そろそろ時の薬が効いてきている人が増えてきました。
普段の日々の中で、日常生活の中でゆっくりと心の傷が癒えてきている人たちです。
春代ばあちゃんもその一人です。
「最近、ようやく津波の夢見なくなった~。助かった~。やる気も戻ってきてよ。朝も5時くらいには起きて畑に出られるようになったんだ~。」
「よかったね!」
「それからよ、シャンプーもできるようになったんだ。」
「それはすごい!。だって春代ばあちゃんずっと“水のいらないシャンプー”だったもんね。」
「そうなのよ。この間それがなくなったんで、家に人にかってきてくれって頼んだら、“いつまでそんなもの使ってるの?もうそろそろ卒業しなきゃ”っていわれて買ってもらえなかったのよ~。それで思い切ってシャンプー使ったら、できたのよシャンプーが!!
「そっか、やってみるもんだね。」
「もう湯船も大丈夫だし。最近は耕谷道も散歩で近づいてるんだ。」
「でも、踏み込めはしない?」
「そうだね~、そこはもう少しかな・・・。」
春代ばあちゃんは耕谷道で津波にさらわれかけて、通りがかりの人に引っぱられ九死に一生を得た人です。この耕谷道は最後の課題ですね。
「やっぱりね、時の薬ってものはあるよね。」
「そうだね、春代ばあちゃん。ちゃんと効いてきたね。」
「うん、よかったしゃ~。」
春代ばあちゃんは笑顔でした。
現在論文的にはこの震災と津波被害の被害者に占めるPTSD罹患率は9.7%程度といわれています。つまり10人に1人がPTSDの症状を持っている。逆に言うと10人中9人はPTSDの症状にさいなまれないで日常生活を送れるようになっているということです。
しかし、それは決して一部の人たちが狭い視野で考えた、
「寝た子を起こすな」
「忘れかけているんだから、そっとしておけ」
ということが有効だったのではなく、一人一人ががんばってそれを言葉にしたり、表現したりしたことで癒されていったのだと思います。つまり、心療内科はそんなにいつも必要なのではなく、ちゃんと効いてくれる人、受け止めてくれる人がいれば「時の薬」と共に、心が楽になって行くのだと思います。
しかし、大切なものを失っている場合は、そんなに簡単な話ではありません。苦しい気持ち、不安、落ち込みが波状に襲ってきます。なかなか時の薬の効果が期待できないのが「大切なものを失った場合」です。
だから、ちゃんと心の中の辛い記憶を物語にして吐き出していくことをいつも念頭に入れておかないといけないと思っています。
子どもたちも、見た目明るくてもまだまだ課題を抱えている場合をたくさん見かけます。
心のケアは、これからが正念場ですね。
桑山紀彦
春代おばあちゃん、シャンプーにお風呂、良かったですね。私ですら、海の近くを通ったら、「今、地震が来て津波が来たらどうしよう。」って考えたりするんだから、波にさらわれそうになったんじゃ…家族の方の、「卒業しなきゃ。」の言葉もなんだか感激。そんな言葉掛も出来る様になって来たのかなって。 時が解決してくれる事ばかりではないでしょうが、時が解決してくれることがある事に感謝。
春代ばあちゃん、良かったですね。「時の薬」が残りの10人のうちの1人にも残らず効いてきますように祈っています。
その方の本来の力は戻るものなのですね。
春代おばあちゃん、「シャンプーしてみたらできた。」
驚きと嬉しさわかるーと思いました。当たり前のことと思われることが、怖くてできなかったのですものね。
お元気になられてきたこと、お会いしていない方なのに私も嬉しいです。
先生や周りの皆さんに支えられ、ご本人もドライシャンプー卒業したらの声に、素直にやってみようと思われたこと良かったと思います。
心にエネルギーが蓄積されて、行動できるようになると思います。私も気持ちばかり焦って、落ち込みの沼から上がってくるのは難しいことでした。でもほんの少し「やってみよう」と思う感覚があれば、トンネルの出口にわずかな明かりが見えたように思いました。
今まだ苦しい中にいる方々も、それぞれのペースで回復されますように願っています。一人で抱え込まず、助けてと声にされますように。
桑山先生も心身お大事になさってくださいね。
桑山さん、はじめまして。
以前からよく、精神的な回復のためには、忘れることではなく表現することが大事なのだという主張をなさっていますね。つまり、以下のような部分です。
> しかし、それは決して一部の人たちが狭い視野で考えた、
>「寝た子を起こすな」
>「忘れかけているんだから、そっとしておけ」
> ということが有効だったのではなく、一人一人ががんばってそれを言葉にしたり、表現したりしたことで癒されていったのだと思います。
上記引用箇所はどのような科学的根拠に基づいているのでしょうか。よろしければ、このような事実が紹介されている本や論文等(英語でもかまいません)ありましたら、ご紹介いただけませんか。勉強してみたいと思っています。
桑山 紀彦 様
春代ばあちゃんの一言ひとことが非常に心に残ります。
「足がまだ向かない」・・・切ない話ですが。
この大事な一言をブログに引用頂き現状がよく解ります。
こちらまで気持ちが伝わってきます。
私たちは時として見た目だけで判断しがちです。見た目だけで様子が明るければ元気にちがいないと思い込んだり。人間のこころは複雑で、「うれしいけど悲しい」、「幸せだけど不安だ」とか二律相反するするものが同居します。しかし、見ることさえできない人たちもいます。
ボクは及ばずですが震災のことや桑山先生の取り組みのことなど時にふれ周りの人たちに話してきました。しかし、またかよ、また同じことを言っているなどというふにも受け止められてきました。聞く耳を持たない人たち、見るものを見ようともしない人たちがいることも現実です。ボクは考えました。ちょっと時間を置いて話をすることにしよう。忘れたころに話しをすればいいんだ。そうでなければ相手も疲れてしまいますね。相手のこころをそうしてこちらに向けさせる。そういう作戦をとることに決めたのです。これでこちらの姿勢が伝わるはずです。及ばずながら孤軍奮闘です。
和歌山 なかお
桑山先生いつもご苦労様です!春代おばあちゃんが少しずつでも前向きになって来てとても嬉しいです!ご家族や桑山先生の地道な努力のおかげでしょうね!そして、春代おばあちゃん本人の前を向いて生きて行こうと言う努力には頭が下がります。今回の大震災は、被災者の中でも皆さんの被災のされ方は様々です。私も被災者の1人ですが、家族は命は助かったものの、親族は色々な形で被災され、家族、親族以外の知り合いの方々は天国に旅立ってしまいました。私は命があったから、どんな事も我慢して、もっと大変な思いをした方々が沢山いらっしゃると自分に言い聞かせながら今日まで自分に出来る事は微力ながらも続いていました。この被災地に居て思うのは、どんな被災のされ方でも、自分はまだまだいい方だから我慢して自分の気持ちを語らなかったり、大変な被災のされ方の方々の中でも語る事が出来ない状況におかれていたり、様々です。本当は私も語りたい事が沢山あります。でも語る場所は無いし、自分はまだまだいい方だから我慢してしまいます。私でさえこんな思いをしているのだから、沢山の方々が本当はまだまだ語りたい思いがあると思います。やっぱり先生のおっしゃるように、このまま忘れていくのではなく、語りながら自分の気持ちの整理をして、その後に徐々に前向きに生活出来るようになればいいのではないかな~と思います。決して教科書どうりにはいかないように思います。私はだからこそ先生のお考えにいつも同感しております。この被災地の方々の心のケアは中々難しいと思っております。やっぱり先生のような方々にばかり頼らず、自分達なりに語り合う事は大切ですね!焦らずにゆっくりと… くれぐれも先生ご自身のお身体を大切にして下さい。いつもありがとうございます!
心の強い人、弱い人、被災の状況などなど人により様々です。特に傷ついた子供が心配です。
時の薬の効果は大きいと思いますが、少しでも早く前向きの気力で立ち上るには「時」と同時に心療内科医の適切なサポートが必要です。
長くなるほど、治療もむずかしくなると思いますので、これからもより一層のサポートをお願いします。
「そっとしておいてやれ!」というのは、一見いたわっている様ですが、何もしないのと一緒で、見て見ないふりをすることだと言えます。どうしたら解ってもらえるのでしょうか?
春代ばあちゃんが少しずつ元の自分に戻っていく様子を知れてホッとします。
時の薬も人によって時間のかかり具合が違うのでしょうね。
寄り添ってくれる人がいればいつか元に戻れるのでしょうね。
「語ることはたくさんあるけれど、語る場所がない」
という、R.Sさんへ。
時折の書き込み、いつも、読ませていただいています。
想いの丈を・・・というわけにはいかないとは思いますが、
どうか、ここに書き込める範囲で書き込んでください。
桑山さんのコメント同様に、被災地の方々の生の声を、私も一生懸命読みます。
“時の薬”は効果ありですね。それと同時に
人は人によって癒されるということも大切だと思います。
誰かの話に、誰かが共感したり、そうだったんだ~と納得したり。
私はそれだけでも、ほっとしたりしますから、
人の話も、そうやって“心”寄り添いながら聴きたい(読みたい)と思います。
時の薬はすごいですね。
私は一人っ子で、母を突然見送ったとき、いろいろな感情が入り交じって、数年間は仏壇の写真を見ることができませんでした。でも、残された病気の父と家族で過ごせたから乗り越えられたのだと思います。
今回の津波では、多くの方々が同じような気持ちでおられるのではないかと想像しつつ一日も早く皆さんが乗り越えていかれるように願ってはいましたが、「時の薬」も必要なことなんですね。
もちろん、支えての桑山さんや国際さんの皆さんあってのことでしょうけど。
春代おばあちゃんがお風呂にはいれるようになって本当に嬉しいです。お風呂でゆっくり手足を伸ばしてくださいね。