「地球のステージ」のパレスチナ事業、ラマラの事務所は現在木曜日と金曜日をお休みにしています。従って今日はみんなもお休み。だから明ちゃん、絵美さん(パレスチナ事業担当)、奈美さん(パレスチナ駐在員)の3人と街に出ました。
今回は昨年7月に撮影した映画「ふしぎな石~ラマラの大地」の現地公開を目前にしていますが、そのロケ地、「マフムード・ダルウィーッシュ廟」に行きました。小高い丘の上にあるお墓の主人公、マフムード・ダルウィーッシュはアラファト議長に次いで国葬されたパレスチナが生んだ世紀の詩人です。今回の映画の中でも最後の石のかけらが見つかる場所です。
花を渡り歩き、花々に命を与える「蝶」を流浪のパレスチナ人に例えつつ、蝶が花をたどるその姿に命をつなぐための努力を惜しまない自分たちを投影した詩が石碑に彫られています。
今回の映画の中でもクライマックスシーンのロケ地です。
そしてダウンタウンへ。女性3人が集まれば爆発的な食欲と購買欲がわくようで、疲れも知らず3人はいろんなお店を渡り歩きます。まるで花をわたる蝶のようでした。ガザと違ってものにあふれるラマラの街は、ガザに慣れてきた僕や明ちゃんにはある意味での違和感がありますが、これもまた一つのパレスチナ。空爆のガザも辛いけれど、すぐ横に入植地がある西岸地域は毎日の暴力が大きなトラウマです。
目の前に拡がる今風の街にはそんな「暴力」の影は見て取れませんが、いずれにせよ暴力が隣り合わせであることには間違いありません。駐在の奈美さんがお勧めのお菓子、「タムリア」はすっきりした味で、明ちゃんを除く日本人みんなが大嫌いな「クナッフェ」を食べなくても済む快感に沸き立ちました。でも絵美さんがつられて買った路上の「コーン炒めカップ」は外しました。
パレスチナは刺繍や陶器がおみやげとして有名ですが、偶然入ったお店でとってもかわいい陶器が…。今、うちの外来に来てくれている中3と高3の受験生のみんな。今受験も佳境だから日々大変だと思うけど、見ていたら合格のお祝いにぴったりのものがありました。みんな合格すると踏んで人数分買いました。みんなにちゃんと渡せますように…。
そして事務所に戻り、みんなでご飯つくり。でもせっかく買ったチキンをどこかに忘れてきてしまった奈美さん。まあ気にしないであるものでご飯をつくる女性3人組。笑顔が絶えず事務所は大きな笑いに包まれています。
やっている活動はトラウマを扱い、涙や慟哭、苦しみや哀しみといつも接している厳しいものだけれど、それでも日常の中に「人が生きている姿」をみつけ「パレスチナの豊かな文化に触れてほっとする」瞬間を分かち合っていきます。
いろんな人生をたどっている3人の女性たちですが、確実に同じ思いでこのパレスチナに集い、今ご飯を一緒につくっています。「女性は世界の太陽である」とかつて平塚雷鳥がいいました。今こんなことを言うと、すぐにジェンダーに引っかかって非難されがちですが、大笑いしながらパレスチナの地でご飯をつくる「地球のステージ」のスタッフを見ていると、平和はこんなところから形づくられていくのだと確信する想いでした。
明日は日本大使館との協議、そして午後からついに映画「ふしぎな石~ラマラの大地」の日本語字幕版の初公開です。
請うご期待!
桑山紀彦