今日はついに第1回目の「ムワンガの会」でした。
ムワンガはスワヒリ語で「光」の意味。暗闇を照らす光りような語りの会ができればと思って名付けました。
これは海老名こころのクリニックが今後展開する心のケアの第3段階「社会との再結合」「社会化のプロセス」を実現するものです。様々な「語り」を展開することで自分の中にある「闇」や「トラウマ」の部分を「語り」に変え、それを「聴き手」という社会に還元していくための時間です。今日の語り手は梨奈(仮名)さん、16歳です。
彼女は中学校1年生の11月からほとんど中学校にはいっていませんでした。でも一念発起して高校からしっかり通うようになり今では皆勤賞の高校1年生です。彼女が語りました。
一つ一つ質問しながら梨奈さんの本音を聞き出していきますが、感動の連続で、本当に泣けてきました。
「自分は本当は中学校に行きたかった。でも早々に疲れてしまったのだと思う。だから中学校に行かないというのは自分で選んだものだと思う。でも自分は弱かった。それは学校に行っていない時間を自分らしく使えなかったこと。本当は学校に行っていない時間を自分のための勉強などに使うべきだったと今は反省している。その点では学校に行けないと決めた自分は強かったけど、何もしないで過ごしたのは弱い自分だった。
お母さんはそんな私を決して責めなかった。いくつかの選択肢を私に提示し、選ぶのはいつも私だったから私は安心して”学校に行かない”という道を選ぶことができた。
でも私は”普通の高校生”になりたいという願いを持っていた。それは駅などで見かける普通の高校生の姿。だから私は高校を頑張ろうと思った。最初は起きられないし、力がわいてこないからかなり休みがちだったけれど、もう二度の中学校の時のような私にはなりたくないと心に誓い、とにかく踏ん張った。すると少しずつ行けるようになり、今は皆勤賞をもらえるまでになった。でもそれはまさにあの”闇のような中学校生活”があったからできたこと。あれがあったから、”あんなふうになりたくない”という思いに支えられてここまでやってこられた。
私の人生はつながっている。捨てたい部分だって捨てることはできない。だから私は中学校時代の”闇”の部分を忘れないで、”明るい高校生活”を得ようと頑張って行けそうだ。」
会場には17人の人々がこの勇気ある16歳の語りに耳を傾け、そしていろんな質問をしていきました。お母さんの立場からの質問、当事者からの質問。なんと勇気の出る、なんと言葉に感動する時間だったでしょうか。NHKからはディレクター氏が来て下さり、積極的にいろんな質問をしてくださいました。
これからも「ムワンガの会」月1回のペースで進めていきます。
「向き合うということは、その辛い出来事を乗り越えて忘れていくものではなく、その出来事と共存して生きていくものだ。」
ということを改めて強く感じた「ムワンガの会」でした。
本当は本名と顔を出していきたいところですが、心ないネット住民のことを考えて仮名ではありますが、梨奈さんに感謝!
桑山紀彦