僕のパレスチナの家族を紹介します

 僕にはパレスチナに家族がいます。それはそれは大切な家族。彼らも僕のことをそう呼んでくれます。「おまえはもう私たちの家族なのだ」と。

パレスチナの長兄はマジディ。運転手でいつも僕の活動を「移動」で支えてくれる頼もしい「兄」。笑顔が素敵で30年も前の巨大な12人乗りのベンツを駆して、どんなところへも行ってくれます。その長兄マジディには5人の子どもがいます。僕の姪っ子や甥っ子。

長男のラーエッドはもう18歳。そろそろこれからどうするのか決めないと行けないけど、経済学部に入ってビジネスマンになるのが夢の高校3年生。でもいつも気配りをしていて全体を見渡しているけど、もっと自分らしく振る舞ってもいいのにと、良く思う素敵なお兄ちゃん。

長女のルスルは今17歳。初めてあった時はヘジャブをかぶっていなかったのに今は髪を隠してすっかり大人の女性の仲間入りをしています。でもブランコに乗ると、「ケイ、私のことも押して!」と妹たちに混じって叫ぶ、まだまだ子どものルスル。ちょっと太めになってきたから、紅茶の砂糖の量を気をつけないとね。

次女のラワンは今15歳。どんどん身長が伸びて脚は兄弟姉妹一長いね。赤が好きでいつもへジャブも赤と決めているラワン。本当に赤がよく似合うよ。そろそろ手をつなぐのも恥ずかしい年齢になってきているけど、こっちが手を伸ばすとちゃんと手をつないでくる、まだまだ幼いところがあるラワン。

次男のモハマッドは遊び盛り。でもお兄ちゃんのラーエッドに叶わないし、ラーエッドよりも大人に見られたいからついつい遠慮がちになっているよね。でもやっぱり遊びになると全開だ。君に付き合っていると、本当にこっちの息が切れてゼイゼイしてくるよ。それでもきれいな花にいつも目がいって立ち止まる、優しいモハマッド。もう君も12歳か。

三女のラリームはもう会った時から離れる時までずっとくっついているぬいぐるみのような11歳。学校の成績はいつも1番でこの間の試験も平均点が98点だもんね。びっくりだよ。得意な教科は英語だから、ちゃんと英語で会話ができるラリーム。君が歌い出すと涙が出てくるよ。なんて美しい歌声なんだろう。ご飯もいつもいつも「おいしいね、おいしいね」といって食べる。道ばたの花も「なんてきれいなのかしら」といって、ずっと見つめている。天使の心を持ったラリーム。どうしてそんなにくっついてきてくれるんだろうか。こっちが恥ずかしくなるよ。でも、空爆の時はそれが辛くて体中つねり続けてアザを作っていたよね。君をそこまで追い詰めた空爆のことを考えると、頭がおかしくなりそうだった。

こんな素敵な僕の兄、マジディの子どもたち。

続く次兄はご存じダルウィーッシュ。まだエジプトにいて、この事態ではなかなかガザに帰って来れないよね。でも彼の子どもたちはガザで元気。

長男のジハードはついにアレキサンドリア大学医学部に合格。今エジプトだけど学校は休校状態でダルウィーッシュとカイロにいるよね。まさか君が静かに医者になろうとしていたとは。いつか一緒に仕事したいね。

次男のムンザは本当に英語が上手になったからびっくり。もう普通に英語で会話できるからすごいよ。得意はパソコンや機械類だから、将来はエンジニアを目指しているもんね。成績もさすがダルウィーッシュの息子。いつも満点に近い成績。でもあまり無理しなくていいと思うよ。

長女のヘバはもう20歳。年頃になったなあ。初めてあった時は12歳ではヘジャブもかぶっていなかったのにね。でも、家の中では僕の前だとちゃんとヘジャブを脱いでくれるんだね。僕はもう家族として認めてくれたんだね。嬉しいなあ、ヘバ。今はガザの大学の経営学部の2年生。一体将来はどんな商社に勤めるつもりなのだろう。外国を股にかける商社レディが夢なんだもんね。でもぬいぐるみが大好きで、あの空爆の日、じっとぬいぐるみを抱いていた君を思い出すよ。一緒の屋根の下で空爆を切り抜けたジハード、ムンザ、ヘバ、君たちはもう一生のつながりだと思っているよ。

そして僕の大切な弟、アーベッド。僕の通訳。

君の英語はもうすっかり一流だ。「国境なき医師団」のガザ地区スタッフとしての誇りがすばらしい。でもユーモアと柔軟性を持ち合わせた君と一緒に仕事できることが最高に幸せだ。僕の飛び飛びの英語の間をきちんと通訳として埋めることができるのは、君とカンボジア人のリー・ブンダラーだけだよ。

そんな君ももう2児の父だ。

長女のミリアムももう4歳だね。すっかり自己主張するようになって。おしゃれなミリアムは奥さんのイスラーム同様に赤が大好きだね。

次女のヒダーヤももう1歳3ヶ月だね。空爆下で救急搬送され、何とかヨーロッパ病院に運んだのに、結局それから2週間後になくなった姉のヒダーヤの魂を受け継いで生まれてきた娘。だから本当は三女なんだけど、今は次女だ。お姉さんのすべてを受け継いで、同じ名前で生まれてきた、大切な二人分の魂の子。去年は僕の顔を見るたびに泣き出してたけど、今年はもう大丈夫。でもまだだっこすると固まって、10秒後に泣かれちゃうけどね。これからが楽しみ。

こんなに多くの家族に囲まれて、僕は幸せだ。でも、みんな自由のないガザ地区に暮らしている。どこへも行けない。不自由な暮らしをしている。そう考えるだけで頭がおかしくなりそうだ。どうしてこんなに素敵な人たちが閉じ込められているのだろう。決して人を傷つけず誠実に生きている人たちなのに。

昨日もマジディはクルマを運転していて、道路を渡ろうとクルマの切れを待っていた5歳くらいの男の子のためにちゃんと止まっていたよ。けれど右側からスピードを上げたバイクが来ているのに気付いて助手席のアーベッドに手を挙げさせ、止まれと注意を促したよね。それでもスピードを緩めなかったバイクの若者に怒ること怒ること・・・。

そうやってみんな誠実に生きている。人を思いやって、少しでも優しくなれればと思いながら。

いつもガザの仕事の最終日にはこの大家族に大盤振る舞いをします。ガザの大きなレストラン「ライト・ハウス(灯台の家)」で。15人が集まるからもう大変なお金がかかるけど、ぜんぜん気にしない。こんな幸せな瞬間ってないと思う。

僕の大切な家族が、年に2、3回こうしてガザ市内のレストランに集まって、日頃は口にしないごちそうをみんなで楽しそうに食べてくれる。それを見ているだけで僕は幸せ。そしていつも思う。

「この人たちのために、働こう。この人たちのためだったら、どんな苦労だって、どんな苦労だって乗り越えてみせる。この人たちのために自分ができる精一杯のことをこれからも毎日毎日考え、診療も、ステージも決してくじけることなく続けていこう!」

って。

 今日のそんな幸せな一日が終わっていきました。

 いつか皆さんが、僕の大切な大切なパレスチナの家族たちに逢える日が来ますように。

ライトハウス

後列向かって左から、マジディの妹、ルスル、マジディの奥さん、ヘバ、マジディ、ラリーム(僕とくっついている)、桑山、アーベッド、ヒダーヤ、イスラーム、ダルウィーッシュの奥さん。

前列向かって左から石橋の優子ちゃん、ラワン、ラーエッド、モハマッド、ミリアム。

ちなみにここに我が事務局長、後藤の明ちゃんも家族として入ります。


桑山紀彦

僕のパレスチナの家族を紹介します」への5件のフィードバック

  1. ガザの素敵な家族に乾杯!!!
    桑山さん、優子ちゃん、明ちゃんは各地に温かい心をつなぐ、ハートフル三兄弟ですね。

  2. 年はだいぶ離れているけど、桑山さん、あきちゃん、優子ちゃんのハートフル三兄弟、いいですね!!
    この写真には写っていないけど、全国にいるステージを応援する人たちが、親戚になるわけですよね。
    そんな素晴らしい集合写真が撮れる日が来ますように!!

  3. ステキですね!
    記事にも、コメントにも、とっても感動しました。
    本当は、世界中の誰もが皆、繋がり合えているのですよね…
    争う前に、その繋がりの尊さ、愛おしいさ、
    かけがえのない事に気づけたなら…
    集合写真に収まりきれないほどの人々が
    笑顔で肩を抱き合える日が来るのでしょうか?
    いえ、来るようになる祈ります。

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