今日は雨の中、バイクに乗って高円寺の「座・高円寺」に演劇を観に行きました。
今回ひょんなことから気になった障碍(しょうがい)者の皆さんの演劇集団「態変(たいへん)」の「ニライカナイ」です。
座長の金滿里さんが演じるこの演劇は、2年前の7月26日、津久井やまゆり園で殺害された19人の障碍者の皆さんのことを思って制作されていました。金さんが今日のパンフレットに書いています。
「2年前のあの事件から、何かが大きく音を立てて、壊されてしまった。
相模原やまゆり園19人虐殺事件。私は今も、自分のいた障碍児施設のベッドの上に、殺された19名と並んで、無感覚にそのままに残されている。
それは19名の名前を公表しない、と公が発表したことで決定づけられた。居場所の底が抜け、奈落に突き落とされ、はじめからこの世に存在せずいなかった者と葬り去る、と言われたも同然に。」
金さんは重度の身体障碍を持っています。車いすでないと移動ができません。しかしその金さんが踊るのです。魂を込めて、床を這いずり回りながら…。
「自分は障碍者だけど、ちゃんと名前があるんだ。存在がこの踊りの中にあるんだ。」
と強く訴えかけてきます。
一方で僕は図らずもこの殺害事件の被害者の方と深く関わることとなり今に至っていますが、何もできていないことに無力感を感じていたのです。だから金さんの踊り、そして彼女に集う障碍者の皆さんの踊りとパフォーマンスに圧倒されました。
障碍があっても踊ることはできるし、その肉体美に圧倒されていきました。一切の「ことば」はありません。完全にライブの音楽と障碍の肉体を駆使した踊りが既成概念を切り崩していきます。
もしも、僕が関わっている被害者のあの人がここにいたら、
「ありがとう。私にも名前があるよ。」
ときっと訴えたに違いない。金さんに、今その人のお母さんは子どものことを世の中に伝えられなくて苦しんでいるのだと伝えたい。
改めて、人間ってすごいと感じさせてくれる素晴らしい演劇でした。
桑山紀彦