのである。
     今京都市役所の玄関前広場には陸前高田から送られた「被災松」が山のように積み上げられている。
     AKB48も歌で、世間を席巻しているが、諺に「歌は世につれ、世は歌につれ」といいいますが、作詞家のなかにし礼は、これは嘘だという。「世は歌につれ、というようなことはない。歌は世につれるだけである」と。
     その「世」は、私たちが形作っているのである。
      和歌山   なかお

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