若者よ!旅に出よう!

港屋のおばちゃんは今から38年前、18歳で四国1周自転車の旅に出た時に知り合った愛媛県は佐田岬半島の突端三崎の町にあった民宿のおかみさんです。

本名は笹田吉子さん。当時は40歳でした。二人の娘を女手一つで育てながらこの民宿「港屋」を切り盛りしているたくましい女性でした。

孤立し、その自意識故に周りから疎まれていると思っていた自分は、おばちゃんと出会い「心の垣根なく接することの大切さ」を学びました。それは18歳にしてようやく「外の世界を知る」というとても大きな出来事だったと思います。

だから翌年の1月1日、おばちゃんから新年のご挨拶ので電話がかかってきた時、一番驚いたのは自分でもあり、自分の母親でもあったわけです。

「なぜ人が苦手なはずの紀彦に、四国から電話が?」

しかし、きっとこれは僕が求めていたから起きた出来事のようにも思います。それはつまり、

「自分の殻を破りたい。もっと広い世界が知りたい。」

という内なる衝動があったから。

それから38年間、決して切れることなくおばちゃんとつながって来たのは、そんな自分の内なる衝動がまだまだ完結していない証しなのかもしれません。

「もっと自分を変えたい。もっと良くなる、変われるはず。」

という願い。それはこうしてちょこちょこおばちゃんに会いに行くという行動に表れているのだと思います。

出会って38年、今のおばちゃんは相変わらず元気で、笑顔のままでそこにいました。年金暮らしで大変なのに、今暮らしている老人健康保健施設のすぐ横のスーパーでパックのお寿司を買ってくれる。旅人をもてなすおばちゃんの心意気は健在です。

また、「自転車日本一周篇」がアップデートできます。常に「今」を伝えていくことを大切にしている自分は、こうしてちょくちょく自分の原点である旅の思いを忘れないで綴っていきたいと思います。

今年6月の広島県三原のステージではそんなアップデートされた自転車日本一周篇でお目にかかりたいと思います。そしてできれば松山の愛媛県ユニセフ協会の皆様がステージを企画してくださったら、

「おばちゃん娘と絶対に行くからね。」

と言ってくださいました。

なんとか松山でやりたい!

桑山紀彦

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