「オレんとこね、豚3000頭飼ってました。」
雄紀さんはおもむろにそう切り出しました。
「結構大きくやってたんです。親父が始めて、お袋とオレが加わって従業員3人抱えて、結構がんばってたんだ。でもね、津波でみんな持ってかれちました。あの時オレ、お袋と白石の方にいて親父とスタッフが残ってたんです。何せうちの農場、仙台空港のすぐ横、海岸から200Mもないですからね。もろ津波くらいました。」
豚舎
「お父さんたちは?」
「スタッフ2人帰して、あと一人と豚舎見回ってたらいきなり第1波が来たんで、親父は目の前にあったシルバーのコンポストによじ登ったんです。スタッフはそのまま流されました。幸い親父のコンポスト、肥料ためるために最近新しくした頑丈なやつだったんで、流されずにすんだんです。親父必死にしがみついて何とか助かりました。」
よじ登ったコンポスト
「スタッフの人は?」
「なんと、3キロ流されて、東道路で止まって助かったんです。」
「え?東道路まで流されて助かった?」
「はい、直線距離で3キロ。よく助かったと思って。」
「いや奇跡だと思います。」
「みんなそう言ってました。」
「親父さんはそのあと?」
「一晩コンポストの上で過ごしたんですが、朝になってようやく水が引いてきたんでずぶ濡れになりながら、広浦抜けて女ヶ池へでる橋わたって救助されました。」
「そっちも奇跡だと思いますよ。あの翌朝僕も女ヶ池行ったけど50cmの水が引いてなかったし、亡くなった方が流れてきてました。」
「親父も九死に一生を得たというところです。」
「それで豚は?」
「いや、それが3000頭すべて流されたんですけど、なんと100頭生きてたんですよ。」
「どこに?」
「水が来てなかったところに群れになって怯えてたんです。」
「ホントに?」
「はい、これも奇跡で。生きてたんです。残りはみんな死んで市に回収してもらったんだけど、生き残った豚がいたんです。」
「それで?」
「いや、嬉しくてね。“お前ら、そこにいたのか~!”って思ったらやる気がわいてきましてね。友達の豚舎に連れてってそこで飼育してます。」
「そっか、そりゃあその奇跡にやる気も出ますよね。」
「はい、なんか豚たちに”オレたちこうして無事だから、仕事しろよ“っていわれている気がして、なんかがんばれたんです。やっぱり人間仕事があるって大事ですよ。自分が必要とされてるって感じ。こんなにひどい目に遭ってもちゃんと希望の光ってのがあるんですよね。」
「いやうちもクリニックは残ったけど、周囲は壊滅状態だから患者さんにはもう来てもらえない、ああ、もう食べてけない、終わった・・・、って思った瞬間の落ち込みは忘れられませんよ。13年の借金残して、明日からどうやってクリニック経営していけばいいんだって、途方に暮れましたね。」
「でも、この前テレビでがんばってたじゃないですか。」
「あきらめないって思ったんですよ。それで24時間ずっとクリニック開け続けていたらちゃんと患者さんが来てくれるようになって、おかげさまで今こうして続いてます。」
「そうですよね、あきらめないってことが肝心ですよね。オレも豚たち見てあの津波の中、ちゃんと生き残ったんだから、これからもちゃんと仕事したいって思ったんですよね。」
「じゃあ、一緒に下増田盛り上げて、また豚舎やりましょうよ。」
「そうですね、親父もやる気になってくれているし。何とか踏ん張りますよ。」
「嬉しいな~、こうやって話してるとなんか勇気わいてきますよね。」
「ははは、俺の名前“ゆうき”っていいますから。」
「そうだった~!」
がっちりと握手しました。
江里ちゃんのシクラメンのように、99%の地獄の中にも1%の希望がある、そんな中をみんな生きています。雄紀さんの豚舎がまた復活しますように。そしてコンポストにしがみついた親父さんが再び元気を取り戻して踏ん張れますように。
江里ちゃんが電話してきました。
「あのね、哀しいことがあったの。」
「どうしたの?」
「昨日、最初に泊めてもらった二木(ふたき)の家に挨拶に行ったあと、もう一回閖上の家見に行ったんだ。そしたらね、わたしの部屋荒らされてた。たんすとか引き出しとか、引っ張り出されていて、哀しかった。もう閖上に行きたくないな・・・。」
この世には信じられない悪魔のような人間がいます。もうこれ以上傷ついちゃいけない江里ちゃんがこんなことでまた哀しい思いをしています。
玄関が空いていても、窓ガラスが外れていても、それは人の家だろう。夜の閖上に入って悪事を働く奴ら。地獄へ堕ちるぞ。
桑山紀彦
人の家に勝手に入って荒らすなんて…それも、震災で心身ともにどん底の人の家に…
ちょくちょく耳にしますね。
地獄におちな!って感じです。
豚 凄いですね。希望の光ですね。希望の光が一つ、また、一つ増えて、閖上が、東北がどんどん元気になりますように。
今日は内田篤人君をテレビでたくさん見ました(^-^)v
朝の通勤電車は 相変わらずですが、サマータイムの影響か、少し 人が少い気がします。
自然の猛威の隙間から奇跡の生還~自然が残してくれた再興への希望~沸々と湧く闘志~さあやるぞ!というストーリーを見せてもらいました。
どうにもならない屑野郎がまだ徘徊しているんですか。
もたもた国会と同様にいらいらと腹立たしい限りでがっかりです。江里ちゃんのショックが心配です。
奇跡の体験をされている方のお話を聞くたび、人間の強さを教えられます。これからも課題を乗り越えられ復興されることをお祈りいたします。
江里ちゃんのように、被災され立ち上がる気力を振り絞っている方々を傷つけることができる人間がいることも現実です。
桑山さん憎む心を持つことは、自分をも傷つけますよね。どんなふうに心を静めればよいのでしょう。罪を憎んで人を憎まずなんてできるほど、広い心は持てないなと思いました。
他人のものに手を出して幸せなのでしょうか?
東松島市の大変な状況を目の当たりにした時、呆然と立ち尽くし涙がでました。けれど、泣くのは僕達天国に旅立った者。生きている人達は前に進んで欲しいと言われているような感覚になりました。
明暗。明は希望、喜び、愛。暗は絶望、悲しみ、憎。
だけど、憎しみはダークサイドへの入り口ってスターウォーズでヨーダが言ってましたよ。
とはゆうものの・・・
遠く離れて冷静でいるから言える事。私が現場にいたら桑山さん以上に荒れ狂うだろうなぁ・・・。
家畜はみんな流されてしまったと思っていたのでびっくりしました。
奇跡的に皆さんが助かった、雄紀さんの農場が再建されるよう願っています。
みんなの希望になりますように。
福島の強制避難地区でも空き巣が多発していると聞きました。
他人の弱みに付け込んでの悪行は許せませんね!
誰も見ていなくてもお天道様はご存じです。
きっと天罰が下ることでしょう!
わが身を振り返り己をを律することを肝に銘じます。
平安のむかし、夜な夜な都大路を魑魅魍魎が百鬼夜行したといいます。人々は逃げまどい、陰陽師に助けを求めた。
科学技術がなかった時代、人々は闇を恐れ、人知の感知しない得体の知れない災いは、妖怪や怪物のせいにしたのであろうと思われます。それは妖怪や怪物などではなく、本当は人間自身が行った悪事もあったのではないでしょうか。
京都や奈良へ古寺を訪ねたりすると、仏像には優しさを湛えた如来像や菩薩像があります。それとは逆に憤怒の形相を湛えた四天王像や天部の像(毘沙門天など)という相反するものもあります。これは、人間には、「善と悪」、その両面が存在し、これらを導くためには優しさだけではだめだと教えているようです。
仏教では、こんな馬鹿な人間も大勢いるのだといっているようです。
被災者の留守宅に窃盗に入る。こんな人は僕も地獄に落ちると思います。
和歌山 なかお
4月からこのブログを読んでいます。山形南高校のボランテイア活動を新聞で知ったのがきっかけです。
桑山さんの文章には人間に対する優しさがあふれていると思います。毎日読まずにはいられません。
外国の方々から日本は素晴らしい国だと称賛されている中、がっかりするようなことはやはり起きるのですね。でも、究極は自分が他者を信じることができるかどうか、なのだと思います。
山形 nao
人間仕事があるって本当に大事ですね。人から必要とされてるって感じ・・・・自分は仕事の関係で知的に障害を持った方々の就労のお手伝いをしていますが、仕事がその人の自信や日常や人生を作ってくれると、常々感じています。それは、障害を持つ待たないに関わらず、誰しも同じですね。100匹のぶたさん、よくぞ生き残ってくれましたね。
「自分が必要とされている」
うまくいえませんが、生きていく力というか…とても大切なことだとわたしはおもいます
うまくいえなくてもなんだか伝えたくてかきました
忙しい毎日、先生体調崩さないように…(^-^)
始めまして
いろんなことを検索するうちに、先生のブログにたどり着きました。
生き残った豚の話、感動しました。
生き抜く人の強さを信じたいと思いました。
東北からは私の住む地は離れています。
ひたすらユーチューブの(テレビがない)
画面を見続けていた 3月11日の夜を思い出しました。
何ができるのかを今も問い続けています。
その中の一つが、地球ステージなのかなと思いました。
では、祈りつつ
日曜日に横浜のホテルにて、地球ステージを見た者です。すべてのエピソードが心を打ちましたが、何よりも気持ちが動いたのが「江里ちゃんのシクラメン」のエピソードでした。
それなのに・・・ こんな後日談があったなんて。本当に心が寒々としてしまいした。
でも、その「どろぼうさんたち」も泥棒をしたくてしたのではないのかもしれません。現地の状況が、その「どろぼうさんたち」の心に悪魔を住まわせてしまった、そう考えることはできないでしょうか。
何のなぐさめにもならないかもしれませんが、是非とも江里ちゃんにそのように伝えてください。
たくさんの江里ちゃんがいるのでしょうね。「地球のステージ」が、そんなひとりひとりの江里ちゃんを想像させてくれました。ありがとうございました。