今日は山あり谷ありの1日でした。
嫌だったことは、新患で来た40代男性の暴言。震災以前より精神的な病気にかかっていたのだとは思いますが、これまでかかってきた医者の悪口ばかり。特に今回気仙沼でクリニックが流されたのにもかかわらず、避難所を巡回診療してまわっている小島先生(心療内科)の悪口などは非常に耐えられないものでした。
こういった患者さんは2,3年に1回ほど外来にいらっしゃるのである程度慣れていますが、昨日も我がクリニックで内科を視診した際に、奈実香先生に嫌みを言ったり、文句を言ったり、暴言を吐いたりと大変でした。看護師の美咲さんが一生懸命話を聞いてなだめようとしたのですが、決して納得せず、薬の出し方、その在庫の状況、検査結果の来方、医師や事務の口のきき方に文句つけてきます。
奈実香先生曰く、
「すべてに腹を立てている。すべてが気にくわない人」
今日はその人が心療内科を初診したのでもう大変。
僕が一番カチンと来たのは、
「俺は被災者なんだ。家も流された。仕事も失った。俺はこの世で一番悲惨な目に遭った。だから世の中は俺に何でもしなきゃいけないんだ」
という言葉。信じられない、こんなことを言う人間がいるとは・・・。
それでも家が流されてしまうってどういうことなんだろう。仕事を失うってどういうことなんだろう、と考えます。そして人間としての限界ってあるよな、と気持ちの面で歩み寄ろうとするのですが、例えば太君のお母さんはどうだろう、って思う。家が流されたのに人に向かって不平不満を言ったりはしません。
例えば江里ちゃんってどうだろう、って思う。家を失いお父さんも失ったのにちゃんと優しい気持ちで接してきます。そこに人の「品格」というものを感じます。限界を迎えたとき人はその素性がでてしまうと思う。一時的には混乱したり、取り乱したり、我を忘れたりすることもあるでしょう。でも、落ち着いたときもう一度人間としての品格を取り戻していきます。太君のお母さんも、江里ちゃんも立派だなあ、と思う。品格を保って凛として生きています。しかしこの患者さんはどうだろう。
「自分は被害者だから、何を言っても許される。どんなことだって周りは受け入れるべきだ。」
と言い放ちます。自分がぎりぎりになっても、そんな言葉だけは吐かないような人間でありたいと思いました。
午前中にうちのスタッフ林由美(よしみ)が仙台の陸上自衛隊に赴きました。陸上自衛隊が撮影した津波直後の映像をお借りするためです。
出てきた広報の島田さんはこれまた品格のある方で、
「心のケアや子どもたちのためであれば、この映像を有効にお使い下さい」
と特に厳しい誓約書を求めるわけでもなく映像を下さいました。先日TBSが報じた「陸上自衛隊の7分の未公開映像」というものです。
その映像には津波に飲み込まれていく名取側周辺や閖上の街が映っていました。そして最後には第2波、第3波で押し寄せる仙台空港への巨大津波の映像がありました。上空から「逃げろ~!」と叫びたかった自衛官の方ですが、きちんと撮影して下さっていました。たくさんの方が眼下で亡くなって行かれる瞬間の映像です。
そんな島田さんがおっしゃいました。
「自衛官の中にも、ご遺体の捜索、発見で精神的に変調をきたすものがたくさんおります。どうか“心のケア”をよろしくお願い致します。」
困難にあってなお、礼儀正しい品格の自衛官の方でした。
さて、明日は1日中外来です。がんばらないと。
桑山紀彦
私の経験・・・会社で常に人の逆側からものを言う他部署から転属してきた上司に仕えたことがあります。※ある時、業界で著名な取引先の社長が亡くなりました。私【会社として相応の対応が必要です】上司【過去の人に気を遣っていくら得するのか!】
※ある会話。上司【君は空を飛んだことあるか】私【物理的に無理です】上司【やりもしないで何故無理と言えるのか】私【・・・・・】
これは詭弁ですよね!!!
世の中には、まともな物差しで測れない規格外の人っているもんです。こういう人は「思いやり欠乏症」だから、まともに相手をするとこちらが相当疲れます。
立場上やりにくいでしょうが、こんな時期です、「適当に」も時には必要ではないでしょうか?
おはようございます。
たまに信じられない事をおっしゃる方がいらっしゃいます。私も出くわした事がありますが、どんな状況になっても、あんな事言う人間でいたくないと考えました。
そして、心掛けています。
これまでは2、3年に1回だったけどもっと頻繁に出くわすかも…そんな時スタッフの皆さん嫌な気持ちになると思いますが、頑張って下さいね。
クリニック全体がお辛い診察日になりましたね。
精神科医としてご覧になり、人格に障害をお持ちとお感じになられませんでしたか。
私の身近にも同じような考えで、他人と関わり問題を起こす人がいます。対処のしようがありません。家族は困り果てています。
自衛隊の方の素晴らしい対応に本当に感謝ですね。
行方不明の方が見つかりご家族と対面できたとき、お気の毒な姿に衝撃にも近いショックをうけられると思います。
でもご家族にとって、辛い任務を引き受けて下さる方がいるからこそ家族をみつけられます。とても辛く大変な尊いお仕事をなさる皆さんの心身が守られますよう祈っています。
この震災で自衛隊の方や多くの援助して下さる方々のお力に、支えられ生かされて2カ月過ぎました。
していただくから、自分の力をそれぞれのペースでだせるようになるといいなと思います。
色々な人がいますね。嫌みや暴言を直接聞いた桑山さんやスタッフの方々は、どっと疲れたのでは…精神的疲労は溜めないで吐き出し合ってくださいね。
「すべてが気にくわない人」は毎日どうやって過ごしているのでしょうか。そばに寄り添ってくれる人は、いるのかなぁ。
自衛官の方々のご活躍テレビでみています。それはそれは大変なご苦労かと思います。心のケアが必要ですね。
各地の大雨が気になります。きょうの外来、素敵なことがありますように…。
震災から2か月経つのになかなか先が見えません。
どうにもならない苛立ちや不安が大きいのでしょうね。
「品格」が欠如していても、立場上、来院される方を拒むわけには行きませんよね。
本当に大変なお仕事です。クリニックのスタッフのみなさんのケアも必要ですね。
自衛隊の貴重なビデオ、借りられて良かったです。ステージや津波祈念資料館で活用できますね。
人の気持ちのありようを試される、ぎりぎりの暮らしが続いている被災地へ希望が届きますように。
勤務が終わり、帰りの電車に乗ろうとすると、1人の生徒が駅舎の中にいた。1人ポツンと薄暗い明りの中、ベンチに座っている。
勤務する定時制は授業が終わるのが午後9時10分。帰りの電車の時間は9時45分である。一つ早い電車もあるが、彼はそれに乗らない。しかも夜は無人駅である。他に乗降客はいない。
僕は生徒に話しかけた。
「1人でいるね」
「他の子と一緒にいたくないんだ」
「どうして」
「・・・・・」なにも答えない。
手に持っていた缶ジュースを指して
「ジュース旨いか?」と尋ねた。
「中学校のときは、ジュースをみんなにあげたんだ」
「くれないか、そう言われたんじゃあないか」
「そうなんだけど、みんな僕にあれくれ、これくれと云うんだ。だから自分で買ったジュースを飲んだことがなかったんだ」
「だから、いつも1人でいるんだ。それで1人で電車に乗ることにしてるんだ」
「でも、そのことは誰にも言わないで」
「わかった、誰にも言わない」
僕は、その生徒と一緒に電車に乗ったが、急に悲しくなった。
電車の中で、その生徒といろいろ話をする。しかし、こころが晴れることはなかった。
生徒が電車から降りたあと、ホームを歩く後ろ姿を見ていると、明日も学校はあるよ、いろんな生徒がいるけど頑張れよとつぶやいた。僕はいままでなにも気付かずにいたことを詫びた。
明日、なんとかする。そう、こころに決めた。
和歌山のヘボ教師 中尾
桑山さん読みました。心を考えると負担が大きいように思います。私も近親者にそういった方がおります。どうしてこんなことをするんだと怒りをおぼえますがそうすることでしか生きていけなかった悲しい人なんだなと思うようにしてます。桑山さんは何も悪くないしそういった方のお話は右からきいて左に流していただければと思います。いつも応援してます。自分ができないことを日々実践されている方は尊敬してしまいます。負けないで!桑山さん!!!
自分も数年前そういう方と対峙することがあり、たいへん辛かった経験があります。その方をどうしてあげたら良かったのか未だに分かりません。支えてあげようとすると、余計に体をこちらに預けてくる・・・・・・・自分の力では支えてあげられませんでした。医者とはいえども生身の人間です。心があります。あまり、抱え込まないようにしてくださいね。いつも応援しています!