証言録3人目は、長沼さんです。
長沼さんは「閖上の記憶」で語り部をされていらっしゃいますが、一方で案内人もされている活発な閖上人です。
長沼さんの体験は非常に過酷なものでした。
津波と共に自宅もろとも2キロ近く流されて助かっていらっしゃいます。
奥様と一緒に2階部分のみで流されながら、県道10号線をまたいで家はいったん止まりましたが、辺り一面が海になっている状況では全く身動き取れず、なんと屋根の上で1晩を過ごしていらっしゃるのです。
そのときの様子は、もちろん証言録を見て頂ければと思いますが、凍える寒さの中、夜通し屋根の上(つまり外)で過ごしていたというのはまさに命がけの生還でした。
その体験談は、
「よく助かった」
「よくあきらめなかった」
というものばかりです。
一睡もしないで屋根の上にいた時に見た星空の美しさ。全く街の光が消えた時に降りて来た、あの夜の星の美しさは僕もよく覚えていますが、生死をさまよってなを、そんな美しさに目を向けられる長沼さんや奥様の強さに感服しました。
そして待ちに待った日の出。あたりがゆっくりと見えてくるにつれて、その破壊のひどさや失ったものの大きさがわかる時の落胆と絶望・・・。
長沼さんは丁寧に語って下さいました。
語ることは私たちに大切なことを伝えてくれるという意味もありますが、同時に長沼さんご自身の人生を肯定的に変えていくものだと思います。
最後の質問に、
「長沼さんにとって津波が来たということはどういう意味があるのでしょうか。」
というものがありますが、長沼さんは、
「津波なんて来ないに越したことはないけれど、来たことで多くの人に助けられ、多くの人と出逢った。津波が来なければ、それはあり得ないことだったと、正直思っています。」
とのこと。
こうして人は強くなっていくのでしょう。
桑山紀彦
昨日はチリで地震があり、太平洋沿岸各地に津波が来ると言うので津波観測を気にしています。朝から地震もあって、血圧が上がりました。そんな風に、乗りきられたんだ…という証言を後世に残すと共に今の私たちも聞いて、東北の皆さんに寄り添いたいです。
りんりん けんけん アリガトウゴザイマシタ。
「津波が来なければ、それはあり得ないことだったと・・」すごく率直な気持ちの表現に打たれました。
そう、体験しないで済んだから、ただ同情するだけで何も変わらない自分と、体験を乗り越えようとしている方々の強さを感じています。