怒濤の24時間

 最近の避難所では環境の悪化が気になっています。

 今日も館腰小学校ではインフルエンザA型が10名弱出てしまいました。う~ん、この時期にインフルAが流行するなんて。やっぱり人口密度の高いところに換気悪く暮らしていることが流行の原因になるように思います。
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館腰小学校の巡回診療
 しかも隔離しようにもスペースがないのでなかなか予防が進みません。東北大学の有名な感染症の先生に指示を仰いで対応策は講じていますが、まだまだ封じ込めていないのが現状です。
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あ~ん
 しかも奈実香先生の見方によると、栄養の偏りによって明らかに抵抗力が失われており、感染しやすい状況になっているようなんです。実際桑山自身も偏った食事のためか爪のあたりの皮膚がぼろぼろになってきています。特に生野菜がとりにくい環境、それが被災地です。だから今もっとも求められているのは「瓦礫撤去と清掃」そして「炊き出し」だと思います。
 ものは余って段ボールの山となり、東北国際クリニックでもその突然送られてきた荷物の山が昨夜の震災で崩れ、ドアがふさがれたり、通路が通れなかったりしました。やむなく入れておいた倉庫の中でも、その段ボールがひっくり返って大切なものが取り出せなかったりの状況です。どうか皆さん、どんな小さなものでも「ものは送らないでください」。こちらの命取りになりますので。あしからず・・・。
 さて、そんな閖上の人たちが暮らす3つの避難所の一つが高舘小学校の体育館です。ここに気になる姉弟がいます。美咲ちゃんと広(こう)くんです。美咲ちゃんは今度閖上小学校の6年生に、広くんは3年生になります。
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美咲ちゃん(左)
 元気いっぱいなんだけど妙に大人っぽく振る舞うんです。特に美咲ちゃんは6年生にしてはとっても大人っぽいというか生意気な感じ。ちょっとしたことで突っかかる。もちろん僕に対してではなく、周りの子どもたちに対して突っかかるんです。まるで
「あんた!なんて子どもっぽいの!」
 ってかんじで怒っているみたい。見方によっては精一杯背伸びしている美咲ちゃん。きっと
「私は大丈夫、何でも自分でやれるから」
 という思いで突っ張っている気がします。だって多くの避難所に暮らす子どもたちがそうだから。
 「泣き言は言わない。我慢する。自分のことは自分でする・・・。」
 大変な思いで生きている大人たちをみているから、せめて自分だけは心配させるような存在になりたくないって、そう強く思っている気がします。
 だからとっても心配。もっと子どもっぽくってもいいのに、もっとありのまんまでもいいのに、と思うけど、やっぱり今置かれている現状からすると「泣き言は言えない」と感じてしまうんでしょう。
 美咲ちゃんの心が軽くなるために何ができるか・・・。そう思ってそれとなく聞いてみたら、
「サッカーやりたい!」
 子どもらしい顔で応えてくれました。
「瓦礫撤去&清掃」「炊き出し」「サッカー大会」
 これが今現地でもっと求められているものだと思います。
 そんな美咲ちゃんのお母さんが言いました。
 「最近、芸能人とかが慰問に来るんだけど来たあとにすっごく落ち込むんだ~」
 「あ、それ慰問症候群っていわれるもんですね」
 と僕。
 「慰問症候群?」
 「そう、芸能人や有名人が来ると一瞬”わ~”ってなるんだけど、すぐにいなくなる。するとなんだかくる前よりもがっかりして落ち込むってやつですよ」
 「そうそう、ほんとにそんな感じだ~」
 「適当な慰問って、かえって心の負担になるんです」
 「そうなんだよ~。みんなが”わ~、きゃ~”って騒ぐその声ももう嫌になるし、そりゃあテレビで見ている顔の人がそこへ来たら”すご~い”って思うけど、でも結局その人たちって自分たちのために来てるところがあるでしょ。だからなんか落ち込むのよね~」
 「う~ん」
 「明日は森昌子が来るんだって」
 「う~ん・・・。」
 「わたし安定剤飲んで寝てようかな」
 「そうだね・・・」
 被災地で今求められているもの、それはやっぱり「瓦礫撤去&清掃」「炊き出し」「スポーツ大会」です!
桑山紀彦

怒濤の24時間」への15件のフィードバック

  1. 桑山さん、もしかして24時間勤務ですか?どうぞ何としても心身の休息を取ってくださいね。
    食事もまだ十分ではないんですね。大分改善されたものと思っていましたが、早計でした。
    風評被害で捨てられる野菜も多いのに、何とかならないのかしらと思います。

  2. お疲れ様です?
    確かに栄養的に偏った食事は良くないですよね。今回の震災で、私達が東北の皆さんにどれだけ支えられていたか思い知らされた方が沢山いるんじゃないかなぁって思います。
    有名人が行くのは良いんだけど、テレビカメラを引き連れて行ってるのみると、何となく私もいい気持ちがせん。

  3. 桑山さん。連日の活動のあとのブログ更新、
    ほんとうにありがとうございます。
    夜になると地球のステージのホームページを開けて、
    更新されているブログをささっと読んでちょっと安心して、もう一度ゆっくり読んでからコメントまで読むのが、
    私のこのところの習慣になっています。
    震災後すぐに
    ある学習会に参加した時のことです。
    過去の中越地震などの被災地に、
    子どもたちのサポートに学生と一緒に
    ボランティアで入られた
    大学の先生のお話を聞く機会がありました。
    子どもたちへの質問の返事で、
    楽しかったことは?
     「外から来た人に会ったり遊んだりしたこと。」
    また反対に、厭だったことは?
    「外から来た人と遊んだりしたこと。」
    だったそうです。
    支援してくれている人や周りの大人たちに
    子どもたちもとても気を使っているんですね。
    もちろん大人の方たちも
    気も使うし
    遠慮もされているのでしょう。
    そんな話しを子どもたちが
    学生さんたちにしてくれたのは、
    子どもたちと学生さんたちの間に
    信頼関係ができていたからだと伺ったことを思い出し、
    「芸能人より寝てようかな」と話せる関わりの
    美咲ちゃんのお母さんと桑山さんのやりとりに
    ちょっとほっとしました。
    継続して関わられてるから
    そういう会話になるのですね。
    あとは
    食事内容が改善され、
    必要な栄養は取れるようになってほしいですね。
    復旧活動から復興活動へと向かうにも、
    体力と気力が必須ですものね。
    今名取のみなさんに必要な
    復旧の瓦礫撤去とお掃除に、
    元気を作る炊き出しとスポーツ大会ですか。
    瓦礫撤去とスポーツはともかく
    お掃除と炊き出しなら手伝える機会があるかもしれません。
    二人の栄養士の先生に教わって勉強しておきます。
    明日の一日がみなさまにとって
    過ごしやすい日になりますように
    お祈りしています。

  4. 美咲ちゃんや広くん達にサッカー大会をしてもらいたいです。テレビに映った時も子ども達が楽しそうにサッカー大会していましたね。桑山さんが審判で、そしていつの間にかおとな達も加わって、おとなの方々も子どもさん達も、体を動かしてそれは楽しそうでした。
    インフルエンザも心配です。避難していらっしゃるだけでも大変なのに、体調悪くなるともっとおつらくなります。
    桑山さんや避難している方々みんなに、野菜たっぷりの炊き出しが出来たらって思いました。

  5.  活動の後、ブログ更新ありがとうございます。桑山先生こそインフルエンザ気をつけてください。
     慰問症候群、うんうん、なるほど、よく分かります。芸能人は被災地の人を元気づけたい、自分にも何かお役に立つことがしてみたいしてみたい、そう考えるのは当然でしょう。しかし、それがそんときだけの一過性のもの、被災地の人にとってあの人たちは、またすぐ自分たちの快適な場所に戻ってしまい、自分たちは相変わらずこの被災地暮らしだ、それでより一層落ち込んでしまう。まったくそのとおりだと思います。
     ボランティア、慈善、福祉、というようなものは、こちらが「何をしたいか」ではなく、相手が「何をしてほしいか」、「何を望んでいるのか」をかんがえることが大事なのだと思います。
     被災地の人が、望んでいること、また桑山先生が、希望していることを考えて私たちは行動しなければなりません。
     物資は、東北国際クリニックのダンボールが底を付いたころ、送りたいと思います。
     和歌山 中尾

  6. 藤原です。
    震度6の余震も心配していましたが、その後にまた活動ですか。スタッフの皆さんともども、身体と心の健康にご注意下さい。
    4月2日の地球のステージ神戸公演ありがとうございました。心の共有って大切ですね。その次の日に、インドネシア大地震(2004年)で津波の被害をうけたタイ南部でこどもの支援にあたっているプラティープさん(DPF)の講演に参加しました。2つには、津波センターをはじめ、共通点もありました。
    2つの公演(講演)の感想は、研究室のウエブサイトにのせていますので、時間のある時にごらんください。

  7. 桑山さんのブログで 知ることがいっぱいある。
    私は テレビに出てる人、みんなが知ってる人が そちらに入り 喜ばれている姿がTVに写し出されて よかった良かったと思っていた。
    浅はかで恥ずかしい。
    子どもたちが 一生懸命おとなを気づかい、けなげに振る舞っている姿が目に浮かぶ。痛ましい。
    今、友だちから 少しずつ絵本を託されている。
    大きなところに託すのも 一案だが 私は手渡したい。
    阪神淡路のときは 紙芝居を持って行ったら おお縄跳びがしたいと言われ 急きょおお縄跳びをした。鬼ごっこも。
    体を動すことが一番!わりと近いので また来てね!の言葉に励まされ通った。私が何をしたいか?じゃなくて、相手が何をしてほしいか。ということを教えられたことを思い出した。
    桑山さん大変でしょうが ファイト!
    何も出来ないのに、すぐにでも飛んで行きたい気持ちをおさえて

  8. とりあえずは無事で良かったです。地球のステージ応援団東北の人たちも無事のようです。ただし、また片付け作業にかからなくてはなりませんけれど。まずは、山積みの瓦礫、ゴミの撤去ですね。劣悪な環境。うんざりする延々と続くトンネルの中を歩き続けなけばならないような感じですが、励まし合い、支え合い、踏ん張っていくしかないでしょうか。私たち被災していない者は冷静に考えて判断していく必要がありますね。これ以上、東日本の震災被害にあった方たちが苦しむことのないように念じます。救済されるべき人たちがあちこちたくさんいます。

  9. 昨日は2回目のボランティアに行ってきました。
    最終的に集まった物資は約2500箱らしいです。
    でも、今現場で必要とされているものは物資ではないんですよね。本当に参加してよかったボランティアなのか不安に思っています。
    桑山さんがブログに書かれることは本当の被災地の姿なのだと思いました。テレビでは、物資が届いたことや、芸能人が被災地へ行ったことについて、いいニュースとして伝えています。物資があふれて困っていたり顧問症候群のことなんてテレビで伝えられているのを見たことがありません。
    自分が「何をしてあげたいか」ではなく、本当に困っている人が「何をしてほしいか」を知って自分にできることをしなければならないことがわかりました。
    そちらへは行けませんが「瓦礫撤去&清掃」「炊き出し」「スポーツ大会」が少しでも早く行われることを願っています。
    昨日仕分けした物資が本当に必要な人に届きますように。

  10. 大きな余震。もうやりきれない思いです。
    被災者の皆さんがいまだどれだけの大きな恐怖を持って生活をされていることか・・。と考るたび、やりきれない気持ちです。
    どうか、これ以上被災者のみなさんを苦しめないで欲しい。
    祈ることしか出来ないで本当に申し訳ないです。

  11. 名取市観光協会(http://www.kankou.natori.miyagi.jp/)
    から、ゆりあげ港朝市の情報です。
    新鮮な野菜、そして嬉しい再会があるかもしれません。
    桑山さんも気分転換してみてはいかがでしょうか。
    ここから転載です。
    復活イベント第2弾「ゆりあげ港朝市」開催決定!!
    今回の東北地方太平洋沖地震により、閖上地区は大きな被害をうけ、
    ゆりあげ港朝市会場も津波により失われました。
    ゆりあげ港朝市協同組合では、みなさんにいち早く新鮮な食材を届けようと、
    3月27日(日)に震災後初の「臨時ゆりあげ港朝市」を開催したところ、多くの皆さまにご来場いただき、応援のメッセージをいただきました。
    その声にお応えし、4月10日(日)に再び開催いたします!
    今回も会場には「再会広場」として、震災後まだ再会できていない方々が
    交流できるスペースを設けております。
    なお、出店店舗は通常とは異なるため、当日のお楽しみ!!
    みなさんのお越しをお待ちしております!!
     ◆日 時:平成23年4月10日(日) 午前6時から正午まで
      ※「再会広場」は午前8時から正午
     ◆場 所:イオンモール名取エアリ 西側駐車場

  12. 美咲ちゃん…偶然、姪と同じ名前だったのでさらに胸が締め付けられました。
    大人(母親)が頑張っているのを子供は敏感に感じます。
    そして、甘える事ができなくなります。
    そうすると、周りの大人はしっかり者だね。と言いはじめます。
    そして、子どもはどんどん自分の気持ちを封印して、笑って頑張ります。ホントは泣きたいし、甘えたいのにできなくなります。
    状況は違いますが、幼い頃の私がそうでした。
    母親や親戚は、今でも私をしっかり者のお姉ちゃんだと思っています。
    甘え方がわからないのは、苦しいものです。
    美咲ちゃん、美咲ちゃんの人生が美しく咲きほこる事を陰ながら祈念しております。

  13. 余震のニュースを知った時、もうやめて・・・と、目をつむってしまいました。
    避難生活の中、また大きな揺れにみまわれた方々のことを思うと
    どうにもならない気持ちになります。
    国際クリニックの皆さんも恐ろしい思いをされましたね。
    でもすぐに診察を再開され、さすがですね、頭が下がります。
    心のケアは長く長く続いていくものですね。
    すべての子どもが適切なケアが受けられることを祈っています。
    それは可能なことなのでしょうか・・・?
    少なくとも、桑山さんが関わっていく子どもたちには笑顔が戻っていくでしょう。
    ここにきて、それを見守りたいです。

  14. 善意が支援にならないのは苦しいですね。
    善意ではダメなのかな?
    桑山さんのように発信してくれる人がいるから、そんなことも考えることができます。
    明日、地元の小さなイベントがあります。
    この町の良さを見直そうと始まったもの。
    仲間と一緒に、出店をして参加します。
    私たちの収益は、ニュージーランド地震と東北国際クリニックの支援に。今「ニュージーランド地震」のことを並べるのは少し勇気がいりますが。
    それぞれが考えて行動することが、本当に被災された方々の明日への希望につながるものでありますように。

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