今日は撮影二日目。
20分ものの短編なので、凝縮すれば二日間でしっかりと撮れます。でも大切なことはうちのスタッフに、映画撮影を学んでもらうこと。
本当にやる気のあるスタッフに恵まれて、今日もいい感じで技術協力ができたと思います。
歌手でもあり、演技の抜群なヤシーンはカメラマンとしての素質も素晴らしく、ハンディになって動いても水平のままでいられるようになりました。
紅一点のアーヤも今日は積極的にカメラワークに参加。ヤシーンに次ぐカメラマン指向です。以前事務所のカメラを持ち帰り、家族の肖像のような短編を自ら作ってきたアーヤ。映像と子どもが大好きです。
ピエロ役がうまいラーエッドは、前作では破棄されたビルの下で電器屋を営むスレイマンさん役を演じましたが、音声に興味があるようでマイクの向け方が整ってきました。
そして絵や粘土細工が一番の得意であるモハマッド(大学生のモハマッドとは別人物です)は、これからいろんなことを積み重ねていく感じですが、気持ちよく何でもすっとアシストに入る、助監督肌です。
安い一眼カメラに、デッキブラシのブームポール。ビデオマイクもお求めやすいRODEの標準タイプですが、みんなで作ることに映画の楽しみ、喜びがあります。今日もいい感じでクランクアップしていきました。
そして子どもたち。
向かって左からまだ11歳なのに既に身長が165センチを超えている姉御肌のエイマン。国境に近いユブナに住み、2年前の50日戦争でも大変な思いをしてきました。でも、将来の夢は「人権を守るために弁護士になりたい!」と真剣です。
続いて9歳、最年少のラマー。今回はちょっと声が小さくていつもアーベッドに指摘されていましたが、最後まで頑張って姿勢が伸びてきました。50日戦争では家の前に亡くなった人が数人いて、非常にショックだったと語りました。実は演劇が大好き。映画は見るものだと思っていたけれど、こうして映画にでられて大変光栄だと言います。将来は歯医者になりたいとのこと。
そしてユムナ、10歳です。今回一番声が大きく、演技も光っていたユムナ。学校では算数が一番好きで、もちろん将来は数学の先生になりたいといいます。50日戦争ではたくさんの亡くなった人を見ていました。3人兄弟の唯一の女子。男勝りな性格が演技の良さにでていました。
それからモハマッド。12歳。最初にペットボトルを投げ捨てるという「悪役」で入りましたが、その悪役ふうの演技が光っていました。実は動物が大好きで将来は獣医になりたいといいます。50日戦争ではテレビだけでなく、実際に多くの人の死に触れてきました。
そしてアーベッド、13歳。一番の年上です。ハスキーボイスがカッコいいのに、本人はそれをマイナスに考えていました。でも今回の映画に出て「特徴のある声こそが、良き俳優の証し」と知って自信を得ました。実は演技が大好きで、彼の演技の力にはいつも感心させられていました。50日戦争では隣の家にミサイルが着弾。隣人は亡くなったとのこと。将来は建築士になってラファの壊れた家を少しでも直したいといいます。
一番右がアルワ、10歳。年齢はまだ10歳だけど一番好奇心が強いのがアルワ。どんなことにも積極的に取り組もうとするし、自分の意見もはっきりと持っています。演技は時々考えすぎてつまることがあったけれど、その時の悔しさの表情は大女優を目指す素質かもしれません。50日戦争では直接たくさんの亡くなった人を見てきました。将来の夢はジャーナリスト。本当のことを伝えるために大切な仕事だから、とまっすぐ前を見て話します。
一人一人の子どもたちに生きてきた歴史があります。
そんな子どもたちが「映画制作」という出逢いによって一つになり、みんなで創り上げていく。だから映画制作ってやめられません。こんなに多くのパレスチナ人と親しくなれるのですから。
みんなの夢と希望を乗せて短編映画「私たちの街~ラファ」の完成が近づいています。
桑山紀彦