ダンの生き様

毎日忙しい滞在予定でなかなかダンに逢いに行けなかったけれど、今日ついにダンの診察室に入りました。

バイロピテ病院は昨年10月に運営危機を迎えたのですが、シャナナ元大統領の一言で政府からの支援が得られることとなり、一旦は危機を脱することができていました。しかし、その後約束されていたはずの政府からの資金が滞り、もう3ヶ月もお金が来ていない状況です。まさにまた運営の危機を迎えています。

しかしダンがすごいのは、そんな危機をものともせず黙々と診察を続けていることです。相変わらずお金も取らず、20年前と全く変わらない姿勢で患者さんを診続けています。

「政府は頼れない。政治家が替わるだけで方針が全く変わってしまう。保健大臣だってまだ決まっておらず全く政府という”体(てい)”をなしていない。だから自分はNGOを信じたい。こんな状況だから自分はまだまだこの国でやるべき事があるように思う。しかしお金がない。私を信じて付いてきているスタッフにも子どもや家族がいて、お金がないとこの仕事は続けていけないんだ。

どうか日本の皆さん、これまでも日本の大きな力があったからこそこの国はここまで来られたところがある。引き続き力を貸してほしい。私たちのバイロピテ病院を資金的に応援してほしい。」

現在バイロピテ病院は月15,000ドルほどの運営費がかかっています。日本円で月180万円くらい。1年の活動を保証するには2,000万円強の資金が必要です。これはもう個人や小規模団体が関われる様なものではなく大きな企業体や団体、外国政府が関わるべき規模のように思います。

帰国したらダン先生の直接メッセージをお届けしますので、資金源に心当たりがある時はお教えください。

今の医療状況についてもダンがいろいろと教えてくれました。

「マラリアは今の時点でもほとんど診ていない。しかし安心してはならない。マラリアに対する免疫が低くなってきている今、再びマラリアが激発する可能性が迫ってきているように思う。だから常に再燃の心づもりをしておく必要があるだろう。

この国において現在もっとも恐ろしいのはやはり結核の蔓延だ。通常の肺結核のようなものだけでなく、身体のあらゆるところに病巣をつくる結核は決してあなどれない存在だ。呼吸をしている以上誰もが結核菌をもらう可能性がある。大切なことは結核菌を吸い込むことは避けられないが、それを繁殖させないような抵抗力、栄養をつけることが最も大切だ。だから外国人は発症しないけれど村に住む東ティモール人は発症している。栄養改善。それもまたこの国の医療状況の改善に直結するだろう。

まだまだこの国は貧しい。だから私は無料診療は大切だと思う。患者さんが来続ける限り、私はこの国で医療をおこないたい。」

1945年、終戦の年生まれのダンはいつまでも現役の「医師」です。

桑山紀彦

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