ガザ地区はまだまだ寒いです。朝、夕方は上着がないといられません。
でも、2月になると1月の凍えるような寒さはなくなり日中は一枚脱いでも大丈夫なくらいの気温になります。過ごしやすい時期に入っていきます。そんな中、今日は第1回目の音楽ワークショップでした。目的はみんなでオリジナル曲を創って歌うというものです。
「地球のステージ」の音楽担当石橋優子とともに、いろんなフレーズを考えてみましたが、どれもアラブ調にはなりません。アラブ調は楽譜にもしにくいし、何より僕たちはそれに慣れていない。今後いろんな地域で音楽ワークショップをやる場合普遍的なメロディラインが必要だと思うし、あまりアラブ調にこだわらないようにするべきではないかと思うところもあります。そこで思い切って、あのルワンダで大成功したオリジナル曲「Ejo Heza(よりよき未来へ)」のメロディラインを使ってみることにしました。もしもみんながこれを使えたらきっといろんなところでこのメロディラインが活かせると思ったのです。
緊張の元に「ラララ」でメロディを歌ってみました。
みんな結構ついてきます。そして我がファシリテーターのヤシームがここで大活躍するのです。ヤシームは元々プロの歌い手です。もちろんそれはアラブ調の歌の歌い手なのですが、やはり音感がいいんでしょうね。すぐに「Ejo Heza」のメロディラインを覚えてしまいました。ただ一部にコブシが入るところがいかにも、アラブ圏なのですが・・・。
そしてヤシームの指導により各グループはみるみるとメロディラインを覚えていきます。びっくり。やっぱりアラブ圏であっても共有出来るメロディラインというものは存在するようです。
そしていよいよグループごとに歌詞を乗せることになりました。
3つのグループに分かれ、それぞれのグループが歌詞の課題を決めます。
午前のセッションの3グループはそれぞれ「自由」「希望」「平和」になりました。こちらが意図したものではなく、みんなが歌詞にして歌いたいと言ったものを自由にテーマにしてもらったのです。さすがにガザ地区の子どもたちが日々意識している課題となりました。
そしていよいよ具体的な歌詞つくりが進みますが、ここでいつも行き詰まるのです。
それはアラビア語そのものにイントネーションがあり、それを無視してメロディに乗せてしまうと意味が別物になってしまうのです。
例えば、日本語で「今日はいい天気~」と歌ったとします(さざえさんのメロディで)。
日本語の「天気」は上から下へ「天気↓」と歌っても、下から上に「天気↑」とうたっても「天気」の意味に変わりないですよね。しかしアラビア語は違う。
「ヘリア↓」と下向きに音程を落とした時は「ネズミ」の意味になり、「ヘリア↑」と上向きに発音した時には「愛情」という意味になる、といった具合に、メロディラインによっては乗せられない歌詞というものが出てきてしまうのです(わかります?)。
だからメロディを聴きながら、そのトーン(音程)の上下にあった「言葉」を選ぶ必要があるのです。言葉のトーンを曲に応じて勝手に上げ下げすることができない言語なのです。
各グループは苦労しながらもそれを見つけ、歌詞を完成させていきました。
そして3つのグループから出た歌詞をそれぞれ1番、2番、3番として一つの曲に体系しました。今日は練習だけですが、明日はそれに打楽器をつけて演奏会ですね。
「自由」班の歌詞はこんな感じです。男子のグループです。
僕たちは、自由の元に暮らしたい
僕たちは、安全の元に暮らしたい
僕たちは包囲されたくない
僕たちは攻撃されたくない
僕たちは破壊されたくない
僕たちはくじけたくない
「希望」班の歌詞はこんな感じです。女子のグループです。右端がヤシームです。
私たちは安全と保障が好き
私たちは赦しの中に暮らしたい
私たちには権利がある
私たちは国境などいらない
私たちは国がほしい
私たちには希望があるはずだ
「平和」班の歌詞はこんな感じです。男子のグループです。
僕たちは小麦の種の子どもたちだ
平和の中に暮らしたい
安全の中に暮らしたい
戦争なんていらない
僕たちには逃げるところがない
僕たちはイスラエル軍が嫌いだ
平和がほしいだけなんだ
う~ん、この超現実的な歌詞がメロディに乗って歌われます。こんな曲があるでしょうか。たった11歳~15歳の子どもたちが作る歌詞です。でも彼らは大声で歌いきります。アラブ地域に音楽ワークショップは難しいという感じはあたっていないように思えてきました。
そしてその歌声をまたステージで伝えるとなると、どこに入れればいいんでしょう(7番?)。
明日の発表の状況次第ですが、帰国報告会でもする必要があるかも知れません。
短い時間ですが、彼らの心が軽くなることを祈って・・・。
明日は伴奏も加わって発表会です。
桑山紀彦
10代前半の子供たちの歌詞。胸がきゅーっと締め付けられる想いです。彼らの
前向きな姿勢に胸を打たれるとともに
力をあたえてくれる子供たちに感謝です。
一日も早く、彼らの願いが現実となることを
祈らずにはおられません。
こういった子供たちの生の声をもっともっと世界に発信し、世の中を変えていく努力を
する責務がひとりひとりにあると思います。
具体策は会で検討し、ご協力を仰ぐことに
なるかと存じます。 その節はよろしく
お願いもうしあげます。
ともに過ごす時間は短くとも、先生や優子ちゃんの存在は彼らにはかけがえのない ’光’です。 どうぞ、思う存分ご活躍ください。
でも、ご自分のお体を労わることもお忘れなく。祈りとともに。
桑山さん、優子さんならではの音楽のワークショップ。ご健闘なさっていますね。お疲れ様です。
切に安心して暮らせる事を願う、子供たちの心に胸を打たれます。
不安と共に暮らす子供達の心を、音の泉で少しでも癒されて、平和を願う思いが1日も早く実現できますように。