朝からモンスーンの厚い雲の間からもれる太陽の光に照らされて、パオ族の心のよりどころ、カックー寺院の空撮に入りました。
パオ族の子どもたちの教育支援をしているということで、特別に許可された寺院の上からの空撮。今後の修正版「ミャンマー篇」Ver 3.0は今週末、5月13日(土)のコープみらい、中野の公演からスタートしますが、本当に美しい寺院でした。
しかし今年の4月のサイクロンでかなりの部分が破壊され、現在修復中。その痛々しい姿が辛いですがそれでもここを訪れる国内観光客の数は変わっていないとのことです。修復に約2年かかるそうですが、修復終了後にまた空撮させてもらう約束で寺院を離れました。
そして2日目のミャッセ・ミャー村。
村の中心、唯一の小学校には既に30人を超える子どもたちが集まっていました。
今日はイェイェさんの週末活動。子どもたちへの課外授業の日なのです。それにしてもこの日曜日の良き日に、これだけたくさんの子どもたちが集まるということにも驚きますが、何より疲れも見せずその子どもたちに黙々と授業を行うイェイェさんの姿勢にただただ驚くばかりです。
ここにはひたすら勉強したい子どもたちが集まり、ひたすら村に貢献したい人が集う場所なのです。子どもたちになぜ勉強をしたいのかを尋ねてみました。
「教育を受ければ知識がついて、人に頼られた時に応えられるでしょ。そして教育を身につければ、次の子どもたちにそれを渡すことができるんだよ。」
実に明確な答えでした。そう答えてくれたのは高校2年生になるテンリンです。
そんなみんなに尋ねてみました。
「日本では、勉強が難しくてついて行けなくなったり、友だちをうまく作れなくて落ち込み、学校に行きたくないということもたちがたくさんいるけど、みんなはそんな子どもたちにどんな声をかける?」
するとイェイェさんの妹のスーが答えました。
「日本の子どもたちはなぜお母さんやお父さんに話さないの?心の中にためないで悩み事はまずお父さんお母さんに話すことだよ。」
でも、日本の両親は忙しくてなかなか子どもたちの悩みに耳を傾けてあげられないことが多いんだと伝えると、スーは続けました。
「誰でもいいと思うよ。信頼できる人に聞いてもらおうよ。とにかくため込まないこと。ちゃんと吐き出して誰かに悩みを伝えることが大切。
そして日本のお父さんお母さんも、忙しいなんていってちゃダメ。子どもが悩んでいるんなら、どんなに忙しくても時間を作って子どもの話をじっくり聞くことが大切。ミャンマーの両親はみんなそうしているよ。」
みんな大きくうなずいていました。
当たり前の答えなのかも知れないけれど、その「当たり前のこと」をまっすぐ意見されると、目が覚めるような思いでした。僕たち日本人はいつの間にか「仕方ない」とあきらめていることが多いのかもしれません。「親が忙しくて、子どもたちと過ごす時間がないなんて、そんなこと”仕方ない”じゃ済まないんだよ」とスーに突きつけられた思いで、はっとしました。親との対話、親とのふれあいによってミャッセ・ミャーの子どもたちの心には「芯」があります。きっといろんな困難をみんなで乗り切っていくんでしょう。この「心の強さ」を日本の子どもたちに伝えたい。
2時間が過ぎてもイェイェさんの授業は延々と続いていきます。後半は学校のグランド、樹の下で英会話のロールプレイです。ひたすらまじめに取り組み、一切の乱れもない統一されたこの「課外授業」を見ていましたが、ふと気づけばこれは学校が一切関わらず、村の子どもたちがイェイェさんと自主的に行っている塾~寺子屋のようなものです。誰も命ぜられてやっているわけではない、全ては自分たちの意志で成り立っている「勉強」なのです。
この「学びたい」という強い意志を見ていると、今日本が失ってしまった生きる活力を強く感じました。「本当の幸せって何だろう…。」思わず口を伝って出てきた独り言でした。この村に住む子どもたちの幸せ感は天を突き抜けているように思えてならないのです。
もちろん子どもたちとの話し合いでこの村の問題も見えてきました。まずは「水」が手に入りにくいこと。離れた井戸から水を汲まなければならないことの大変さ、不便さが語られました。
つづいて病院やクリニックが近くにないこと。病気になった時が不安だとみんな口々に語りました。だから、テンリンは蛇口をひねれば水が出るシステム構築のため、建設のエンジニアになりたいのだし、スーは医者になって、この村にクリニックを建てたいのです。
ドローンを上げて、高い空の上からのミャッセ・ミャー村を見てもらいました。
「この村が大好き」「この村のためにできることをしたい」
そんな思いの強い子どもたち。私たちがこの村に関わっていることをとても嬉しく思ってくれているので、明日はそんなみんながおみやげを持たせてくれるそうです。
それは…、村で採れたジャガイモ!!!
子どもたちが今の時期、最も誇らしく思う村の産品なのだそうです。最高のおみやげ!
明日は子どもたちの親御さんたちと会います。
桑山紀彦