閖上研究所、通称「ゆり研」

 今日は朝から閖上三昧でした。

 近くにあるイオンモールでは、何度目かになる「閖上朝市」が開催されていました。元々は閖上で開かれていたものですが、今はイオンモールの駐車場で開かれています。新任の林さん。上野美穂ちゃんが青年海外協力隊マダガスカル隊として出かけて以来、総務経理の石森さんを含めた3人体制であった「地球のステージ」はこの震災に対応するべく、人材を得たのです。その林さん(看護師&保健師、今後の心理社会的ケアの担当)と明ちゃん、誠君、そして赤木さんで出かけましたが、とっても賑わっていて良い感じでした。

 そして時間を見つけてゆっくりと閖上を歩きました。ゴールデンウィークに入って、逆に閖上への入域制限が厳しくなり許可車両しか入れなくなっています。もちろんフリード君は許可車両なのでスムースに入って行きました。そして念願だった閖上小学校の音楽室に行けたのです。

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閖小の時計は津波の到達時刻で止まっています


 ここは閖小の子どもたちだけでなく、たくさんの大人も逃げてきたところです。そして不安な一夜をみんなで過ごした音楽室。何人かの子どもたちはそこから「流されていく人を見た」と証言しています。

 しかし行ってみていくつかのことがわかりました。

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閖小3階の音楽室


 まず、音楽室は校庭に面しているので、視界はまず東側、校庭側に開けていると言うこと。そこには県道10号線が走っていて、海の方を見渡すと閖上中学校が見えます。しかし、証言のいくつかは「人が道で流されていた」となっています。と言うことは、音楽室から見えている県道10号線を流されていたことになり、その県道は南北に走っています。と言うことは津波はまっすぐ海の方から来たのではなくて、名取川の方向から迫ってきたということになります。名取川は北方向にあるのです。

 それにしても広い校庭が目の前に広がっているので、人が道を流されていく姿を見ることはかなりの視力でないと難しく、しかも長時間にわたって凝視していないと流されていく人を見ることは難しいと、感じました。それは実際に音楽室から外を見てみて思ったことです。

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向こうに県道10号線


 だからひょっとすると子どもたちは別のところで流されていく人を見ていたのかもしれないし、実際には見ていないけれど、見た人の話を自分の心の中に無意識に取り込んで語っている可能性もあります。

 これから長い時間をかけて子どもたちの「物語化」を支えていく必要があるのですが、その「物語として紡ぎ出していく」作業のためにはまず自分自身がその現場に足繁く通い、情報を集めていく必要があると思いました。

「音楽室に避難したけど、その窓から人が流されていく姿を見た」

 という証言をちゃんと検証し、しっかりとした物語にするにはいくつかの疑問を解いていかなければなりません。広い校庭の向こうの県道10号線を流されていく人を見たのか、それとも校庭の中に流されていく人を見たのか、とても大切なポイントなのです。

 ふと見ると正面の黒板に大きく書かれていました。

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 「これからも元気でなかよく、やさしい心をもってべんきょうやうんどうなどがんばってください。われわれはいつもおうえんしています。

 自衛隊第35普通科連隊3中隊一同」

 決して目立つことなく、黙々と遺体の捜索をし、ご遺体に接して合掌する。日頃はテントで寝て何日もお風呂も我慢して任務をこなす自衛隊の皆さん。報道されることなくてもこんな優しい気持ちで子どもたちに接してくれています。こんな黙々とした活動の人々に支えられて閖上は守られているのだと思いました。

桑山紀彦

閖上研究所、通称「ゆり研」」への9件のフィードバック

  1. それにしても、皆さん少しは休まれているのですか?
    4日の4チャンネルZEROで粉じん被害で今までにない肺炎患者が増えているのを報じていました。
    老婆心ながらくれぐれも体調管理には気をつけてください。

  2. アメリカ海軍特殊部隊シールズによる、ウサマ・ビン・ラディン殺害事件がマスコミを賑わしている。40分に渡る銃撃戦の末殺害であるという。この事件はジェロニモ作戦と名付けられ、オバマ大統領はじめアメリカ政府首脳が、ホワイトハウス作戦室でリアルタイムで見守る中実行された。
     アメリカは2001年9月11日の同時多発テロ事件の報復であると云っている。これは戦争ではない。国際法上戦争とは国家と国家の争いであり、今回の事件は、法的裏付けがなくアメリカ政府は軍にによる殺人の実行をしたようだ。これには次のような論理が働く。アメリカ政府の論理は「力」が「正義」だということである。
     今回東日本大震災で多くの人々の命が奪われた。いまだ身元不明の遺体が一万人以上いる。DNA鑑定による身元確認のためのデーターベース化も進んでいる。
     人間の意思によらない自然災害は防ぎようがない。死は命あるものの宿命であるが、人類の歴史上、人為によらない人間の死亡がなかった日々はない。
     自然災害は防げないが、人為によるものは防げるだろう。だのに、なぜ・・・・。
     わたしたちは、人為による人の死がない日がいつかくると信じていいのだろうか。
        和歌山  中尾

  3. 連日 心身ともにお疲れ様です。仮設住宅の建設も始まりましたが、仮設に住めるのは2年。その期間にいろんな事が震災前の様に戻れんかねぇ? 昨年、総会後に宿泊した、こうりょう高校野球部の男の子たち、どうしちょるんじゃろうと、ここ数日かんがえています。確か、気仙沼に学校があったとおもいますが。
    今日もいいお天気。一人でも多くの方が、待ちわびている家族の元に帰れます様に。

  4. たくさんの人が避難した場所…。
    最近テレビでは原発やアメリカのことを多く取り上げているせいか、
    普通に登下校できていることの喜びを忘れそうでした。
    桑山さん、後藤さん、石橋さん、お身体は大丈夫ですか?
    お母さんも、お父さんも、そして私もずっと気にかけています。
    毎日ブログを見ることが、桑山さんや本当のことを知る方法だと今も思っています。

  5. 中尾さまのコメントをみて、数日前のニュースを思い出しました。
     被災地で「アンパンマンの歌」がはやってるとかで、作家のやなせたかしさんのインタビュー記事が載ってました。
    ・・・・・・・・・・・・
     「アンパンマン」を創作する際の僕の強い動機が、「正義とはなにか」ということです。正義とは実は簡単なことなのです。困っている人を助けること。ひもじい思いをしている人に、パンの一切れを差し出す行為を「正義」と呼ぶのです。
     なにも相手の国にミサイルを撃ち込んだり、国家を転覆させようと大きなことを企てる必要はありません。
    アメリカにはアメリカの“正義”があり、フセインにはフセインの“正義”がある。
     アラブにも、イスラエルにもお互いの“正義”がある。つまりこれらの“正義”は立場によって変わる。
     でも困っている人、飢えている人に食べ物を差し出す行為は、立場が変わっても国が違っても「正しいこと」には変わりません。絶対的な正義なのです。
      正義って相手を倒すことじゃないんですよ。アンパンマンもバイキンマンを殺したりしないでしょ。だってバイキンマンにはバイキンマンなりの正義を持っているかも知れないから。それに正義って、普通の人が行うものなんです。(中略)
     確かにアメリカは911で多くの人の命が犠牲になりました。でも、その「報復」として今回の武力行使があったとすれば、相手はまた「報復」をするでしょう。彼に代わる指導者が現れ・・・。武力は憎しみしか生まない気がします。果たして解決するのだろうか・・・と。
     私には今7ヶ月になる娘がいます。アンパンマンの歌を彼女に歌いながら、歌詞を思いながら、「本当の正義」とはなんだろう。と考えています。娘に「力が正義だ」とは教えたくありません。優しい子に育ってほしい、「ひとつのお菓子を半分こ」できるような子になってほしいと思っています。
     
     海外にいて何もできませんが、桑山さんの日記をみて、被災者の人の思いに触れ、今の自分に何ができるか、考え続けています。体に気をつけて過ごしてくださいね。

  6. 黙々と任務をこなしながら 子ども達への温かいメッセージを残して下さった自衛隊の方々の優しい気持ちに感動しました。
    「華やかな花よりも 人知れずひっそりと咲く花」に より心が動きます。
    日本人の繊細なメンタリティーはすごいですね!
    復興のエネルギーを感じました。 がんばれ!!

  7. 初投稿させて頂きます。本当にいつもこのブログから
    沢山の感動と勇気を頂いております。
    自衛隊の方、素晴らしいですね。涙が止まりませんでした。
    地球のステージの皆様も、お身体御自愛下さいね。

  8. 閖上小学校の音楽室から子どもたちは押し寄せる濁流を見てしまったのですね。
    後から聞いたことも重なって子どもたちの胸に残っている恐怖、喪失感、悲しさ…。
    その心を解きほぐしていくためには真実を探ることも大事なのですね。
    桑山さんの進める心理社会的ケアで大勢の子どもたちが救われるよう願っています。

  9. 本当に陰で支えてくれている自衛隊の隊員の皆さんには頭が下がります。この甚大な被災した現状に目を覆いたくなる場面も数多くあったことと思います。それでも任務とはいえ日々の活動にあたってくださり感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです。一文字、一文字しっかりと書かれた力強い黒板の文字に明日への祈りを感じます。
     しかし隊員の皆さんも同じ人間です。隊員の方々の心のケアは十分なのでしょうか。

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