3ヶ月目の日曜日

 今日は中学校体育大会でした。名取市の中学生3年生は最後の目標を掲げて戦います。部活動の総決算ですね。

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 大好きな藤村先生の指導するバスケット部の応援に行きました。昨日は2戦2勝。たいしたものです。校舎も体育館も使えず小学校に間借りしながら練習を重ねてきた彼らが、いよいよ大会に臨みました。今日は午前中強豪の中学校に僅差で敗れたのですが、午後からは熱戦でした。バスケットは流れが速いのでどんどん点が入っていきます。熱気がこもってサウナ風呂状態になった体育館に応援の声が響きます。

 しかし閖中のバスケット部は実に冷静です。そしてパスが通る通る。攻めに転ずるとちゃんとリレーが出来て脇から、時には中央から果敢にゴールを狙います。そしてその正確なシュートでどんどん点が入っていくのです。もちろん相手も頑張りなかなかの接戦を演じてくれましたが、ついに68対65で閖中が勝ったのです。しびれましたね~、いや感動しました。そしてお母さんたちの喜びの涙涙。知り合いの京さんに会ったらもう目が真っ赤です。

「いや~いい試合でしたね~感動しましたよ!」

「あら先生来てたんだ、いや~もう嬉しくって!」

「なんかいいことありそうですよね!」

「はい、絶対!」

 子どもたちが大人たちに元気を与えてくれています。

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 でもよく見れば、閖中のみんなだけがビブスです。みんな家を流されてユニフォームをなくしています。例え持っている生徒がいてもみんなで着ない。それがチームなんですね。切なくなりました。バスケットの場合ただでさえも派手なデザインが多いので、余計に閖中のビブスは辛かったです。でもユニフォームなんかなくても、ちゃんとこうやって勝利をもぎ取る。大した生徒たちです。藤村先生がとっても嬉しそうに、誇らしそうにしていたのが僕にも伝わってきて本当に嬉しかったです。

 今週木曜日からは閖中の心理社会的ワークショップが始まりますが、この素敵なバスケット部とは6月20日(月)の予定です。わくわくします。

 そして、その足で名取市内箱塚グランド内の仮設住居に小斎さんを尋ねました。仲良くさせて頂いているご夫妻です。

「こんにちは~。」

「お~、先生来ましたか~。」

「はい、約束通り!」

「どうぞどうぞ。」

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 ここは標準的な仮設住居で2Kです。4.5畳の部屋が2つとキッチンです。あとはお風呂とトイレ(洋式)です。

「ほとんどのものがそろってました。32インチのテレビにエアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器、電気ポット・・・。みんな海外からの寄付や赤十字からのものですなあ。」

「清潔で良い感じですね。」

「でもね、あんまりモノを増やさないようにって家内と話し合ってるんです。いつかはこんな年でもまた家を、小さなモノでも家を建てたいですからな。」

さすが小斎さんです。

「不便なところはありますか?」

「そうだなあ、壁が鉄で出来ているってことかな。冬になるとかなり結露しそうですよ。」

「たしかに、でもマグネットくっついていいですよね。」

「あ、そこは重宝してます。あとはね、お風呂が狭いなあ。追い炊きも出来ないし。そこが辛い。そんでもって何でシャワーが風呂桶の方に付いているんだろうって、家内と話したんです。そんで、”これはきっとアメリカから寄付されたバスタブだから、アメリカ人用なんだ。アメリカ人はバスタブでシャワー浴びるものね“ってことになったんです。」

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(不思議なバスタブ上のシャワー位置。左は小斎さんがホームセンターで買っていらっしゃいました。)


「それも確かによく見ると不思議ですね。」

「あとは、トイレに暖まる便座があるといいなあ。」

 小斎さんは前向きです。今ある現実を受け入れながら、でもちゃんと未来を見すえています。

「今僕が思うのはね、これからの閖上のビジョンをちゃんと出してほしいってこと。平らになった閖上をどうするのか、そこを聞いておかないと落ち着いて生活できないですね。どんなビジョンでもいいんです。それが決まると、それに向かってがんばっていこう!って思えますからね。そろそろ閖上をどうするのかちゃんと話し合う時期に来ていると思うな。そしたら、この長くて単調な仮設住居暮らしだって乗り切れますよ。」

「小斎さん、家建てますよね。」

「この歳だからね、蓄えもそんなには多くはない。でも、小さくていいからもう一回自分たちの家を建ててから死にたい。そう思ってるんです。

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 それでもねついつい涙が出てしまうのは、大事な友達の葬式の知らせが続々と来ること。カレンダーがそうやって埋まっていくんだ。そのことを考えると、夜には涙が止まらなくなります。」


 江里ちゃんの家に行く予定もあるので、おいとますることにしました。玄関まで送ってくれた小斎さん。もっとずっとずっと前から知り合いだったら良かったのに。でも今は仲のいい友人です。この生き残られたお二人が、「やっぱり生きてて良かった!」って何度も思ってもらえるように、僕は関わっていきたいと思っています。

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 そして見送ってくださいました。

 ただ普通に、普通に暮らしてきた小斎さんご夫婦。津波は突然襲ってきました。家を完全に失ったお二人はそれでも今ここで生きていらっしゃいます。ちゃんと夢と希望を持って・・・。

桑山紀彦

3ヶ月目の日曜日」への14件のフィードバック

  1. 素敵なご夫妻ですね。お写真も素敵です。バスケットの試合も白熱した試合だったようで色々と考えてしまいました。
    今も自分の身近な人への支援は続けていますが被災地への支援はどうすればよいか考えています。桑山さんが紹介して下さった方々のような方が
    見えないけれどもたくさんいて
    誰からも見られていないけれども
    必死に頑張っておられるように思います。
    私ができること。それは何か。
    自分なりの答えを見つけ動き出したいと思います。桑山さんいつもありがとうございます。

  2. どこかの高校の卓球部は全国大会進出を決めましたよね。満足な練習も出来なかっただろうに…閖上中学校のバスケ部の勝利、希望の光ですね。勝ち負けじゃないって言うけど、この勝利は…ね!社説読みました。知らせてもいないのに、何人かの友人が「朝日新聞の社説に桑山さんの名前がでてるわよ。」と連絡をくれました。ブログでそれぞれの方の事が頭にあるので、あの短い文章を読んでも目頭が熱くなりました。

  3. 名取市の情報を得ようとしていたら
    小齊さんという方のアップされたYouTube画像「東日本大震災」に出会いました。
    同じ名前の方はたくさんいるだろうから
    たんなる偶然かもしれません。でも、この画像に出会ってから、毎日観てしまい、そのたびに涙が流れてくるのです。
    すみません。同じ名前なだけで、確かじゃないのにコメントしました。

  4. マラリアでなくてよかったですね。
    今日もやっぱり 動き回っていたんですね。
    みなさんのこと とっても大切に思うお気持ち よくわかりますが、ご自愛ください。
    でも 会って 元気の分けっこしているのかな・・・?

  5. 仮設住宅への入居者が50%に満たない。当選したが色々な条件面で支障があって引っ越し出来ないと言う人・当選したのに入らないのはおかしいと言う人・電話で入居を督促する役場の人・数を建てればいいってもんじゃない~との評論家の無責任発言・などのTV報道を複雑な思いで見ていました。
    でも多くの方々は一歩前進して喜ばれておられるんですね。やはりブログは表も裏も事実を素直に伝えてくれるので頼りになります。
    ちょっぴり普通に戻って喜ばしい限りですが、一方で高校の野球部全員がマスクをして練習するニュースを見てショックでした。
    まだまだ道は長いですが諦めず、焦らず、コツコツですね。

  6. 閖上の皆さんの歩みに励まされますね。
    中学生の試合、仮設の小斉さんご夫婦共に支え合い目標もたれ進まれて。自分の力を出して生きて行くことが、又新たな力を作るような気がしました。
    海は海流により循環することで、再生を始めています。
    停滞している陸地の瓦礫、汚泥などからは健康被害の心配が深刻化してきました。
    梅雨と夏の時期がくるのは確実なのですから、やるべきことを急がなければいけないのに、政府の対応に危機を感じます。

  7. 閖中のバスケットの試合を観戦されたんですね。息子が中学時代バスケットをしていました。
    早い展開を追いながら一喜一憂してみんなで声援を送ったことを思いだしました。
    みんなの気持ちが一つになって元気になれて良かったです。
    仮設住宅は安くて在庫の多いものが優先して使われているそうです。
    使い勝手の良さという基準はないのが残念です。
    小斎さんご夫婦も桑山さんの“親戚”なのですね。素敵なご夫婦ですね。

  8. お忙しい中,応援にお越しいただき
    本当にありがとうございまいした。
    一番いい席で
    「しびれる」試合を観ることができました。
    彼らに感謝です。
    応援してくださるみなさんに感謝です。
    3年生の部活動はこれで終わってしまいました。
    でも,全員の心に「何か」は残りました。
    また水曜日から,彼らと肩を組んで
    歩いていきます。
    そして・・・せっかくのワークショップ,
    20日私は出先があり不在なのです・・・
    二回目を楽しみにしています。

  9. Twitterで糸井重里さんがこのブログを紹介してくださっていました。
    糸井さんのフォロワーさんは約38万人なので、それだけの人に発信されたと思うと、驚きです。
    一緒に応援できる仲間が増えたらさらに心強くなります。

  10.  永年、教師をしているが、これといってなかなか頷ける教師に出会ったことがない。もっとも僕がこの先生は凄いなとと思ったりするのは、司馬遼太郎先生、五木寛之先生、藤沢周平先生などであるが、最近は藤沢周平先生にどっぷり浸っている。もちろん桑山紀彦先生はいうまでもないのであるが、どうも和歌山県にはこれといった「この人はいいこと言うなあ」という人はいない。そのせいか、和歌山県の学校で「地球のステージ」を複数回実施した学校がないというのもむべなるかなといったところか。
     先日、先生方の歓送迎会を実施した時のことである。退職した社会科の教師がこんなことを言い出した。
    「世界を知るという意味で海外旅行はぜひ皆さんにも行ってほしいと思います」
    「やっぱり、海外はいいですか」と、僕は問いかけた。
    「旅行の楽しみには、実は三つの楽しみがあります」
    「へえーそうですか、なにか教えてください」僕は、ひよっとしたら心に残るいいことを言うのかと思い期待して尋ねた。
    「まず、旅行に行く前に楽しめる。旅行計画を立て、出かけていく地域の歴史や文化を調べる楽しみ」
    「なるほど」と、僕は相槌をうった。
    「二つ目は、実際に旅行にでかけること」
    「うん、うん」再び、頷く。
    「最後は帰ってきてから、写真など見ながら旅行を振り返る。この三つが旅行の愉しみなんですよ」と、得意げに話すのである。
     あのねええ、それって誰でもやってることじゃあないのって僕は思ってしまった。取り立ててわざわざいうことじゃあないんじゃないのって思ってしまったのである。和歌山の教師がいうことは精々この程度。
     僕には、師と呼べる人はいない。常識的なごく普通の話をする師は大勢いる。しかし、師と呼べる人には出会っていないのである。
     作家・沢木耕太郎は「旅とは何か」と問われたとき、「ビーイング・オン・ザ・ロード」と答えている。「途上にあること」と、彼は答えているのだ。
      和歌山 中尾

  11. 読売新聞夕刊読みました。なんか、ぶちええ記事じゃった。えりちゃんの優しい気持ち、桑山さんと関わって少しずつゆとりを取り戻した感が伝わって来て。
    これ見て、また、ガタガタ言う人がおったら、私が一言言うちゃゲルからね。私に言いさん。(山口弁分かる?)
    歯医者にいったから、歯医者さんたちにも宣伝してきたんよ。

  12. いきててよかった!
    そう感じてもらえるように…
    わたしも仕事、仕事以外、
    これからも無理せずわたしのままで、いきていきます。
    では☆
    まけるなよ…みんな。

  13. 「 生きてて良かったなぁ」
    そう 思える時は やっぱり 優しい人に出会えた時 温かい人情に触れた時、です。
    子供を亡くした苦しみの中で 「死んでしまいたい。」とばかり思っていた頃、なにげなく 優しい言葉を掛けて下さった人がいたり そばにいて 励ましてくれた人がいたから 乗り越えられました。
    「無くしたものは 大きいけれど そのかわりに、この人達に、出会えたんだなぁ。」
    と ふと 気が付くと、心に温かいお湯が注がれた様な 気持ちになります。
    被災地で、ご家族を亡くされた方 大切な思い出の詰まった家を 無くした方 皆様に かわりの 温かい出会いがありますように。
    桑山さんに 出会えた方達も 無くしたものは 大きくても 素晴らしい出会いを 神様に頂いているのだと思います。

  14. この土曜日曜と愛知県では合唱祭が開かれています。
    毎年の恒例行事です。
    私も女声コーラスに入っているのですが
    土曜日に出演してきました。
    土曜日のステージは
    学校関係の部活の子供たちがたくさん出演していました
    中でも高校生の合唱が素晴らしかった。
    合唱組曲「未来への決意」から「決意」という曲でした
    男子学生も女子学生も
    力いっぱいに
    明日に向かって生きていくんだ!という歌詞の内容の曲を
    指導者の先生が
    震災に際して
    選ばれたそうです。
    素晴らしい選曲でした
    そして
    若者の
    明るい未来をみつめた頼もしい合唱でした。
    若いって素晴らしい
    君たちの未来は輝いているよって
    思うと
    胸がいっぱいになって
    涙があふれました。
    愛知県でも
    高校生が
    被災地を思って歌っています。
    この思い届けと
    心こめて歌っています。
    私たちも
    できることから
    始めて
    応援していきたいと思います。
    新聞の記事
    みんなで読み合わせしますね。

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