東ティモール2日目

 今日は現在カバーしている7つの村の中で「ノレマ」村に行きました。

 首都ディリからは車で4時間弱。途中からでこぼこ道に変わり大きな河を横切ってなお山の中に入っていくと、開けた場所にその村がありました。前もってアイダ医師に、

「歓迎されるよ~」

 といわれていたとおり村をあげての歓迎となり、僕と明ちゃんは歓迎のタイスをプレゼントされ、かわいい子どもたちの音楽と踊りに先導され村に入場していったのでした。

12/27-1

 なぜこれほどの歓迎があるのか。それはこの村がずっと医療や保健に関して見捨てられてきたからです。国からは一切のケアが届かず、国の保健師も全く回ってきません。村人は自分たちで自分たちの健康を守るしかなかったのですが、それでも限界があります。そこにアイダ医師の調査が入り、「ここは重要だ」と言うことでケアの対象となりました。

 人口は実に1300人。大きな村です。早速の診療が始まりました。

 ものすごい数です。正直ひるみました。アイダ医師には、

「明日は250人くらいになるからよろしくね。」

 といわれていましたが、まさかそんなにはならないさ・・・と思っていたら現実は・・・。村人は医療に期待していました。まずは僕が大人、アイダ医師が子どもを担当してどんどん診察をしていきます。途中からはお互いが交代して僕が子ども、アイダが大人の診察に入りました。

 すさまじい数の行列ができ、みんな真剣に病気を訴えます。でも正直全体の4分の1は特に今なんとかしなければならない病気の人ではありません。せっかく医師が二人も来てくれたので、常備薬を確保していこうという気持ちで並んでいる人たちです。でもそれだって大切。富山の薬売りの方が来てくれるような環境ではないですから。だからちゃんと診察をして常備薬的なお薬を出していきます。あとの4分の3は実際に病気の皆さん。でも重い病気は余りみかけませんでした。この4分3の皆さんのうち約60%が風邪です。そして30%が下痢をはじめとする消化器感染症です。これで9割ですね。残りは皮膚病であったり眼疾患であったり。マラリアを疑うケースは2例しかありませんでした。

12/27-2

 これは今年の雨期が小雨であることに大きく関与しています。じめじめして雨がどんどん降ると水たまりができてそこに蚊がわき、マラリアを媒介していきます。でも今年はまだ雨が少ないのでそれほど多くの蚊が発生しておらず、マラリアが流行していないのです。年によって大きく変わりますが、これも地球温暖化の影響としたら、このままですむわけがありません。小雨による農作物への影響も大きくなっていきます。

 地球の環境保全は、慎ましやかに自給自足しながら平和に暮らしている東ティモールの人々を不安定に追い込んでいくのです。

 そして12時30分に始めた診療は実に3時間半、1分の休みも取らず続けて、なんと160人の患者さんを一気に診療しました。アイダと併せて実に300人の診察をしたのでした。1日の診察数では、医者になって24年で今日が最高でした。さすがに立った時はめまいがしましたが、やり遂げた実感がありました。

 なんか意地でも後には引かないぞと決めた、3月12日、津波の翌日のことを想い出しました。意地も時には大切です。

 帰り道、クルマは既にガタが来ていますが、なんとくぼみにはまった瞬間、パジェロのお腹についているステー(衝撃防止用の鉄板)が外れかかりました。これは大変。このままでは動けません。下を見ると鉄板が引っかかったままです。

「ええい!」

 ここはしょうがない。1日160人を診たんだからクルマだって診れないわけがない!

 下に潜って鉄板を外しました。今までいろんな村に「保健と医療」を運んできたパジェロのお腹が見えました。なんか泥にまみれて愛おしかったですね。

12/27-3

 ディリに着いたらもう夜の9時近くでしたが、エキサイティングな1日が過ぎていきました。


東ティモール2日目」への6件のフィードバック

  1. 医療支援に対する期待の大きさと、肉体労働とも云える大変さがブログから強く感じます。
    同時に、見て見ぬふりしない精神でその活動を敢然と実行する桑山さんの真骨頂をみる想いでいます。
    くれぐれも、人・車の健康には気をつけて・・・・。

  2. 本当にお疲れ様です。
    村の皆さんは期待と安心を必要としておられたでしょうね。
    それにしても物凄い人数の患者さん達でした。
    いつも心療内科医の先生が、海外ではいろいろな患者さんを診察されて、たくさんの努力と知識の広さにすごいなーと思います。   
    パジェロのお腹まで直してしまうなんて。
    自分の限界を作るのは自分なんですね。弱気になったり、自分を守ることばかりで前に進めないでいる私に、先生の行動は柵を軽々と越えられるよと教えられているようです。

  3. 桑山 紀彦 様
    車の下でエキサイティングな光景、そして子供立ちの診察 本当にご苦労さまです。
      富山の薬売り、ずいぶん昔田舎に来てくれました。
      日本ははるか以前から薬の文化がありました。
      日本は幸せですね。
    お疲れ様、本当にお疲れ様です。

  4. 年末ともなるとどこも慌ただしく車は多いし銀行にも郵便局にもスーパーにも人が溢れるばかりで何かちょっと用を足すにもすごく時間がかかってしまう。
     ボクが暮らす田舎もご同様で、普段なら1時間で済む用事も2,3時間はかかっる有様だ。そんな慌ただしい年末だが普段めったにやらないことを今日はすることにした。
     窓ガラスの掃除と家全体の清掃である。なんのことはない大掃除なのであるが、このように云うのは、この築100年のボロ家はめったに掃除などしたことがないからである。だいたい掃除をするのに危険をともなってしまう家屋であるのである。おいそれと今から掃除をしますなどとは言えないのである。掃除機を引っ張っりだして、コードが伸びたりするとコンセントを刺してある壁面が崩れたり、吸い込み口が柱にぶつかったりすると、衝撃で天井から板が外れて落ちてきたりするのである。そういう危険な家なのでめったに掃除などできないのである。だからここ数年は掃除というものをしたことがない。床をちょっと掃く程度はやった。
     今日は意を決して、家屋倒壊の危険を顧みず掃除をすることにした。周囲に注意しながらの掃除であるのでたぶん丸一日かかると思われる。夜には疲れ切ってフラフラの体となるのは間違いないことである。
     桑山先生のように1日160人の患者さんを診てもへこたれないという超人的なことはボクには到底できそうにないのである。
    そのうえ、帰り道での、車の修理までとは。まったくなんて凄いひとなのです、あなたは・・・・・。
     天気が少し持ち直した日本各地は今日は小春日和といったところ。
     さてさて、これからねじり鉢巻きで、家屋倒壊にならぬよう気を付けながら、大大大大大掃除なのだだだだだだだだ・・・。
        和歌山  なかお

  5. 大診療の一日
    桑山さんドクトルアイダ、
    お疲れさまです。
    クリスマスプレゼントのように
    サンタがわりの
    ドクターを待ち望んでいる
    村のみなさんが目に浮かびます。
    世界のどこかで蝶が羽を広げると
    地球の反対側で何かが起きると言う
    ことを聞いたことがあります。
    世界中で、
    我も我もと
    自分の欲求ばかり追い求めてきた
    20世紀の結果が
    東ティモールの慎ましい
    生活を脅かすとしたら…。
    一人一人が
    今からでも生活のリデザインに
    取り組むことは
    最優先の行動のひとつですね。
    昨年のツアーの時に
    英語のTVニュースで見た映像は
    海の向こうのオーストラリアの
    大水害の様子でした。
    降水量は大好きなコーヒーの収量にも
    影響するでしょうし、
    世界は続いている…。
    どこぞの電力会社のためでない
    省エネに努めます。

  6. 長い一日になりましたね。本当にお疲れ様でした。
    覚悟を決めて頑張るときの桑山さんは強いですね!
    パジェロの下にもぐっている姿、らしくないところがいいですね。

コメントを残す

あなたのメールアドレスは公開されません。必須項目には印がついています *