セハムは12歳。生まれながらに聴力に障がいがあります。でもダルウィーッシュの運営するエルアマル校で勉強して、一生懸命手に職をつけようと頑張っています。
(セハム、12歳)
セハムの住んでいる地域は、ラファ市の東部ヤフディア地区、今回最も銃撃戦と空爆のひどかった地域です。セハムの家は完全に破壊されてしまいました。
セハムは50日戦争(今回ラファのみんなはそう呼んでいます)の最初の日の夜中12時、ものすごい轟音と共に飛び起きて、家族と一緒にラファの街の中へ逃げ込みました。そして国連学校に身を寄せ、それから50日間、つまり停戦の日までずっとそこで過ごしました。
窮屈でおなかがすいて大変でした。でもここは頑張らなきゃと思って踏ん張ってきました。そして今はおじさんの家に居候しています。
耳が聞こえなけれど、轟音と爆撃は身体の振動でよくわかっていたそうです。
(語り出し、紡ぎ出しの”輪”)
今日から始めた心理社会的ケアを心待ちにしてくれていたセハム。今日はいつもそうであるように、
「あの日何が起きたか。」
を語り、それにくっつけて、
「どんな思いだったか。」
という感情をはき出してもらうことにしました。
そんな時に使うのが感情表現シートです。16の感情を記しておき、そこから今の自分に最も近い3つの感情を選び出し、それを使って物語を紡ぎ出していきます。
(感情表現シート)
単純に、
「あの日、どう思ったか、どう感じたかを語って!」
というよりも、より一層紡ぎ出しやすく工夫したものです。
今日の午前のクラスは聴力障がいのあるクラスですが、身体いっぱいの表現してくれるので、かえって健常の子どもたちよりもその様子が僕たちにもわかりやすいのが特徴です。何かを失う代わりに何かを得ている。まさにこの子たちは身体を使って起きた出来事を表現することができるのです。
16の感情の中で子どもたちが選んだベスト5は、
「怖い」「忘れられない」「かわいそう」「心配だ」「何が来たかよくわからない」
というものでした。
(セハムの発表)
そんな中でセハムが選んだ3つの感情は、
「心配だ」「何が起きたかよくわからない」「怖い」
というものでした。
なぜ怖いか、それは「多くの人が死に、多くの血を見てしまったから。」
なぜなにが起きたかよくわからないか、それは「圧倒的な暴力でただただ逃げるしかなかったから。」
なぜ心配か。それは「これからどうしていけるのかわからないから。「そして「また空爆があったらどうしようという気持ちが心の中にあるから。」
たった12歳のセハムが感じるにはあまりに重いことばかりです。
でもそんなセハムの気持ちにより添い、今日は12人の仲間たちがセハムの発表に拍手を送り、激励の言葉をかけました。
こうして、この紛争の地での「向き合い、語り合う」という時間が過ぎていきます。子どもたちがすばらしいのは、こういった厳しいことを抵抗なく話せるようになってきていること。
うちのスタッフのヤシーンが言いました。
(ヤシーン)
「心理社会的ケアを受けてきている子どもたちは、確実に以前よりも”語れる”ようになっている。以前のように語ることに躊躇がなく、スムースに自分のことを表現できているのはこれまで行ってきた心のケアの効果が出ていることだろう。
今回の50日戦争は厳しかった。でも子どもたちの心は確実に強くなっている。これからもこのケアを続けることで、今回のことをバネにして、以前よりもより一層強い心を持てるようにしていきたいと思う。」
見事な発言でした。
午後からは国境地帯に住む子どもたちのクラスです。
桑山紀彦
丸い敷物が素敵ですね。色に意味があるのかしら。
聴覚障害がある人の避難には手助けが要りますが、家族や親族の支えがあるのでしょうね。
心のケアを受けることで生きる力が強くなっていくんですね。応援しています。
人が何か精神的なショックを受けた場合、しばらく時間が
経過した後、言葉や感情表現を通して表出することの
大切さが伝わってきます。心のケア、本当にありがとう
ございます。 被害を受けた方々に穏やかな日々が早く
訪れることを祈っています。
僕は文章が稚拙なので、上手く言えませんがパパ、がんばって。
あんましわかんないけど、生きて帰ってきてね。