「死」という出来事

 今日、被災した友、青山先生の住む石巻に行きました。

 被害は甚大であり、死者数も、破壊された町の面積も極めて大きいのがこの石巻です。青山先生はかろうじて生き延びましたが、教師として出向している県の合同庁舎の4階に避難してそれから3日間、水の引かない市の中心部で孤立して、最終的には自衛隊のボートで救出されました。自宅は床上50cmの浸水。何もかも大変になってしまったのに、今日も笑顔で逢うことができました。
 実は青山先生は5年も前からずっとご自身の勤める中学校で毎年「地球のステージ」を呼んでくださっています。最近は2年前まで勤めていた石巻市立湊中学校で毎年公演でした。しかし湊中学校は完全に1階が水没。生徒さんも亡くなりました。これまで毎年歌ってきた中学校が被災して、本当に哀しくなりました。もちろん今年のステージはキャンセルでしょう。再起を待ちたい。でも校舎は強い波を受け続けたので、取り壊しの可能性もあります。
 それでもあきらめたくないと思っています。
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毎年ステージを公演してきた石巻市立湊中学校
 そんな石巻市で今日は仮埋葬がありました。火葬が追いつかないので、まず土葬し、後ほど掘り出して火葬するものです。その現場はここが日本かと思うほどの風景です。
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規則正しく掘られた溝。そこに棺桶が並べられて埋められていくのです。胸が詰まりました。
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自分の子どもが、冷たい土の中に土葬されて火葬を待つとしたらどんな気持ちだろう。考えられない。想像ができません。でも人々はそんな気持ちを心の中に閉じ込め我慢しながら、この仮埋葬を受け入れていきます。
 なんでこんな日に雨が降るのか。でも雨だからこそ納得できるところがあるのかもしれません。
 それから女川に入りました。石巻から10キロも離れていない女川は、街を飲み込んだ津波が20メートルを超えていました。湾が細くなっているので高さが上がり、街の奥まで津波が及んでいました。
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 信じられない光景が広がります。この事実を私たちはしっかりと知るべきだと思いました。
 それでも救いは全国からやってくる炊き出し隊の人たち、そして瓦礫撤去の皆さんです。週末になると全国から「できることをやろう」ということで人がやってきます。やっぱり嬉しいのが炊き出し隊。ご当地もので勝負の姿は、横浜中華街だったり長崎中華街だったり・・・。
 「ワシ、これしかできんから」
 といいながら中華鍋をひっくり返すその姿に救われていきます。
 現場は自己完結する「炊き出し」と「瓦礫撤去&清掃」を求めています。でも、やっぱり僕はここに来ることだけが自己実現ではないと思います。今いるところで、自分ができることをする。例えば、被災地から離れていても、人に優しくあるとか、思いやりを特に意識するといったことが被災地へ気持ちをつなぐことになると思います。
 だから、気持ちというものは時間と空間を超えて人につなげていけるものだと思っています。
桑山紀彦

「死」という出来事」への16件のフィードバック

  1. 先生のブログを読んでいて、涙が溢れました。
    やり切れない悲しさが、東北の沿岸地域一体に広がっているのですね。
    子供さんを亡くされた方々どんなにお辛いでしょうか…悲しみが癒えるまでは長い時間が必要だと思います。亡くなられた方々の安らかな御冥福をお祈りいたします。
    そうですよね、被災地に出向かなくとも、自分ができること、人への優しさ、労る心…今とても大事ですね。時間、空間を越えて繋がる…とても大事なことと感じました。

  2. 今日は、ずっとネットを酷使して自分にできる事を探していました。
    私は、車の運転ができないので支援物資を被災地に持って行く事ができません。
    でも、今日仕事で南三陸に行くついでに自宅避難生活をしている人達に支援物資を運んでいる人に私の支援物資をお願いできる事になりました。
    私の趣旨は、避難所生活をしている人達は行政の支援がある(はず)なので自宅避難されている方々のサポートを行政に変わり少しではありますが支援させていただきたいと思っていました。
    行政は避難所の運営で精一杯で、自宅避難の方々のサポートまで手がまわらないいう事を聞いていたので…
    友人は、自宅避難でした。避難所で余った賞味期限切れの菓子パンを配給してもらって食べたそうです。賞味期限切れでもとてもおいしかったと言っていました。
    以前、桑山先生は『紛争地の出来事を忘れない事が大切だ』とおっしゃっていましたよね。
    今は、全国の関心が被災地に向けられています。打ち上げ花火のように派手で一過性の支援ではなく、線香花火のようにぼそぼそとでも息の長いサポートが必要ですよね!?
    桑山先生のブログでは、本当にいろいろな事を考えさせていただいています。
    今日の雨が、被災地にとって悲しみの雨ではなく大地を潤す希望の雨であって欲しいと願わずにはいられません。
    少しでも復旧したら、まだ困っている方のためにちょっとでもいいから手助けをする。
    みんなが、そう思って行動すればそれはきっと大きな力になると信じています。
    こんな時だから、お互い様の精神で。

  3. 辛いのに ほんとうのことを伝えてくださってありがとうございます。
    棺が並んでいるのは ほんとうに辛いです。
    地球のステージで サッカー場がお墓になっていた時の映像が浮かびました。
    人は、いつかは死にます。
    でも まさか このような 亡くなりかたをするとは、誰も思わなかったでしょう。
    胸が痛みます。
    皆様のご冥福をお祈りします。
    炊き出し隊のみなさんありがとうございます。
    撤去隊のみなさんご苦労様です。怪我されないようにしてくださいね。

  4. 最近どんどん山形と宮城の日々の違いの差が大きくなってる気がします。みんなもう普通の生活にもどっている。ここからがまた被災地ではない所がどれだけ動けるかが大切になってくると思います。
    前回の余震は肝を冷やしました。停電した時一気に冷や汗をかきました。「名取は?館腰のみんなは?」みんなの気持ちを考えたらその時は涙が止まらなかった。ここまできてまだ怖い思いをしないといけないみんなのことやここでじっとしてるしかない自分の無力さ。そんな思いが溢れ出ました。最近は本当につらい。自分の無力さが本当にのしかかってきます。そんな自分を許せなくなってきているのが本当です。でも今の自分はそれを背をっていかないといけないんでしょうね。それが私の中の戦いなのかもしれないです。これからも自問自答の日々だろうけどできること
    をして被災地のみんなを思いたいです。
    だいぶ独りよがりなコメントですが今日も家族は元気です。家族は常に応援していますよ。

  5. 並ぶ棺、並ぶ土まんじゅう・・・まるで、イラクでした。
    あの頃見続けた、カーシムやイブラヒムやアンサムの故郷の状況と同じことが、今、あっちゃんやヤッチやキムさんと共に過ごしたその町で起きています。
    今日は、釜石の炊き出しから戻ってきた友人の話を聞く会に行きました。
    集まったのは少人数で、それぞれが札幌の暮らしの中で、自分に出来ることをやり続けている人ばかりでした。
    11日には、親しい人たちで集まって、夜ロウソクを点し、このひと月の思いを語り合う時間を持ちます。
    一日一日が、とても長いです。
    一日一日を、丁寧に過ごす努力をしています。
    一日一日を、今ここで地道に、積み重ねるしかないのだと、自分に言い聞かせています。
    今日、やっと、仙台のキムさんから往復はがきの返事が来ました。私からは福寿草の花の写真を貼って、何でも言ってね、と出した往復はがきの返事です。
    会いたい、と、話して元気をもらいたい、と書いてありました。
    一方で、心配かけてごめんなさいとも書いていました。
    謝ることなんか、なんにもないのに。
    朝になったら、電話します。
    すぐに飛んでゆけない分、いっぱい話そうと思います。

  6. 被災地に行けなくても・・・心を、意識を向けます。
    毎朝・・・祈りの波動を東北に世界の仲間と共に向けております。もっと、もっと現実の声をみんなに届けなければ・・・FB,MIX・・・シャアー致します!!宜しくお願いいたします。。。
    人に

  7. 私は今沖縄の小浜島で毎日サトウキビ刈りをしていますが、震災直後から「何かできることをしたい」
    との思いを強く持っていました。
    途上国支援を通して国際協力に携わった人間として、やはりその基本は『見て見ぬふりしない』ことです(それは地球のステージで語り続けられています)。青年海外協力隊を経験した者として、その信念を持ち続けています。
    途上国であろうと日本であろうと困っている人がいたら手を差し延べる、特にそれが同じ仲間であればなおさらのことです。
    一人ひとりはできることは小さいかもしれませんが、多くの人が力を一つに合わせれば大きな力になります。そして、何よりも支援を必要としている被災した方がいる今こそ動くとき「今やらなくて、いつやるんですか?」
    そんな強い思いから、「協力隊OV有志による震災支援の会」を立ち上げました。
    この会では、この震災で被災した協力隊経験者を支援すると共に、すでにこのブログにあるように石巻で炊き出しなどの活動をしているグループ(「石巻市協力隊OB災害支援プロジェクト http://jocv.slowcal.net/ 」を支援しています。
    このグループは石巻市立渡波(わたのは)小学校を拠点に炊き出しや子供からお年寄りまでの心のケア、マッサージなどを行っています。また、炊き出しの食材費も自腹で活動を続けています。そこで、まずはこのグループの活動支援のために救援金の募金活動を開始しました(詳細はHPをご覧ください : https://sites.google.com/site/exjocv2011/ )。
    私自身も今月15日から石巻に入って支援活動を開始する予定です。
    でも、現地に行かなくとも、どこにいてもきっとできることはあります。
    被災者と被災を免れた者とをつないでいくことや支援の輪を広げていくこと。
    そして、一番大切なことは被災者の心に寄り添うことかなと思います。
    それが私たち「被災を免れた者の役割であり、使命なのだ」と強く感じます。

  8. 息子さんのブログを読んで胸がいっぱいになり 涙が止まりませんでした。
    桑山さん いい息子さんですね。
    お父さんの背中を見て成長されたんですね。
    何より強い応援団ですね。
    桑山さんが安心して名取に居られるのは 息子さんが 家族を 守っておられるからですね。
    息子さんファイト!
    桑山さんファイト!
    息子さん あなたは充分あなたの役目を果たされていると思います。
    同じように何も出来ないと思っている大阪のおばさんより
    なんか変な書き込みで ごめんなさい。

  9. たくさんの心やさしい皆さんのコメントに、励まされています。
    7日の強い余震が、やっと復旧したライフラインを寸断し、又スーパーとスタンドの行列を作りました。
    揺れの強さは、本震並みでした。
    戻した室内は又倒れ、夜中に避難した方も多かった。
    揺れに耐えながら、一体いつまで余震に耐えなければならないのかと怒りすら覚えました。
    皆同じ恐怖を感じています。
    お知り合いの方が本震の時大丈夫だったからと、安心できま
    せん。たび重なる余震で、心身のバランスを崩していらっしゃることがあります。
    なにかできることはないか、と思っておられる方は時々暖かい言葉のメールや、被災者の負担にならない訪問はとてもうれしいです。
    特にお知り合いがいらっしゃらない方は、ご自分の健康を保つことと冷静な情報収集をお願いします。
    お知り合いを何人も亡くされた、桑山さんの無念はいかばかりか。日々の献身的なクリニックの業務に深く感謝いたします。
    土葬は過去のことと思われていたかもしれませんが、現状では苦渋の決断として行われています。それでもご家族に、出来る限りの配慮を心がけて埋葬しているようです。
    たくさんの尊い命を忘れず、自然の強大な力から身を守りたいです。
    余震のたびに気力が折れそうになります。少しの揺れでは驚かないと思っていましたが、7日の揺れから又弱気になっています。自分の弱気に負けない心の持ち方お分かりの方、お知らせいただけたらうれしいです。

  10. テレビを見ていると毎日毎日、地震情報の文字が画面の上に出てきます。
    そのたびに、無力感を感じずにはいられないのがあの日以降の私です。
    最近では、募金箱を見るたびに少しですが財布からお金をいれます。
    私にできるボランティアがあれば参加もします。
    でも、それが被災地に一番必要とされていることではないと桑山さんのブログを見て思っています。
    私の中では毎日
    『被災地のために何かしたい・・・』
    『でも、学校もあるし直接は力になれない・・・』
    『こっちでできることって何だろう・・・』
    『・・・募金か・・・』
    という具合にできることは募金ぐらいしかありません。
    でも、桑山さんの言われたように直接被災地に関係なくても人に優しくしていこくとで日本中のその思いが被災された皆さんに届くことを願っています。
    まとまらなくてすいません。。

  11. 少しずつ少しずつ、もとに戻るって、本当に気の遠くなる作業。でも、少しずつできることをやっていくしかない。元に戻ったり、新しい難題にぶつかったり…。そんなことを感じた今週のブログでした。やっぱり、島根にいて、何もできないのは、本当にもどかしいけど、桑山さんのブログを通して、『頑張って』ってエールを送るしかないです。

  12. 「人に優しくあるとか、思いやりを特に意識するといったことが被災地へ気持ちをつなぐことになる」
    ありがとうございます。この言葉に救われました。優しさに触れた人がまた優しく接する、また優しく接する…本州縦断はあっという間ですね。
    優しさ、思いやり、明るさ、踏ん張り、たくさんのポジティブをどんどんつなげます!!!
    嬉しさ込み上げる時は感謝し、東日本に届け~!と直接飛ばしてみますね。
    11日は、特にたくさんの方とガッチリつながる何か、してみたいです。
    隣の人と手をつないでみようかな?
    p.s.皆さんのコメントからも、たくさんの思いやりや、気付き、有益な情報があり、学ばせていただいています。つながってます。感謝。

  13. 瓦礫というには余りの光景。家や車がまだ乗ったままの状態なのですね。
    大切な人との別れも非常事態なのだということを改めて思います。辛いですね。
    先の余震で東北地方が停電になりましたが、青森市内でも火葬場が一時的に使えなくなり
    葬儀が滞ってそうです。思いがけないほど多方面に影響が出ています。
    鉄道が復旧すればたくさんの人が応援に行けるのですが、範囲が広いのでなかなか進まないのでしょう。
    直接支援に行けない分、周りの皆さんの思いを繋ぎ続けられるよう努力しています。
    「思いやりの気持ち」が何より大事だと思っています。

  14. 桑山さん、ありがとう。現地に行き何も出来ず、落ち込んでいる私や私みたいな人達に暖かい言葉を…
    まだまだ長く続く復興への道のり。いつか、現地にいきます。

  15. 今日のブログの写真、地球のステージ3に出てきそうな苦しい写真でした。苦しいです。
    今日、私の住む小さな町で、それこそ小さなイベントがありました。日本語ボランティアのメンバーで手作りの菓子を売りました。全売上げを二分して、半分はニュージーランド地震の支援に、残りは東北国際クリニックに送ることにして頑張りました。
    こんな積み重ねを繰り返していくうちに、復興するんですよ、きっと!

  16. ことばのちからを信じたい
     ことばのちからを信じたいと思います。
     ことばのちからで、人を支え、ことばで人を思いやり、ことばで人を包んであげることができると思います。
     人はことばにより癒されることがあると信じたいと思います。
     そんな、ことばのちからを信じたい。だから・・・・・
         生きる
    生きているということ
    いま生きているということ
    それはのどがかわくということ
    木もれ陽がまぶしいということ
    ふっと或るメロディを思い出すということ
    くしゃみすること
    あなたと手をつなぐこと
    生きているということ
    いま生きているということ
    それはミニスカート
    それはプラネタリウム
    それはヨハン・シュトラウス
    それはピカソ
    それはアルプス
    すべての美しいものに出会うということ
    そして
    かくされた悪を注意深くこばむこと
    生きているということ
    いま生きているということ
    泣けるということ
    笑えるということ
    怒れるということ自由ということ
    生きているということ
    いま生きているということ
    いま遠くで犬が吠えるということ
    いま地球が廻っているということ
    いまどこかで産声があがるということ
    いまどこかで兵士が傷つくということ
    いまブランコがゆれているということ
    いまいまがすぎてゆくこと
    生きているということ
    いま生きてるということ
    鳥ははばたくということ
    海はとどろくということ
    かたつむりははうということ
    人は愛するということ
    あなたの手のぬくみ
    いのちということ
            谷川俊太郎 詩集より
       和歌山   中尾より
           

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