生活環境の極度の悪化〜ガザ

今のガザの問題は、人間らしいまともな生活ができなくなっているということです。

それは、貧困や開発の問題ではなく,全てが「占領されている」「物と人の出入りが厳しく制限されている」と言うことが原因です。

まず電気の問題。

現在1日で電気が来る時間は約4時間ほどになっています。以前は12時間くらいだったものが8時間、6時間と減ってきて、現在は4時間程度。これは計画停電によるもので火力発電所の燃料が「占領しているもの」によって制限されていることと、設備の老朽化で発電力が落ちていることが原因です。

設備を新しくすればいいと思われがちですが、ガザを実効支配するハマスがその設備の一部を軍事利用する可能性が高いということで、持ち込みは制限され施設はいつまでも新しくならないという構図です。

電気がこの程度しか来ないと、人間らしい生活はまずできません。冷蔵庫、エアコンは完全に使用不能。プロパンガスも高騰しており、人々は薪で煮炊きをしなければならない状況に追い込まれています。

加えて冷蔵庫が使えないとものがすぐに腐ります。特に暑いこの時期はすぐに肉も魚も腐るので子どもたちは毎日のようにおなかを壊しています。病院勤めが始まった今は亡き盟友ダルウィーッシュの長男、ジハード医師が教えてくれました。

まるで映画「サバイバルファミリー」のように燻製にしてものを保たせるしかない状況です。

続いてこの夏、下水処理施設のフィルターが壊れるという事故が起きました。もちろん修理用の資材は「占領」によって入れてもらえず、汚水が海に一斉に放出されたままになっています。夏の初めに海水浴で海に入った人々がひどい皮膚病にかかり、この事実が明るみに出ました。

今も海の色は黄緑色に近く、もはや誰も海に入らなくなりました。臭いもひどく、海岸線の道はクルマで走っているだけで気分が悪くなるほどです。

 

これが人間の生活なのでしょうか。

人は人らしく暮らす権利があり、健康を守るために保証されるべきこともあるはずです。しかし今ではもう忘れ去られたような地、ガザは世界でもまれに見るひどい生活環境に陥っています。

難民キャンプの生活環境のひどさはニュースにもなりますが、そこに生活が既にあるガザの生活環境のひどさはなかなかニュースになりません。

空爆や戦闘があればガザもニュースになりますが、戦争が起きないとニュースにならないという構図はおかしくないでしょうか。

このままでは失われる命もあり、失われていく夢や希望の数は計り知れないと思います。

 

そんな中、家族ぐるみでの付き合いのマジディ家の末っ子、ルーリーと再会しました。

(ルーリーは桑山の向かって右隣)

今自宅を改装中で、ラファの町中に狭いアパートを借りて暮らしています。

「電気は来ないし、クルマは朝からうるさいし、本当に毎日大変なんだ~」

笑いながら嘆くルーリー。

現在高校の最終学年で17歳のルーリーはなんと常に学年トップ、総合得点で100点満点中96.2点を取って夏休みを迎えた彼女は「医学部に入る」夢を維持しています。

高校の最終試験の得点で学部が決まるパレスチナ。行きたいか行きたくないかは関係なく得点で学部が振り分けられていくのです。

現在の得点レベルだと、実は医学部が相当しています。

「絶対に私は医者になる」

と小さい頃から宣言していたルーリー。来年5月の最終試験まで今の状態が維持できれば彼女は医学生なるでしょう。

暗い話題ばかりのこのガザで、ルーリーは希望の星です。

桑山紀彦

生活環境の極度の悪化〜ガザ」への1件のフィードバック

  1. 今、国連で某国の制裁議論がされていますが、実際に実施されたらきっとガザと同じ状態になるのでしょうね?
    先進国の利害対立が露骨で「人道的な見地」は建前だけの感じで、国連の存在意義がどんどん薄れていくのが気がかりです。

コメントを残す

あなたのメールアドレスは公開されません。必須項目には印がついています *