ジャラゾーンのナセルさん

ナセルさんは、ヨルダン川西岸、ラマラの街の外れ、ジャラゾーンの難民キャンプに多くの活動地をもつカウンセラーです。

 今、「地球のステージ」はこのヨルダン川西岸で心理社会的ケアの展開を考えていますが、ナセルさんは昨年3月に急逝した我が盟友、ダルウィーッシュの友人でもあり、この西岸における子どもたちのこころのケアに多くの実績を持つ人物です。

 今日はナセルさんの団体、NAFS(ナフス)を訪ねその詳細を話し合いました。
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「このジャラゾーンの難民キャンプはすぐ近くにイスラエル人の入植地があるので大変です。道に沿って走る”分離壁”。それはまさに人間の心を引き裂く壁でもあります。
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 そんなジャラゾーンでは常に兵士との接触が絶えない。この2年間で200人以上の子どもたちがゴム弾、催涙ガスなどの被害に遭い、常に兵士に連れ去られる恐怖にさらされています。
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 確かに子どもたちは大人の真似をして投石などの反抗的な態度に出ます。それに対する制裁としての威嚇、暴力、拘束、逮捕、拘留が日常的にまかり通っています。あの壁に描かれている少年、彼は12歳で殺されました。

 人間としての尊厳を踏みにじられて育つ彼らの心に歪みやトラウマ、そしてPTSDを発症させてはなりません。」

 そんなナセルさんの息子は国連学校の先生をしていましたが、4ヶ月前に突然の拘束、逮捕、拘留を受けたままです。

「息子の逮捕は全く裁判を経由しない、一方的なものでした。法治国家のはずなのに、そんなことがまかり通る。それが今のヨルダン川西岸です。」

 ご自身も大変な思いを抱えながら、それでも笑顔を絶やさないナセルさん。そんなナセルさんに聞きました。

「私たちがガザで展開してきている心理社会的ケアは、1年にわたって繰り広げられるものであり、非常に系統立ったものです。今までのナセルさんやNAFSのやり方と合わないときがあるかも知れません。」

「いえ、私たち人間は常に学び、成長するべき存在です。自分とやり方が違うといって拒否するのでは人間の成長はあり得ません。新しい出逢い、新しい試みこそが私たちの成長を促し、豊かになっていくためのきっかけとなるのです。是非、一緒に活動しましょう。」

 幾多の困難に遭い、いや幾多の困難があるからこそ寛容になり、人とのつながりを最優先する。まさに苦境を生き抜くパレスチナ人の生き様がここにもありました。
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 空爆や国境での銃撃戦がトラウマとなるガザ地区と、日常的に兵士に責めてこられるヨルダン川西岸。ニュースには出ないかもしれないけれど、日本では考えられないような困難が日々降りかかってきます。

 それでも人は生きていく。

 いま、「地球のステージ」はガザでの経験を活かし、このヨルダン川西岸での活動を真剣に考えています。もちろんガザの活動も継続。より一層の活動の拡がりを支えるには、やはり「地球のステージ」を応援してくださる皆さんの気持ちが一番大切です。

 また逐次報告していきますので、よろしくお願いいたします。

桑山紀彦

 

ジャラゾーンのナセルさん」への1件のフィードバック

  1. 大人が子供の見本にならなければ、
    いけないのに…
    子供が笑顔の国は本当に幸せな国なんだと思います。

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