セビ先生の人生

最終日、このゾーン4で子どもたちを教えている学校の先生たちを対象に「心理社会的ケアとはどういうものか」というセミナーを開きました。
 やる気のある先生30名ほどが集まり、Sonyの4Kビデオカメラについている「プロジェクター」機能を利用してスライドを映しました。
 小さなプロジェクターだけれど、バッテリーで駆動するしなかなかの優れものでした。そしてセミナーの最後に「はりがねの人生」をみんなで取り組みました。
実はこのウガンダの先生の中には南スーダンを逃れてきてこのウガンダで一から学び、先生になっている人がいるのです。その人がセビ先生でした。セビ先生のはりがねの人生はびっくりするような波乱に満ちていました。
 
「私が生まれた時のスーダンは、とてもよい国だったと思います。
 でも私が小学校に入ることには明らかに反体制ゲリラが台頭して来ていました。反政府ゲリラとして私の兄たちも戦い、そのうちの幾人かは拷問で殺されました。
 それからの人生は下がりっぱなしでした。両親はまともに働けず、小さかった私たちはどんどん飢えていったのです。そして11歳になった時、私たちはこのウガンダに逃れてきました。でもなかなか生活は安定しませんでした。
 やがて父が亡くなり生活は苦しくなりましたが、ウガンダ政府の奨学金を得て私は中学校に進むことができました。とにかく勉強に勉強を重ねたのです。
 そして高校に入る時、また試練がやって来ました。授業料が高くて大変だったのです。でもここでも私は試験をパスして奨学金を受け高校にまで進みました。そして先生の道を選び、教師になるための専修学校に進んだのです。そこで4年学び、つい私はウガンダの正式な教師になりました。
 今はもっと先生の腕を磨くために通信の大学に進もうと思っています。
 スーダンの内戦を生き延びたものとしてみんなに伝えたいのは、どんなことでもあきらめてはならないということです。
人生にはいいことも悪いこともあります。悪い時期だけを考えれば人生は暗闇でしょう。でも必ず光が見えてきます。それが希望という光なのです。
 だから私のはりがねの人生の先には懐中電灯をつけました。それがこれからの新しい人生を照らす光となると信じているからです。」
 
 小さな小さな懐中電灯を「未来」にあたる部分にくっつけるセビ先生。ぼくとつなしゃべり方だけれど強い意志で生きてきたことを感じました。
 子どもたちを導く先生としての人生。セビ先生の過酷な経験がきっと子どもたちに勇気と未来を与えていけると思います。苦労をした先生ほど、きっと子どもたちには教えられることが多いと強く感じました。
 
桑山紀彦

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