休みのない国際さん

 今日も一日いろんなことがありました。

 午前中からクリニックには患者さんがいらしています。そんな皆さんを診てくだるのは、広島からやってきた優しき小児科医、木原先生です。木原先生はご自身開業されている広島県三原市のクリニックを休みにして来てくださいました。
 本当は昨年の還暦の祝いもかねて奥様とノルウェーに旅行されるはずだったのですが、3月11日の震災と津波の被害を考え、
「これは旅行よりも現地に向かうべきだ」
 と考えられ、5月1日から7日までの貴重な時間を使ってきてくださいました。
 松本さん、平野さんというクリニックの看護師さんとともに「チーム」で来てくださいました。一転広島弁が飛び交うクリニックとなった「国際さん」は、木原先生のおかげで、ちゃんと24時間体制が維持できています。
 午前中、避難所や、親戚の元に避難していらっしゃる患者さんを診察したあと、昼からも、救急隊からの搬送を着実にこなし、小児科医と言ってもしっかりと大人の診察もこなすまさにベテランの域に達していらっしゃる木原先生をみていると、自分も13年後に先生のようなまなざしになっていたいものだと思いました。
 
 午後からはまず館腰小学校の避難所への巡回診療です。今日から第一陣の仮設住居引っ越しが始まりました。ゆっくりと、けれど確実に避難所の人々の移動が始まっています。しかし現状で考えるとすべての皆さんが避難するには6月半ばまでかかりそうです。
 館腰小学校の避難所では、やはり風邪が多くなっています。今朝も寒かったですがまだまだ東北は冷えるんですね。木原先生は張り切って5人の患者さんを診、僕は2人の患者さんを診察させていただきました。
 続いて高舘小に向かおうとしたのですが、途中で緊急連絡。救急搬送でおじいちゃんが来ることになりました。そこで急遽木原先生をクリニックにお送りして桑山だけ高舘小に向かいました。
 ここも第一陣の仮設住居入居の方が引っ越しをされるところでした。もちろん時間はかかるけど、ゆっくりといろんなことが前に進んではいます。食事担当の阿部さんが、
「あら先生!冷蔵庫ありがとうね。みんな本当に助かっています~」
 と声をかけてくれます。
 ここを担当してくれている青森市の保健師さんが言いました。
「あの、私30日からここに入っているんですけど、子どもたちが心配です。やたらと大人たちに突っかかってくるし、なんか粗暴に見えてしまうんです。ストレスたまっているように見えてならないんですが・・・。」
「そうですね、子どもたち本当は泣きたかったり叫びたかったりするのに、この環境ではできないし、大人に心配かけたくないって考えて抑え込んでいる反動のように見えますね。」
 子どもたちを心配する保健師さんの言葉でした。
 そういえば、館腰小学校でも一緒にサッカーをやった大宮君が言っていました。
「オレ、高校に入ったんですけど、その高校に閖上中から進んだのは俺一人で・・・。そんでもって誰も話しかけてくれないんすよ。」
「なんでかな」
「気を遣ってくれてんだと思うんですけど・・・。だから“気にしないで、オレ普通だから”って言ってもやっぱりみんな失った閖上出身だってことだけで、声かけてきてくんないんですよね。」
「どう声かけていいかわかんないんじゃないかなあ」
「だとしても、オレとしては辛いっす」
 やはりいろんなストレスが子どもたちの心にのしかかっているようです。とにかく5月7日までの24時間急患受け付け体制とともに、子どもたちの心のケアを本格化していかないといけないです。
 それにしても、29日の大川愛子さん、長谷川さつきさん、砺波の長田さん、柳瀬さんを中心としたドーナッツ隊のあと、岐阜からは元大垣北高校教諭(現在県の出先機関で教鞭をとっていらっしゃいます)翠(みす)先生父子、そして桑山の永遠の親友、愛知県一宮市の画家、春日井誠、そして北海道の雪をも溶かす熱血教師、札幌西高等学校教諭の田辺先生が駆けつけ、駐車場の泥だしを完璧にしてくれたこと。そして、神戸から福井さんが来て事務で止まっていた仕事を一気に仕上げてくださったこと。八王子からは赤木さんが来てひたすら料理をつくりまくってくれたことが嬉しかったですね。
 みんな「地球のステージ」でつながった皆さんです。でもたとえ被災地に来られなくても、ご自身の街の中でできることをしながら、ある意味自分らしいゴールデンウィークを過ごされることもまた「支援」だと思います。なぜなら以前よりお伝えしていますが、僕たちが目指していることは「普通の生活に戻ること」ですから、皆さんがそれを普通にされることが私たちにとってもはとてもありがたく、精神的な支援になっています。
 どうぞ、自分らしい形のゴールデンウィークでありますように。
桑山紀彦

休みのない国際さん」への6件のフィードバック

  1. 色々な方々に支えられて国際さんは毎日頑張ってるんですね。地域の皆さん、救急隊員の皆さん、心強いでしょうね。
    人のつながりって大切ですよね。
    なかなか話しかけて貰えないで寂しいじゃろうなぁ。何を話して良いか分からず同級生も辛いじゃろうし。 お節介な子 出て来てくれんかなぁ!

  2.             鼻毛と復興支援(汚くてごめんなさい)
     どうもこのごろ鼻の中がむずむずむずする。花粉症のせいかと思って鼻の穴に指を突っ込むと、ゴワゴワとした指ざわりが感じられる。どうやら不精を決め込んでいたせいか鼻毛が伸びてきているようだ。指先に当たる、これはという鼻毛を人差し指と親指で挟んで抜いてみると、見事な白光のする白毛が出てきた。それも剛毛というような白毛である。年を取り、頭に白髪が増えてきたのは分かるが、このような見事な白毛がついに鼻毛までとは。われながらその白い輝きを見ながら感心する。
     しかし、被災地に支援に行きたいが、鼻毛まで白毛になるようではこんな年寄り迷惑をかけるだけ。 
     鼻毛を抜きながらなにか支援できることはないかと考えてみると、テレビのニュースで農産物を買って被災地を応援してくださいと言っていたのを思い出す。そうだ、それがいい。さっそく近所のスーパーに行って東北地方の農産物を捜してみる。だがなかなか見つからない。ここは和歌山なんだ。それも日高平野に囲まれた日高町。地元の農物産で溢れている。東北地方の農産物が並ぶはずがない。近隣の農家から農産物が届けられているのである。もしここで買ったとしても我が故郷の支援にしかならないと思い返し、家にとって帰りパソコンの電源を入れた。さっそく楽天市場にアクセスしてみると、たくさんの東北地方の農産物が並んでいる。
     あれこれ見ていると、なかなか美味しそうだ。ここでいろいろ買うことにした。きゅうり、白ねぎ、ミニトマト、白菜等々である。、いろいろ農産物を注文してみたが、昨日地元で買って冷蔵庫にたくさん入れたのをすっかり忘れていた。そんなに注文してどうするのと、あとで家人に大目玉をくってしまったのは云うまでもない。とほほほほ・・・・・・。
     よこよく考えない私であった。
          
             和歌山 なかお

  3.  子どもたちの心、心配ですね…
     全国からの支援、それは 地球のステージファンが全国にいるってことですね(*^_^*)
    もちろん 私もその一人!
    大垣北高関係の方が応援に駆けつけていらっしゃるの 嬉しいやら、羨ましいやら…
    私は私なりの 被災地支援の仕方でゴールデンウィークを過ごします。
    (毎日、なかおさんのコメントにも感動しています)

  4. 木原先生の行動素晴らしいですね。ありがとうございます。
    勿論 奥様、お二人の看護師さんも・・・
    地ステの仲間(勝手に言ってごめんなさい)たちも ありがとう!
    考える前に動いてしまう私が 今回だけは違うんです。動けないんです。
    でも たくさんの人々の それぞれの動きが 嬉しいです。
    ありがとう! ありがとう!
    昨日は 友だちと たくさん沢山話し合いました。
    大きなところに届いているお金ちゃんとみんなに届いて!
    おとなも 子どもも 思いきり泣いてほしいと
    被災していない私に何がわかる?と言われれば その通りです。
    でも しっかり見ていこう。と思いました。心と目で!
    まだまだ大変でしょうが、皆さんお身体 ご自愛ください。

  5. 心優しき熱血漢の木原先生と看護師の松本さん・平野さんのチームワークをとてもうれしく読ませていただきました。 
    20年ぶりの懐かしの再会がお預けになったのは残念ですが、オスロから応援エールを送っています。
    「私は何も言わないのに クリニックの休診日を利用して 自主的に被災地ボランティアに手を上げていた二人の看護師のことを誇りに思っている。」と木原先生がしみじみとしたメールをくださいました。
    厳しい環境でお忙しいとは思いますが、仙台での日々がどうか有意義でありますように。
    「地球のステージ」のコンサート 三原でも実現するといいですね!! 
    被災者の方々の極度の緊張感が心身ともに 大きなダメージを残していることに心が痛みます。
    直接の支援はかなわないけれど 「今 出来ること」を精一杯やりながら 桑山チーム・木原チームの同伴者でありたいと思っています。

  6. 木原先生が大事なメモリアル旅行を中止され、桑山さんのクリニックで
    診察してくださっていることに深く感謝します。
    お休み返上で、先生と一緒に来てくださったクリニックの看護師さんの
    松本さん、平野さん。本当に有難うございます。
    広島でも素晴らしいチームを組んでいらっしゃるのでしょうね。
    名取で支援してくださった皆さんもお疲れ様でした。
    地球のステージは、心と心でつながっている素敵な仲間が大勢いますね。

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