今日、海老名こころのクリニックは新患の方が1000人を超えました。
実に4年で1000人を受け入れさせて頂いたということで、名取のクリニック時代は6年間で1000人だったので、2年早く1000人となりました。その間実に細々と、受付の赤木智子さんと二人、時々優子ちゃん、明ちゃんに助けてもらいながら、看護師さんも臨床心理士さんも雇わずひたすら話を聞くという姿勢に専念し、2年目からは不登校専門、児童思春期専門としてここまでやってきました。
平均年間250人の方を受けてきたことになりますが、ステージと海外の仕事が大半を占める時も多く、1週間で診られる人には限りがあるはずですが、ここまで数が伸びてきたのはある意味「皆さんよくなって外来から卒業していかれた」からだと思います。それはけっして僕のチカラではなく、患者さんの中にある「よくなりたいという心のチカラ」が有効に働いたからだと思います。
人間の身体には自己治癒力といって放っておいてもよくなる力が備わっています。ロボットは壊れたら、外から「修理」をしないと自己再生は(基本的に)しないものだけど、人間は違う。自らよくなるチカラを持っています。そしてそれは心の面も同じ。心にも自然とよくなろうとするチカラが備わっていて、それを引き出すためにひたすら話を聞いてきた4年間でした。
そのためにはお一人に30分という時間を確保し、1日に診られる患者さんの数を制限することで得られた結果なのかも知れません。でもはやり僕は「ただ添ってきただけ」という思いがあります。ただ「添う」だけでも人の心は良くなろうという方向に向けて動き出すことを確かめながら外来を続けてきたと思っています。
そして今、目の前に立ちふさがる新型コロナ禍。今日も働き盛りの世代の男性の新患さんをオンライン診療で受け入れましたが、持病が故にコロナにかかって死んでしまうのではないか、という不安と、コロナにかかったら社会的に抹殺されてしまうのではないかという恐怖を募らせていらっしゃいました。
昨日の新患さんはどう考えてもテレワークにするべきなのに、あくまで会社が「出ろ」と言って聞かない。こっちの命が危なくなるような仕事を「強制させられている」怒りと哀しみ。自分が好きで長年続けてきた会社だけど、このコロナ禍で実際の「裏の顔」が透けて見えてしまった落胆を語っていらっしゃいました。
今、外来でできることはこの新型コロナ禍の不安と恐怖、怒りと哀しみを受け止め、共有すること。時には弱い抗不安薬や睡眠導入剤も使ったりもするけれど、みんなそれを枕元において、飲まないように努力しています。
「これを飲めば眠れる」「これを飲めば不安が少し楽になる」と思えれば、実際には飲まなくても乗り切れるかも知れません。みんな本来は強い人々なのです。
昨日も今日もお一人で暮らしを立てていらっしゃる社会人でした。気丈で本来であれば心療内科に連絡することはないであろう人生。でも、この新型コロナ禍は目に見えない圧迫感と恐怖を押しつけてきています。
しばらくは1000人を超えてもなお、そんなコロナに、いや社会におびえる皆さんに寄り添えればと思っています。今の時点で海老名市で感染された方は11名。でも潜在的にもっといらっしゃると思います。
市の医師会は独自に動きを始めました。今はここが僕の「現場」です。
桑山紀彦