ガザでの活動が終わりました。
エジプト国境のラファ検問所が開き、エジプトとの行き来が可能になったとはいえ、決してスムースに進んでいるわけではありません。今も3000人の人が国境で出域を待っています。だから相変わらず密輸のトンネルは健在であり先週もそのトンネルを爆破しようと3日間にわたって夜中の4時にひどい空爆が続きました。久しぶりにラファの人々は眠れなかったようです。
昨日はガザに戻る途中でハマスの軍事演習に出くわし、迫撃砲弾が近くに着弾し、明ちゃんは車内でフリーズしました。僕はそういうとき、逃げるべきかどうすべきかとっさに考えはしますが、次の砲弾や銃弾がこのクルマに飛んできた時の情景をイメージして、やはりフリーズします。一瞬、
「死ぬかもしれない」
と思う経験はこうして積み重なっていきます。今回の津波で多くの人が、
「死ぬかもしれない」
という経験をしてしまいました。それは命と心に大きな負担となり、その後に影響を出し続けることもあります。このガザでは今でもこうして命の危険に出逢うことがたくさんあります。もうこりごりのはずなのに、人類は相変わらずそんな事に”命がけ”になったりしているのです。
今日の夜からラマダン(断食月)が始まりました。イスラムの人々はこれからの1ヶ月間日の出から日没までの約16時間、食事はもちろん水さえも口にすることは出来ません。それは、今も困難の中にある人に気持ちを少しでも近づけるため、あらゆる人々が苦労をあえて背負い、共感と同感を心の中に宿すためにラマダンがあります。もちろんそんなきれい事だけでこの1ヶ月が過ぎていくものではなく、かえってイライラしたり、逆効果な点も見られます。でも少なくとも、
「何でも自由にしていいんだ。」
と自由をはき違えてしまっている僕たちの社会において、多くの人があえて同じ困難を受け入れようとする姿勢に敬意を感じます。今、ヨルダンですがラマダンが始まる合図のコーランが響き渡りました。
さて、昨夜はラファでの最後の夜でした。
いつものパレスチナの僕の家族と食事に行きました。以前もブログで紹介しましたがダルウィーッシュ家とマジディ家の二家族です。
マジディ家からは「お前はうちの息子だ」と公式に宣言されているので、あえて僕の家族を紹介します。
お父さんのマジディは旅行業を営むタクシードライバー。2009年のガザ危機において毎日毎日エル・ナジャール市立病院の救急部に通い続ける僕を送ってくれたのがマジディですが、その日々の中で大きな信頼を感じて、僕を家族の一員として受け入れてくれているのだと聞きました。ありがたいです。
お母さんのナジャーは学校で英語の先生をしている才女です。働きながらも家族を支える彼女に子どもたちはたくさんのことを学んでいます。
さて、子どもたちです。
長男のラーエッドは今回大学受験に失敗しました。大変落ち込んで今失意の中です。でも相変わらずの親切な気持ちを忘れない優しい息子。このパレスチナにおいて大学受験に失敗するというのは非常に大きな痛手です。何せ機会が限られているので、どんな機会でも大切にしないといけない。だからラーエッドの失意は大きいけれど、そこから何かを学んで希望につなげていってほしいと思います。
長女のルスルは16歳。これから将来の方向性を考えて行かなければなりません。
「昔はルスルがよく話しに来てくれたのに、大人になるにつれてあんまり話してくれなくなって、ドクトルKが寂しがってたよ。」
と明ちゃんが話してくれたら、
「そんなことないよ」といって近くに来てくれる優しい長女です。ちゃんと手もつないでくれます。
次女のラワンは会う度に背が高くなっています。今170cmに近い長身。誰に似たのか・・・。すべてがスリムで、太い人が多いパレスチナの中ではずいぶん目立つ長身です。でもそれをちょっと気にしている14歳。だからあまりそのことを話題にはしません。大人の仲間入りの年代でもあるので、年年控えめになってはいますが今でも科学が大好きで、ちゃんと大学に行って科学の勉強をもっとしたいという理系少女です。何だかんだ言って一番手をつないでくるのはラワンです。
次男のモハマッドは12歳。この2月の渡航時と比べるとぐっと落ち着いてきました。家の手伝いをすることにかけては家族一のボランティア(志願者)です。細かいところによく気がついて長男のラーエッド同様、優しい少年です。少々太めになってきているのは、シャイ(紅茶)の砂糖が多いからだと思うな。
そして末娘のラリーム、11歳。
ラリームと、明ちゃん。ラリームの笑顔はパレスチナの宝物。
僕はといえば2日連続の海でずいぶん日焼けしました。
国連の主催する学校では常にどの成績もナンバー1の天才少女。一番好きな教科はラワン同様「科学」です。どうもマジディ家は理系が多いですね。実は英語も得意で僕とはほとんど英語で話してきます。いつも僕に会う度に語りかけてくれるのは、
「I Love you !」
パレスチナ人の愛の気持ちはすなわち家族愛です。ラリームにとって僕はすっかり家族になっているようで光栄です。あまりにべったりくっついてきてくれるので、ラワンやルスルが気にしてくれますが、年に2回しか会わない中でも会った瞬間にすぐにくっつてくる。大切な家族です。これからラリームがどんな現実を知っていくのか、気がかりでなりません。彼女が大きくなる課程の中でこの占領され、封鎖された環境がいいわけがない。一刻も早くちゃんとしたあまり前の自由を得て暮らせる環境にならないと、ラリームの笑顔が曇ってしまいそうで、夢が果ててしまいそうでなりません。ラリームのためにも、ガザの平和と自由を現実のものにしないといけないのです。
こうして、今回もパレスチナのとある家族に無償の愛で支えられて活動を終えることが出来ました。みんな津波のことを心配してくれていたけれど、元気な姿が見れて嬉しいといってくれました。
僕には飛騨高山にお袋と兄の家族がいます。もちろんそれは血のつながった大切な家族です。でもここパレスチナにも血はつながっていないけれど、ちゃんとした家族がいます。そんなふうにつながれてこれ以上の幸せはありません。
だから思う、この僕の家族に空爆しないで。この僕の家族を閉じ込めないで。この僕の家族に人間として当然の自由を与えてほしいと。
このパレスチナの地に生まれ、ただ普通に学び、暮らし、人を愛し、人を思ってくれているこの人たちにどうか「普通の生活」を下さい。
明日はドイツに11時間滞在して夜中飛行機に乗り、火曜日の午後4時には成田に帰国しています。
その足で閖中卒業生のみんなとのワークキャンプです。一気にまた震災の現場に戻ります。
桑山紀彦
先生も皆さんも素敵は笑顔ですね。
I love you ! 素敵な響きですね。いつか世界中の人が誰に対しても、I love you !って言い合えたら素敵ですね。
紀くん、明ちゃん、命がけの活動、本当にお疲れ様でした。
ありがとう!
充実したガザでの活動、お疲れ様でした。最後の写真をみると桑山さんかなり日に焼けたんですね。皮がペロリとむけていく姿が楽しみです。閖上中の同窓会でその黒さが話題になるかも… 日本の現実が近付いてますが、違う空気を吸って帰ってきて、ファイト一発?
ガザでも沢山の暖かい人々に支えられているんですね!
教師というのはのんびりしたもので、夏休みに入ると暑い暑いと言いながら節電で冷房を切った我が家で団扇で煽ぎながら寝っころがっていればそれですむ。そうはいってもたまに出張などがあって研修でお勉強に行ったりもする。今日は和歌山市での特別支援教育の研修に行ってきた。
難しい大学の先生の講演を聴いたり、教育委員会の堅苦しいお話を聴いたりして結構疲れる一日ではあったのであるが、どうにか研修が終わり、JR和歌山駅まで来ると暑さで猛烈に喉が渇いてきた。駅に隣接するホテルのフルーツ・パーラーに飛び込んだ。かわいいウエイトレスが微笑みながら尋ねてきた。
「いらっしゃいませ。なんになさいますか」
「めちゃ暑いので、アイス・コーヒーを」
とりあえず、コップの水を飲んでそう答えた。
吹き出している額の汗を拭こうとしてお絞りを取ろうとしたときである。ビニールの包み紙を見た。その包み紙には、”がんばろう日本”と大きく朱書されていたのである。さらにその下に
「このおしぼりの売り上げの一部は東日本大震災の義援金に寄付させていただきます」と書いてあったのである。嬉しくなった。こんなところにも支援の輪が広がっているのかと、お絞りをじっと見つめた。お絞り業界にこころの中で拍手を送っていた。
最近、寺山修司の「ポケットに名言を」を読んでいる。これは古今東西の思想家、文学者、科学者、哲学者の箴言を集めたものであるが研修を受けながらこんなことを考えていた。
研修会場には二百人近くが集まっていたと思う。二百人がに二百人同じように、百歩前にでることは不可能であろう。二百人の内、その中のだれか一人だけが百歩前にでることが出来るかもしれない。二百人が同時にできるのはずはない。二百人同時にできるのは、せいぜい一歩であろう。この研修は、その一歩前に出るための研修であろうと。
箴言は「一歩ではなく、つねに百歩前に出た人の言葉である」。その本の中に、寺山修司の次の短歌が掲載されていた。
煙草くさき国語教師がいうときに明日という話しは最もかなし
お絞り業界はえらい。
和歌山 なかお
ガザの家族、すてきですね。そのような状況下にあっても、前を向いて歩いておられるのですから。
「私たちを決して見捨てない、遠い国の友人たちがいる」という思いも、影響しているのではないでしょうか。
ブログ中に『ハマスの軍事演習に出くわし、迫撃砲弾が近くに着弾し、明ちゃんは車内でフリーズしました』とありましたが、以前の大規模な空爆の時ほどではないにしても、まさに凍りつく経験!
それでもガザの友人たちに対して「見て見ぬふりをしない」お二人の強さ。なんと表現したらよいのか・・・「誇りに思う」と言ってもよいでしょうか。
明ちゃん、桑山さん、お疲れ様でした。
ラリームとお二人の笑顔、最高です!
今回は怖い思いをしないですんだのかと思いきや、フリーズすることがあったのですね。
ご無事で本当に良かったです。お二人の運の強さに感謝します。
23日の再会が待ち遠しいです。
すてきな笑顔ですね。
先生が頑張っていらっしゃる。
わたしもできることをひとつひとつ頑張っていきたいと思います。