ミャンマー、活動最終日

ついにミャッセ・ミャー村の本祭が始まりました。

外国人がこの祭りに参加したのは今日が初めてというその重責を感じつつ、異国の人間であろうがなかろうが常に心開いてオープンな村の人の姿勢にびっくりしてしまいます。敬虔な小乗仏教徒の皆さん。相互扶助が基本ですから私たちのような外国人にも非常に親切です。カメラも「どんどん撮って!」とみんなが言う。う~ん、自分の文化や宗教、生き方に自信があるからきっと排他的にならないんだろうなあ、と思えてきます。

さて、午前中は三々五々周りの村からも人が集まってきます。今日は基本的にミャッセ・ミャー村の本祭ですが、同じ宗教でもあるのですぐ隣のタオユ族の村、ミャッセ・タオ村のみなさんもお供え物をしています。常に隣人とは協力関係なのです。

午後になり太陽はかなり元気いっぱい。毎年雨が降るというのに、この2日間全く雨は降りません。作物への影響が危惧されますが、毎年この本祭は5月の下旬。今年は珍しく5月の初旬なので、雨が降らなくてもあまり心配はないといいます。大体5月15日過ぎから雨が降るとのこと。両手、顔が真っ赤に日焼けしながらも、この貴重な村の本祭を4K動画におさめていきます。今回はあえてドローンは持ち込みませんでしたが、だからこそ地上撮影に集中できたかも知れません。

パオ族の女性たちは年に1度のこのお祭りにその「美」の全てを集結させるがごとく、美しく着飾ります。日ごろは質素な身なりのうちの里子さんたちも、この日はまるで別人。民族の美しさを全身にたたえています。

村の本祭と言ってもミャッセ・ミャーの僧院長自らが、とても気さくでオープンな人物であることが影響しているのか、こっちに向かって手を振ったり、ピースサインをしたりとほんとうに和やかなものです。

お寺の中では村人が次々と寄進をしていきます。一人大体1000チャットくらい。日本円で100円相当です。でも、ちゃんとそれに領収書を発行し、寄付した人の名前と金額が次々にマイクの大音量で放送されていきます。これこそ、ミャンマーという国の根底を支える「寄進」です。

 

どれだけ寄進をしたかで来世の待遇が変わると信じている皆さんは、次々とお寺に来てはお金を寄付していきます。例えば今日1日で1000人が1000チャット寄進したら、100万チャット。おおよそ日本円で10万円です。それはお寺に集められ、例えば村の道路が壊れたとか、水道管が割れたとかそんな時にお寺からの拠出によって修理されていきます。

この村にいると中央政府という存在をほとんど感じません。

村人がいて、村長がいて、村の寄り合い衆がいて、僧院があり、僧院長がいて、人は僧院に寄進し、僧院が村の寄り合い衆の意向を受けて村にお金を落としていく。まるで小さな行政単位が村ごとにできあがっていて、自立しながら運営されています。そして年に1度のこの本祭では周囲の人も含めて多くの人が集い、気持ちを一つにして自分たちの存在の基盤であるいくつかの村の集合体意識を高める。

初めての外国人である私たちに、好奇の目を向けるわけでもなくましてや排他的に接することもない村人の姿勢は、こういった生存システムに裏付けられた「自信」と「自立」によって成り立っているのではないでしょうか。

午後2時。

いよいよミャッセ・ミャー村の寄進行列が始まりました。子どもたちはほぼ全てが奨学金を受けています。こちらの方が多くを学ばせてもらっているのに、多くの子どもたちやその親御さんたちが「ありがとう」と言ってくれます。

そんな中、村長さんが必死に女性たちの列を守っています。みると他の村の若い男の子たちが必死にスマホで撮影し、ことあらば声をかけようとしています。きっとこのお祭りで好きな人を見つけたいんでしょう。しかしうちの村長は、

「うちの娘たちに悪い虫は寄せ付けねえ!!」

とばかり鬼の形相で若い男たちから村の美女たちを守っています。それでもきっと守り切れず若者たちは恋に落ちていくんでしょう。日ごろは農作業で厳しい日々を送っている村の若い男たち。この日は彼らなりに「イカした」カッコで登場しています。男女の恋や愛。それはこのミャッセ・ミャーでも健在です。

気がつけば1万人はいるんじゃないかと言うくらいの人、人、人。普段は穏やかなミャッセ・ミャー村とその周辺だけれど実はこんなにたくさんの人が住んでいるのです。そして老若男女全ての年齢層が集っている姿を見ると、過疎化に悩む日本の地方都市のことを思いました。町や村に魅力があり、そこに働ける仕事があれば、実はみんなそこに残りたいのではないでしょうか。

年に1度の本祭。そこには人が生きていくエネルギーと出逢いのチャンスに満ちあふれていました。来年は空撮、するぞ!

さて、ヤンゴンに戻りました。

いまJICAでミャンマーに滞在している友人、濱田さん。イェイェさんの国費留学については不安が多い中、力を貸してくださることになりました。こうして国際協力の輪の中に、イェイェさん自身が大きく進み出てきていることに喜びを感じます。

桑山紀彦

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