コーヒーの森、レテホホへ

今日はSISCa(包括的保健サービスシステム)の1日でした。

私たち「地球のステージ」は外務省からNGO連携無償資金援助(ODA)の締結を経て、このハトリア郡の10地域でSISCaを支援しています。

基本的にはこれ、その群の保健所が中心に行っている国のシステムなのですが人員、人材不足などでなかなかうまくまわっていないので、私たちNGOが支援しています。

今日はレテホホ村。ここは東ティモールコーヒーでとても有名な地域です。

朝、運転手のサビーヌが諸般の事情で来られなくなったので、必然免許のある桑山がこのレテホホ村までの運転をすることとなりました。キロ数では70キロほどですが、約3時間半ほどかかります。屈強なTOYOTAのHILUXの最新型であっても、車体がばらばらになりそうな道を進んでいきます。

するとレテホホに入った瞬間から山肌は天然のコーヒーの樹で埋め尽くされているではないですか。これはすごいことです。まるでコーヒーの樹の森です。良質のコーヒーが天然の中で育ち、肥料など一切ないオーガニックなコーヒーがそこに実っています。恐るべしレテホホ。凝れ半東ティモールのレテホホコーヒーが美味しいはずです。ちなみに「閖上の記憶」で出しているコーヒーはこのレテホホコーヒーですので、「閖上の記憶」にお寄りの際は、ぜひコーヒーをご注文下さい!

そしてSISCaの現場に着きました。

いつものように手際のいい、我が「地球のステージ」スタッフ。その中心にいるアイダはもうこの仕事を始めて9年目。ますます医師としての風格が出てきています。

ところがその傍らで、政府が派遣した医師たちは相変わらず聴診器など一切使わず、患者さんにくしゃみ鼻水、咳などの様子を聞いて、ただひたすらパラセタモールを出していきます。これは消炎鎮痛解熱剤。途上国であればどこにでもあります。全く「診察」ということをしないので長いこと問題なっていることです。

今日の巡回診療に保健所が持ってきているお薬は大人用に6種類、子ども用に2種類、そして軟膏1種類。つまり合計9種類のお薬のみ。これは現場的には仕方ないこととは言え、せめて聴診器を当てて、胸の音を聴こうよ…、と毎回願いますが本当にこのキューバ仕込みの医師たちはただ黙々問診だけでさっさと処方を書いて、次から次へと患者さんを終わらせていきます。

でもそんな中にいて、一人黙々と聴診器を当てる医師がいました。

ジェフェリーノ医師。

「僕は2013年にキューバから帰ってきて、この国で医者になりました。

この薬の少なさには、驚くことでしょう。でもこれが今の現実です。僕たちは国から”あそこの村へ行け”と言われて断ることも許されず、そこへ配置になります。代わりの医師が来るまで、どのくらいそこにいればいいのかもわかりません。ここに来る前はマリアナにいました。

ただただ不安の中でこの仕事をしています。誰も何も教えてくれないから…。」

今度来たときは小外科を教えてほしいと言うジェフェリーノ医師。若い彼らに伝えることはたくさんあると感じる日々です。

帰りも、コーヒーの森の中をハンドル握り、まずは事務所のあるグレノに戻りました。

「Hau hanalak trocka nia naran Driver K la Doctor K(これからはドクターKでなく、ドライバーKと呼び名を変えてくれ)」

で多いに笑いを取りました。

乾期の美しい夕陽がディリの海に沈んでいきます。

桑山紀彦

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