今日は朝からセミナーでした。
これは今回のN連の仕事で重要である「ファシリテーターと共に5人の先生に心理社会的ケアのノウハウを伝える」というものですが、朝から実にまじめ他パレスチナ人の先生方が集まり、活発なセミナーになりました。
皆さんにいえることですが、とにかく勘が良い。
心理社会的ケアは行う方の創造力が重要です。パレスチナの人々はその意味において、創造力に長けている。
そもそも心理社会的ケアは「マニュアルを見ないとできない」ようなものではなく、「マニュアルがなくても、その素材を見ればやり方がわかる」というものでなければなりません。
いいソフトウエアというものは、マニュアルを見なくてもそのインターフェイスを見ただけで、大体どう使うと良いかわかるもののことを言いますがまさに心理社会的ケアもその通り。素材を見れば、大体どう使っていくと良いのかわかるような構成でなければなりません。
今日は代表的な素材として「写真言語法」と「クレイモデル」の二つの素材を用意して臨みましたが、すでにみんな良く理解しています。こちらのソフトウエアにおける質も高いのだとは思いますが、加えてファシリテーターの能力も相当高いと思われました。残りのセミナーが楽しみです。
さて、お昼ご飯は今回の運転手をしてくれているアシュラフの家に行きました。
アシュラフはアーベッドの弟でタクシー運転手をしています。こうして昼は必ずどこかの家に誘われるので全くお金を使うことなくお昼ご飯が満たされていくのがパレスチナ流です。
「せっかく来てくれた日本人にお金を払ってご飯を食べさせてはパレスチナ人の名折れだ。」
と思ってくれているのです。ありがたいです。
アシュラフは前もって僕がお魚が好きだと聞いて、実に美味しそうなお昼ご飯をごちそうしてくれました。
そんなお昼ご飯の場所に一人の少女がいました。名前はフェッダーといいます。アシュラフの娘さんだそうですが、アーベッドが言いました。
「この子は孤児になって、アシュラフが引き取ったんだ。」
それはこんな話でした。
「フェッダーのお父さんは僕たちの一番上の兄だったよ。ある日、この家の前に座っていたら急に倒れ込んだので急いで病院に運んだけれどすでに亡くなっていた。よく調べから身体の中に銃弾があったよ。つまり流れ弾に当たったんだ。そのときフェッダーはたった6ヶ月だった。
パレスチナでは夫が亡くなったとき、普通は実家に戻り再婚の機会をうかがう。だからフェッダーのお母さんは実家に戻り、その後再婚した。フェッダーはいくところがなくなったんだ。
アシュラフはそのとき結婚したばかりで子どもがいなかった。だから決心してフェッダーを引き取ったんだ。アシュラフが22歳の時だった。それからはみんなでフェッダーのことを見守りながら今日まで来たんだ。」
アシュラフが言いました。
「この子は本当にかわいい。正直自分の3人の実の子よりもかわいい。色んな悲劇を経験しているのに、笑顔が一番明るいんだ。手伝いもよくするし頭もすごく良い。この前のテストではなんと98%の高得点だったよ。」
そんなフェッダーに聞きました。
「学校は楽しい?」
「うん、もちろん楽しいよ!」
「好きな教科は?」
「算数。」
「そっか・・・。将来は何になりたいの?」
「もちろん学校の先生になりたい!」
「お父さんのことは知ってる?」
「うん、もちろん知ってるよ。でも今まで育ててくれたお父さんとお母さんがいるから大丈夫。」
これがパレスチナを生き抜くということだと思いました。
フェッダーに未来あれ!
さて、夜は僕のパレスチナ人家族、マジディの家族といつもの会食です。
娘のようにかわいい三人娘、ルスル(右から2人目)、ラワン、そしてラリーム(ルーリー)。ルスルは以前顔の湿疹を気にしていましたが、良くなって元気を取り戻しました。ラワンはまだ高校2年生だというのに、なんと身長が178cmになりました。それなのに、いつも僕にくっついてくるのでこんな背の高い女の子は初めてだからびっくりします。
ラリームは今14歳(写真向かって左)。最も多感な時代に入りましたが、いつものように明るく、素直で、賢いままでした。
「 この前の試験どうだった?」
「うん、98%だった!」
「がんばったなあ!」
「うん、お医者さんになるんだ!」
「夢、変わってないなあ。」
「もちろんだよ!」
ラリームは2009年の空爆の時、10歳でした。空爆の恐怖から逃れようと全身をつねり続け、アザだらけになっていました。以前「地球のステージ」で語っていた、その少女です。こんなに大人になりました。
これからの成長が楽しみです。
そうそう、モハマッドのところにも行きましたよ。この前の12月で18歳になりました。今高校3年生です。ますます精悍になってきました。
今年の6月に大学移行試験を受け、得点が良ければ海外の大学(おそらくエジプト)に奨学金を取っていけます。今がんばって勉強中です。もしも大学に進めたら、モハマッドを日本に呼びたいと思っています。そのときは妹のアッラーも一緒に。
アッラーも1年1年大人に近づいていきます。いま、15歳です。
美しいアッラーの写真は実は絵はがきになって売られています。
(絵はがきのアッラー)
アッラー公認ですから是非今販売中の「世界回廊」をお求め下さい。美しいアッラーがそこにいます。
こうしてたくさんの関わりのある人たちはみんな懸命に生きています。
子どもたちは1年1年成長し、夢に近づこうとしています。僕たちに何ができるのか、今後も一生懸命考えていきたいと思います。
明日、ガザを出域します。
桑山紀彦
熱心な現地の皆さんが後を引き継いでくださるのは頼もしいですね。
ステージに登場する子どもたちの成長ぶりにはビックリです。
みんな夢を叶えられますように。
今年はしっかりした基盤強化が出来て、社会的心理的ケアという大きなテーマが前進しそうですね。