13歳のファラッハ。もうじき3月12日で14歳です。
11歳の時「忘れられない光景をつくろう」の粘土細工で「血まみれのお母さん」を作り、周囲を驚愕させたファラッハ。翌年映画「ふしぎな石~ガザの空」で主演をつとめ、見事に「天から見守っているお母さん」からのメッセージを受け止めてくれたファラッハ。映画制作を通じて「心が軽くなった」と言ってくれたことが、最高に嬉しかったクランクアップの日。
その後もちょくちょくとファラッハの元を訪れてきましたが、映画の撮影中は「医師になるのが夢」だったけれど、直後には「絶対に女優になる!」と大きく夢を変えていたファラッハ。
映画の撮影から2年半が過ぎた14歳になろうとしているファラッハの今の夢は実に「宇宙飛行士」になること!びっくりしました。
なぜ?と問うと、
「未知の世界を開拓したいから」
と言います。この封鎖されたガザにおいて、電気も水もなく希望も失う大人たちが多い中で、どうして「宇宙飛行士」という夢を語ることができるのか。涙が出てきます。
失業率は常に9割の世界の中で、胸を張って「宇宙飛行士」と言えるファラッハ。ここに心のケア、心理社会的ケアの役割があると思うのです。向き合うこと、吐き出すこと、乗り越えるのではなく受け入れること…。様々なテーマが心理社会的ケアの中にありますが、ファラッハはちゃんとそういったことを学びながら、絶望せず、将来への夢を語りました。
なぜこんな閉鎖された過酷な環境の中で心のケアが必要なのか。
もっと生活に直結するような活動が必要なんじゃないかという人も多いと思います。でも私たちは思う。どんなに資材や機会をつぎ込んでも、人の心の中にやる気や乗り越えようとするエネルギーがなければ全ては空回りだろうと。
ファラッハが今回語った3つめの夢、「宇宙飛行士になりたい」「未知の世界を開拓したい」という願いはこのガザにおいて、子どもたちの心が枯れていない大きな証しを得たと思うのです。そんな子どもたちの姿や言葉に触れた時、大人もまた頑張ろうと思えてくる。そんな心のエネルギーの連鎖を感じた訪問でした。
成績は常に優秀。きっとファラッハの夢はかなうと信じたいと思います。
桑山紀彦