今日は村の巡回診療の日です。
向かったのは雨に煙るファトボル村。天上の楽園と呼んでいるハトリア郡の村です。でも、天上の楽園であるが故に、そこへのアクセスは非常に悪いのが事実です。特にこの雨期は道がぬかるみ、容易にはたどり着けません。でも、皆様の募金と自己資金で購入した新車のHiLuxはそんな悪路をものともせずに登っていきます。
本当にこの車にしてよかった。これがなければこの時期のファトボルにはたどり着けません。
そして診察が始まりました。健康を守るカウンセラー、マルセロや助産師マルティーニャは元気に、誇りを持って仕事をしてくれています。みんな「地球のステージ」の現地スタッフです。
今回は桑山が92名、アイダが73名の患者さんを診察し合計165名。今日もまるまる5時間かかりました。
そんな中、医学生たちと産婦人科医のいずみ先生はアイダの妊婦検診に付き添いました。
ポータブルのエコーを使いながら的確に、迅速に胎児の様子をモニターしていきます。みんな食い入るように見つめています。
これは病気を発見するものではなく、胎児が元気であることをチェックするものですから自然とみんなの顔にも笑顔が出てきます。いい感じ。
しかしここでアイダは異常を発見しました。
胞状奇胎です。
胎児にならず、泡状の組織で子宮が満たされ赤ちゃんのように見えますが、実はそうではない状況です。
残念な話ですが、すごいのはアイダがいなければこのことは発見できなくて、場合によっては出血や血栓が心臓や脳に飛びお母さんを死に追いやる可能性も十分あるということをここで診断できたことのすごさです。
早速お母さんは、僕たちと一緒にディリ市内に戻ってバイロピテ病院に入院しました。迅速な処置が人の命を救います。実はこのお母さんは現在13人の子どもの母親でした。胞状奇胎になりやすいことをアイダはわかっていました。さすがアイダです。
この活動がこうやって直接的に人の命を救っています。アイダに感謝とともに尊敬の念を。
そんな診察中のアイダに何度も電話がかかってきます。それは、このハトリア郡に配置された若い医師たちからの相談の電話。彼らはキューバに送られ、6年間の医学部生活を終えて戻ってきたらいきなり僻地に赴任となり、一切の指導役もいない中で日々診療しているため、不安なのです。そんな研修中の医師からの電話にも丁寧に答えるアイダ。まさに、バランスの人だと思いました。
さて、診察が一段落していく中で山本さんはすっかりピエロになり、村人を楽しませています。この突き抜け方はすごい。こんな日本人のパフォーマーがいるとは驚きです。みんなが思いました。
「やっぱり人のつながりは“言葉”じゃない。」
と。
参加の松浦君も一生懸命子どもたちに関わっていきます。そして後の反省会で語りました。
「自分の中に、こんなふうに素直な気持ちがちゃんとあったことを実感できて、自分のためにもよかった。」
そう、そういった自己発見こそスタディツアーで大切に思っていることです。
最後にみんなで写真を撮りました。
ごちゃごちゃしていて写りきらない人もいたけれど、優しさと愛情に満ちた天上の楽園、ファトボル村の1日でした。
桑山紀彦
地球のステージの巡回診療は無くてはならない存在なのだ、ということを改めて感じています。
人の命を救う、健康を守る、大事な仕事ですね。アイダのこれまでの努力に敬意を表します。