月曜日の外来はひたすらひたすら延々と続きます。
しかし考えてみれば、約7割の患者さんが何らかで震災、津波に関連して心の調子を崩していることがわかります。まさに「東北国際クリニック」は震災最前線という感じがします。あの阪神淡路大震災の時、ある個人クリニックがそうやって直接被災された患者さんを多く受け入れ、その日々を記録していましたが、毎日は意図しなくても震災、津波に関連していきます。
いつも外来に来てくれている絹子さんも来てくれました。絹子さんは石巻でお母さんを亡くしています。哀しみが大きすぎて、なかなかその時の様子が語れず苦しそうでした。でも今日、2ヶ月を目前にようやくその時の話をしてくれたのです。
「私は故郷を離れて名取に暮らしていたので、津波の時、両親は石巻の実家にいました。最初地震が来て、両親は家の外に出ました。でも、しばらくして揺れがおさまったので、両親は家の中の片付けをしていたんです。けれど周りの人が”津波が来るかもしれない”って言うので、両親はクルマで高台に避難しました。でも、一向に津波が来ないので、父は”家を片付けに行ってくる”と言って降りていこうとしたんです。母は“危ないからここにいて”って言ったんですけど、父は言うことを聞かない人なので、“お前はそこにいろ”と言って家に戻ってしまいました。そして、津波が来たんです。高台からそれが見えた母は“お父さんが危ない”と言って家の方に降りて行ってしまいました。近所の人が見ていたそうです。
父は、一階の片付けをしていたんですが、津波が来たのがわかって急いで二階に逃げました。でもどんどん水が上がってくるので窓から屋根に出て、二階の屋根の上に上がったんです。そして家ごと流され始めたとき、隣の人がロープを投げてくれてそれ伝いに隣の家に飛び移り、土手の方に脱出できました。でも母は行方不明になってしまいました。父は自分を探しに来た母が結局亡くなってしまったことを今でも悔いています。
でも遺体で見つかった母は、今土葬にふされています。今週末掘り出して翌日火葬にできることになりました。」
「絹子さん、良く語られましたね・・・。」
「はい、ようやくここまで話せるようになりました・・・。」
「ちゃんと聞きましたよ。」
「母を火葬にすることができたら、今よりももう少し前に進めそうな気がします。」
語りの時期が来ました。
被災者はみんな語りたくなっています。今からが大切。心のケアの本番が始まろうとしています。
今日は名取市教育委員会の瀧澤先生から電話を頂き、
「不二ヶ丘小学校の中に部屋が確保できそうです」
やりました。そこが心のケアの本拠地になります。今のところ、「ゆりあげ研究所」という名称で行こうかと思っていますが、瀧澤先生曰く、
「研究所とは、ちょっと堅いような気もしますね・・・。」
う~む。
まずは、大きな第一歩。学校現場の中に心理社会的ケアワークショップの拠点が設立されます。これは全国でも初だと思います。
がんばろう!
桑山紀彦
物は充足出来ても、お金では買えないものの充足は大変な仕事ですね。
時間がかかり根気のいる仕事だと思いますが、ワークショップの立ち上がりは何よりの朗報です。
大変でしょうが価値ある成功をお祈りします。
みなさんが辛い経験を語ろうとしてきているのですね。嬉しいことです。
また先生のサイトを読んで胸がいっぱいで・・
何を書いてよいのか。
語り始めた皆さんのお話を傾聴することは、専門家の方にしかできないでしょうか?
絵本の読み聞かせやマッサージ等で、ふれあうことの出来た方から、お話していただけた時に‥きちんと聴くことができるよう、読んでおくとよい本などありましたら教えていただきたいです。
…………………………
5月7日夜に放映された、NHKスペシャル『巨大津波「いのち」をどう守るのか』の中で、閖上小学校へ津波が押し寄せた話も取り上げられていました。
九死に一生を得た方(津波のニュース映像に写っていた当事者)への取材によるリアルな内容で、とても教訓となる番組でした。
再放送は5月12日(木)午前0:15~1:28の予定だそうです。
桑山先生 いつも暖かい言葉で診察して下さってありがとうございます。
辛い思い抱えても生きて行く大切さ、苦しさをこの震災で体験することになりました。
多くの人がそれぞれの心の重さを持ってしまいました。
ケアをして下さる方々にとっても、難しく長い期間を要するることになるのでしょうか。お力をお借りします。
苦しい心を抱えている人達も、どうか一人で抱えこまないで専門の方に相談されてみて下さい。
信頼できる方は必ずいます。頑張らなくていいと思います。
ただ諦めないでくださいね。
朝、登校すると研究室のパソコンを起動させ、まず読むのがあなたのブログ。そして、毎日16時過ぎには多くの方から寄せられるコメントも一緒に印刷して、ホチキスで綴じ、パンチで穴を開けて、帰宅後お袋に手渡す。これが日課です。そうして綴ったブログ集の厚さが昨夜測ったら5cmにもなっていました。
あなたの嘆き、悲しみ、苦しみ、怒り、そして精一杯の努力と何とか希望を見出そうとする行動のすべてがここに記されている気がします。日々何度も精読する内容はもちろん、この厚みを見るだけでもまさに圧巻の思いです。
自分に何ができるのか、を常に考えながら、ほんの小さなことにも今回の震災に結び付けて、より良い方向へと心と体が動いています。こんなことは初めての経験です。
そんなに一生懸命やっているのだから、さぞかし疲れているでしょう。もし機会が作れるのなら飛騨高山の自宅へ一瞬戻り、親父の墓に参った後、居間のソファで数時間の午睡を摂りませんか。
故郷の今後を思うと、痛み悲しみもおさえることが
できないのですが、今日のこのブログを拝読しまして、
少し、痛みが緩和された気がします。
ゆりあげ研究所・・・。
そのようなスペースができるというのは
地元の皆さんの支えになると思います。
不二が丘であれば、名取の皆さんも
比較的行ける場所ではないかと存じます。
関西の地より応援しております。
そして、故郷の皆さんの心を支えて下さっている
先生、スタッフの皆様に言葉に言い尽くせない感謝を
申し上げます。
泣くと頭が痛くなるのは脱水症状だったのですね。初めて知りました。
辛い経験を語ること、気持ちを言葉に整理することは大事なことなのですね。
語りたいときに誰か傍にいてくれる人がいますように。そう願わずにはいられません。
ゆりあげ研究所もいよいよ始動でしょうか。くれぐれも無理をなさいませんように。
桑山さんが倒れたら何にもなりませんからね。
天気予報によると、今日から明日にかけて大雨が降るといっている。
わが故郷でも朝から少しずつ雨が降り出した。早朝はまだ曇っていたのだが、昼から夜にかけ雨の量が少しずつ増えてきた。
なにも被害のない関西では適度な雨は潤いになるが、被災地では雨は恵みの雨にはならないのではないか。まして大雨など東北の人々にとっては言葉にならないくらい辛い雨ではないだろうか。そう思うと、平穏に暮らす僕たちはまことに申しわけなく思う。せめて、被災地には豪雨は降らないでくれと祈るばかりである。
自然のやることはまったく予想がたたず、人知ではどうしょうもないことが起こってしまう。
故郷に降る雨を眺めながら、東北の雨よ、どうか、人々のこころを濡らさないでくれというばかりである。
よ~く 考えたら、地球のステージのスタッフ 皆さん 被災者なんよね。たまには ゆっくり休んで、身も心もリフレッシュして下さいね。
本日ご挨拶いただきました!
お三方と直接会話はできませんでしたが,
心強い限りです!
「ゆりけん(仮称?)」
子どもたちの,そして私たちの心の支えとなってくれると思います。
そして・・・そろそろ事務所に
おじゃましようかなと思っております。
「言葉にする」ということは、大切なことなんですね。
普段の生活でも、人に話すということで自分の気持ちが整理されるということがありますが
それは似ているのでしょうか?
小学校の中にある、その部屋で
多くの方の語りが積もっていくのですね。
心のケアの本番が始まるのですね。学校に心理社会的ケアワークショップが出来るのですね!
亮子さん絹子さん方々辛い思いをなさっている皆さんの安心出来る場になると思います!
桑山さん、飛騨高山のお近くにいらしたら、ぜひお時間作って、午睡なさっていらしてほしいです。私も思います。
どうかお身体を大切になさってくださいね。