午前中テルアビブに向かい、日本大使館でNGO連携無償資金協力(ODAの一部)の担当をしてくださっている成田さんと懇談してきました。私たちの活動のよいところを認めてくださり、ガザで活動することの意味が共有できて、本当に頼もしかったです。パレスチナ問題に対し、日本は非常にニュートラル(中立的)な立場で関わることができる珍しい国です。その利点を活かしてこれからも政府と民間の私たちが連携し、いい心理社会的ケアを提供することの意味が、しっかりと共有できたと思います。
なんと成田さんは青森県は津軽の出身。うちの舞子さんと同じ青森県人です。そしてなんと山形大学の農学部に進み、農林水産省に入省した気鋭の人物。うちはあきちゃん、優子ちゃん、そして僕が山形大学出身ですが、なんと同じ大学でした。農学部は2年生から鶴岡市にキャンパスが移動しますが、奥様はその鶴岡の出身だというじゃないですか。優子ちゃんと同じ。
いや~嬉しいつながりでした。
そして午後から映画「ふしぎな石~ラマラの大地」の初上映会。ついに「光る石三部作」の完成です。多くの日本人の皆さんが来て下さいました。マスコミ、JICA、大使館、NGO、学生。本当に多種多様な立場の皆さんが一堂に会しこの映画を見てくださいました。
そして圧巻は殺害されたジャーセムのお父さんが来て下さっていたこと。
この映画の主人公はサディールです。いとこのジャーセムを殺された15歳。石が光って聞こえてくる声はまさにジャーセムのものです。そのジャーセムのお父さんがいらっしゃったのです。もしかして、
「こんな映画作って!うちの息子のことをなんだと思っている!」
と言われる可能性だってゼロではありません。でも映画の最中でもお父さんは涙をこぼし、そして終わりの挨拶に語って下さいました。
「今日は本当にありがとう。息子のことをこんなふうに描いてくれて心から感謝している。
息子を失ってからいろんな心ないことを言われて来た。
5人も子どもがいるから、一人くらい亡くなっても気にするな、などといわれて傷ついてきた。またある人に言われた。石なんか投げるからそんな目に遭うんだ。自業自得だよ、とか。
しかし、子どもを失うということは数ではない。ジャーセムはたった一人のジャーセムなんだ。あと子どもが5人いるからいいわけじゃない。そして、この映画に感謝したいのは、そんなジャーセムを一人の”生きていた”人間として扱ってくれたことだ。そのことがとても嬉しかったし、元気が出た。」
これこそ、僕たちの目指す心理社会的ケアの第3段階。「世界との再結合」なのです。
自分だけがこんな目に遭い、自分一人が世の中から隔絶されてしまったような孤独感を覚える。それはトラウマの本態です。お父さんも息子を失い、そのあとの誹謗中傷で傷ついて孤立してきたのです。しかし、その経験がこうして形になり、映画となって人々に受け入れられた時、お父さんは再度世界とのつながり感を得て(Re-join)、有力化(Empowement)されていくのです。目の前でお父さんにとっての第3段階が進んでいきました。
終わってからもお父さんは何人かの日本の皆さんから質問を受けてこれまた「再結合」されていました。
映画作ってよかった~!
何れはこれもネット上で公開していく予定ですので、その時はぜひご覧下さい。
桑山紀彦