東ティモール7日目

今日はPSFのトレーニング2日目。丸1日桑山がファシリテーターとして2つのワークショップを行いました。

午前中はおなじみ、「はりがねの人生」。70センチの針金の自分の人生に見立てて上がったり下がったり、人生の出来事をその「曲がり」によって表現するものです。その曲がり角にはその出来事を表すようなアイコン(目印)をカラー粘土でつくります。

最初どのくらい理解してくれるかと思って不安でしたが、次第に理解度が増して最終的にはみんなちゃんと自分の人生を表現できていました。正直村にずっと暮らしていたら針金を使って自分の人生を表現したり、粘土を使って何かをつくることは経験が乏しいと思います。しかし人間の根本的な能力により針金を曲げたり、粘土をこねたり形を作ることは出来ます。でも大切なことは自分の人生を表現するということ。それが最も大切なテーマなのです。

全員が作り終え、村グループ内での発表。至る所から拍手が出てきます。そして村グループの代表が一人づつ出てみんなの前で発表しますが、感極まって涙を流す人が入るくらいに一人一人の人生が語られていきました。全ての人にはその人の人生があり、みんな自分の人生の主人公を演じて生きているということ。哀しみも苦しみも喜びも幸せも、みんなひっくるめて一人の人の人生が形づくられ、それが表現されていきます。それはまさに人生というものを意識、それに興味と関心を持つことがすなわちPSFとしての資質へつながるというメッセージです。PSFであるということは目の前にいる人の人生に興味と関心を持つということから始まります。でないと良いサービスは提供できません。その興味と関心を持つ時に必要なものが「想像力」です。その想像力をフルに使ってこのはりがねの人生を作れた時、人は人生の意味に限りなく近づくのです。それを持ってして、良いPSFとしての活動につなげてほしいというメッセージを送りました。

午後からは「理想の村づくり」というジオラマワークショップです。

これは木の板の上に自分たちにとって理想と思われる村のあり方を話し合い、それを具体的に粘土でつくって彩色していこうというワークショップです。このワークショップには2つの意味を持たせてあります。一つは自分の村を俯瞰、つまり鳥の目で見ることが出来るか、ともう一つは「理想」という未来に向けた希望やねがいを具体的に表現してつくることが出来るか、という点です。

鳥の目で見ることが出来る、つまり3次元的な視点を持つことはできたと思いますが、もう一つの「未来への希望やねがいを形に出来るか」については課題が残りました。つまり、「今の自分たちの村の様子」を表現することは出来るのですが、実はそこで終わってしまうジオラマが多かったということです。これには驚きました。さんざんうちのアイダが「理想の村をつくるんだよ。」「自分の願いや希望を盛り込んで村をつくっていくんだよ。」と耳にたこができるほどいっているにもかかわらず、今の自分の村をつくることで止まってしまっているのです。もちろんそれは自分の村が既に理想の状態であるというありがたい話しに帰結するものではなく、自分の村がこうなると良いという希望やねがいは言葉に出来ているにもかかわらず、それを手を動かして形として表現することが出来ずに終わってしまっている村が少なからずあったということです。

これでは、自分の村を良くしていくという視点に乏しく、思考が現状維持に止まってしまいます。PSFとしての資質として大切なことはそうやって未来への指向を持ち、それを具体的に形にすることが出来るかどうかが重要ですが、そこに課題が見えたということです。たとえば、

「村の中に高校がほしい。そうしたら遠い道のりを通って遠くの高校に行かなくても済むし、若者が村を離れない。」

ということは課題として言えるのに、その高校を実際に作成してこの「理想の村」の中に置くことが出来ないということなのです。具体的に希望を形にしていく力にまだまだ課題があるということが見えてきたことで、今後取り組む課題も見えてきたように思います。それは未来へのビジョンを持ち、それを具体的に実践する力を養うこと。それがすなわち良いPSFになりたいという動機付けにもなっていくのだと思います。

しかし考えてみれば、区の国の保健の中枢「保健省」にいるお役人も同様にこの、「未来へのビジョンを持ち、それを具体的に実践する力」に大きく欠けています。その現実に出逢い、非常に苦労しながら協力隊の活動をやっているワタナベユリさんが今日は同行してくれました。

着任後まだ2ヶ月に満たないけれど、テトゥン語を使ってしっかりとグループに入ってくれました。ユリさんの言葉、

「この国の人々が自分たちの健康を守りたいと、真剣に活動する姿が見られて良かった。保健省のやる気のない人たちを見ていると、この国はそういうやる気のない国なのか、と思い始めていた。でもそれは違うのだと思えて本当に良かった。自分なりに活動していきたいと思う。」

これからもユリさんの活動に協力していければと思います。

桑山紀彦

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