その生徒さんが質問に立ったのは、もう終了の時間も迫り、本当はその前の生徒さんで終わるはずだったけれど、最初からまっすぐに手を伸ばし続けていたので、あえて壇上から、
「彼に最後の質問をさせてあげてください。」
とお願いしたものでした。
彼は一つ優しい質問をし、それに桑山が答えたあと、
「もう一つだけ言いたいことがあります。」
と続けました。しかし明らかに言いづらそうで、でも言わないといられなさそうで、彼は自分の胸に手を当てて気持ちを落ち着かせながら、こう語りました。
「僕の周りで、ステージの中に出てきた人に”ブスだ”のなんだのと、嫌なことばを吐き続けている人たちがいました。僕は聴くのが耐えられなかったけれど、この周りの生徒はそんなことをステージ中にずっと話していました。それでいいんでしょうか。」
体育館が凍り付きました。誰もがその明かにされた真実に戸惑い、それまで7年にわたって「学校の平和」を守ってきたはずのその中学校の中に、明らかに「戦争の火種」が存在していることが暴露された瞬間でした。
とっさに思ったのは、
「彼は袋だたきにされるか、いじめられるかもしれない。」
という心配。おそらく多くの先生方もそう思ったに違いありません。でも同時に、彼は時々そういったことを発言していて、みんなからも疎まれているのかもしれない、とも思いました。しかし、彼は明らかに「真実」を語っていました。それをこの全校生徒の前で言うかどうか、普通は大変迷うところだけれど、彼の正義の中ではそのことを明らかにしないではいられなかったのだと思います。
それは余りにまっすぐすぎる「正義」かもしれません。しかし、そんな罵詈雑言を平気でしゃべる同級生が許せなかったからあえて全校生徒の前でその「告白」をしたのでしょう。これを受け止めないわけにはいきません。
「ありがとう…。勇気のある発言をありがとう。君の言葉はこの学校の中にある”戦争の火種”をあぶり出した。これからそれをどうしていくのかはこの学校の生徒みんなの課題でしょう。
また来年、ここへ来た時にそんな火種が消えていることを確認させてもらいたいと思う。また来年会おう。」
すると彼は安心したように、
「はい、来年を楽しみにしています。」
そう言葉を残して着席しました。
最後に全校生徒に向けて短く伝えました。
「みんな、彼の勇気を無駄にするような行為は慎んでほしい。」
体育館は静まりかえっていました。
公演が終わり学年の先生方と少し話せました。
「私たちは、あの発言をした彼を守ります。」
心ある先生たちでよかったです。
「地球のステージ」はライブです。こういったことが起きることは想定してきたけれど、今日はその想定を遙かに超えていました。
「この会場の中に、人を傷つける行為をする人が平気な顔をして存在しています。」
そんなことを発言する中学生がいるのです。そう考えると、この町の子どもたちはしっかりと成長していると言うことなのだと思います。
教育長も一部始終をご覧になっていらっしゃり、
「また来年よろしくお願いいたします。」
そう言って握手してくださいました。しかし教育の現場はまさに「闘い」です。
さあ、来年はどうなっているのか、願いながら念じながらこの中学生たちとの再会を待ちたいと思います。
桑山紀彦
先日は、ありがとうございました。私は、3年間毎年桑山さんの地球のステージを楽しみにしていました。しかし、それも今年で最後かと思うととても残念です。私の訪れたことの無い多くの国と地域に曲と一緒に旅ができてとても楽しかったです。私は、桑山さんの地球のステージを小学生の時に初めて見ました。そのとき「人を助けられる人になりたい」と思い、今は介護福祉士を目指しています。これからも世界中の多くの人を助けるお医者さんでいてください。
桑山さん、観てくれていると嬉しい
です。
最後…
僕のことを指してくれた事に感謝
します、もしお時間がおありでしたら
お話の機会を頂きたく、
思います。
宜しくお願いします。
リオ君。是非以下のアドレスにメールを下さいね。
info@e-stageone.org
お待ちしています。
桑山