東ティモール3日目

今日はエルメラ県ハトリア郡内のマヌサエ村のSISCa(包括的保健推進事業)。

現在10村をカバーしている「地球のステージ」は今日も道なき道を進みました。現在東ティモール事業は2台のToyota HiLuxで活動しています。1台は6年前に自己資金で買ったもの。新車で購入しましたが、かなりくたびれてきており今日は途中でもう一台、昨年購入した新しい方にみんなで乗り込んで進みました。こちらは外務省のODA、つまり皆様の税金で購入していただいたものです。

今は乾期なので道は乾いていますが雨期になったら絶対無理というような道が続きます。崖をくぐり、倒木をよけ、30度の勾配を上がり、川を渡ります。そしてたどり着いたマヌサエ村はまさに天上の楽園でした。なんと電気が来ており、人々の暮らしは変わりつつあります。

SISCaは主に母子保健と予防接種、結核コントロールを中心としていますが、ハトリア郡の保健所スタッフと「地球のステージ」スタッフの協力関係も非常に良好で、お互いの役割分担に従ってスムースに活動が進んでいきます。

乳幼児には体重測定、栄養チェック(上腕の周長)、そして予防接種。保健所のスタッフが手際よく進めていきます。そして横にはPSF(健康増進員)が常に付き添い、村の女性や子どもたちを導いていきます。このPSFの教育と質の向上、動機付けの強化を担当しているのが「地球のステージ」なので、活動はすこぶるうまくいっていると言っていいと思います。

そのPSFが行う今日の健康教育は「手洗い」。大切なテーマです。

妊婦のお母さんたちには体重および血圧チェックと胎児長チェック。必要に応じてのエコー検査です。うちの舞子さんの前職場GE(General Electric)社製のエコーでアイダがチェックしていきます。

しかし、外来を行うはずの医師がいません。保健省のミーティングとかで昨日から不在とのこと。結局外来診察は「なし」となり、村人もがっかりしながら帰っていきます。どうしてこんなに医師がいないのか。それには多くの理由があります。アイダが教えてくれました。

「月に1回しかないSISCaは村人にとっても大切な病気の診察の場。そこに医師がいないということは病気になったら覚悟しておけと言うこと。死ぬかもしれない。

まず第一に保健所や保健省が行うはずの医師の采配が全くできていないということ。月に1回のSISCaの日にミーティングがあるなら、前もって分かっているはずだから代わりの医師を送り込むとか、そういう思考が行政府にない。だから”今日は医師がいません”が平気で通ってしまっている。

それに加えてこうして村に派遣され、駐在”させられた”医師がみんな村の中の駐在を拒み、グレノやディリに住んでいること。だから村に親和性がないし、自分がいなくてもなんとかなるという思いに逃げてしまっている。だから月に1回のSISCaに自分がいなくても、別に何もケアしないという思考になってしまっている。そんなやる気のない医師がなぜこうして村に派遣されているのか、それは国の施策に全くビジョンというものがないから。

キューバ帰りの医師たちは帰国後すぐに村に送り込まれる。そこには指導医もいないし困った時に助けてくれる同僚医師もいない。全く孤立した状態の中に放り出される。そんな環境の中で自尊心や居場所を失い、しかしプライドだけはあるから自分勝手な行動を取ることでかろうじて自分を保とうとしている。

「家庭医制度」などと名前は立派だけれど全く実が伴っていないその制度の狭間で、若い医師たちはどんどんやる気を失っている。それは彼らが悪いと言うよりも、国の制度とそれを放置している保健省の上層部が無理解といわざるを得ない。

この問題はもう3年も続いている。問題は放置されたまま全くその改善への取り組みがなされていない。だから「地球のステージ」は村の中で浮いてしまっている存在の医師たちへセミナーも行っているし、日々の関わりも持っている。でもそれ以上に医師たちの孤立と居場所のなさは深刻化している。

こうなったら「予防」を強く意識して「病気にならない」という方針を貫くこと。もう一つはっきり言えることは「医師を頼りにしない健康作り」こと、最高の解決法だと思う。」

これから「地球のステージ」が進む方向が見えてきているように思います。

「自分の健康は自分で守る」~そのための手法を考え、村の人々に伝えていく。それこそ持続可能な取り組みであり村の安定につながる道だと思います。そのために行うことは、農業~栄養改善~健康教育~女性の自立という道筋。2年後「地球のステージ」は初めて農業系の国際協力に進んでいく可能性を考え始めています。

農業は人が健康に生きていく最も大切な「基盤」。家庭菜園造りやニワトリの飼育、水の確保など山がちなところで展開できる農業に取り組んでいきたい。特にこの国では比較的人気がある「豆腐(Tofu)」の普及などが出来ないかと考えます。

医療、心のケア(心理社会的ケア)、教育、そして農業。小さな団体ですが、多くの支援者に支えられていることが最大の強みですから、また「その時」が来たら農業に詳しい皆様のお力を借りたいと思います。

桑山紀彦

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