9歳の頑張り

 太(ふとし)君はいま9歳。閖上(ゆりあげ)小学校の3年生です。

 津波で被災し、家は完全に倒壊して今は避難所で暮らしています。
「ぼくね、あのとき塾にいたんだ。生協の前の塾だよ。ものすごい地震が来て怖がってたら、すぐにお母ちゃんがやってきたんだ。で、“ここで待ってなさい”って言うから、塾の前で待ってたらお母ちゃんがじいちゃんばあちゃんとお姉ちゃんを連れてやってきた。僕は“学校へ逃げよう”って言ったんだけど、お母ちゃんは津波が来るから危ないって、市役所の方へ走ったんだ。それで良かったと思う。だって、小学校は津波に囲まれて、それからずっとでられなかったみたいだもん。だから僕は津波を見ていないんだよ。
 それから避難所へ入った。お姉ちゃんは東京で働いているお父ちゃんのところへ行っちゃった。だから避難所ではじいちゃんばあちゃんとお母さんの4人暮らしだよ。
 じいちゃんは腰が悪くてもう動けないから、ちゃんと動けるのは僕なんだ。」
「どんな仕事してるんだい」
「うんとね、まずは朝の水くみ。それから朝ご飯をみんなの分もらってくるんだ」
「それから?」
「昼間ではそこら辺の掃除。午後からはゴミの収集」
「どんなゴミ?」
「僕はね、カンカンの担当なんだ。だからカンを集めてるよ」
「カンって大変じゃないかなあ」
「そうなんだよ。中が残ってるとどろどろしちゃう。この前は魚の缶詰でね、油が垂れちゃって失敗しちゃった」
「怒られたの?」
「ううん、怒らないよ。太はよくやってるって言ってもらえるもん」
「がんばってるんだね」
「うん」
「なんでがんばるんかな?」
「うんとね、僕ががんばればみんなが元に戻るから」
「どういうこと?」
「うんとね。僕がここでいっぱいがんばれば、お父ちゃんとお姉ちゃんが戻ってきて、きっと家に戻れるんだ」
「家は?」
「みんななくなっちゃったってお母ちゃんが言ってるよ。でもね、きっとまた家が建つんだ。だから僕はがんばるんだ」
「がんばりすぎてないかい」
「・・・だってここに残って元気なのは僕だけだから。僕ががんばんないといけないんだよ」
 あとでお母さんと会いました。
「どうも、夜になると“怖い~!怖い~!”って泣くんです。何かを思い出すみたいで。本人はいつも聞くと“大丈夫だよ”としか言わないけど、私の目には無理しているように映る。きっとお父さんが単身赴任で帰って来れなくて、お姉ちゃんもそっちへ行っちゃって、私を守るのは僕だけなんだって、よく言ってくれるんですが、心配で・・・。」
 
 子どもたちの心にのしかかる負担。それをどう軽くしていくかが大切になってきています。
10-3
奈実香先生の診察
10-2
茨城から助っ人できてくれた越東看護師。全国から医師、看護師が駆けつけて僕たちの診療を支えてくれています。
 歩さんのご遺体に逢いにいきました。
 安らかなお顔でした。でも目の周りには泥がこびりついて、至る所に傷がありました。最期まで津波と戦っていた姿でした。
 その棺桶の上には、消防団のはっぴと「NATORI」のロゴのある帽子がありました。最期まで人のために奔走し続けた桜井歩さん。
 あなたの遺志を継いでいくために何ができるか考えていきます。
10-3
桑山紀彦

9歳の頑張り」への26件のフィードバック

  1. 桑山さん、本当に毎日ありがとうございます。一日中患者さんのために働いて、その後疲れているのは当たり前なのにブログアップ!!桑山さんたちを励ますはずの私たちが逆に励まされています。あゆむ基金、応援します。歩さんのご家族はじめ、被災者の方々の心の傷が一日も早くいやされますように。そして桑山さんはじめスタッフの皆さんが、くれぐれも無理をされませんように。ご自分たちの心のケアもきにしてください。福岡から祈ってます。

  2. ニュースでは福島原発で、決死の覚悟で3号炉へ放水した消防隊の活躍を讃えています。各局ともその消防隊の人々を招き労を労っています。
    しかし、報道が伝えないところで、英雄的活躍をした人々がこの震災で多くいます。あゆむさんもその一人でしょう。
    桑山先生、どうかその人々のことを、永久に伝えてください。そして、そんな人たちのことを、私たち日本人は誇りに思い、これからも生きていきたいと思います。
    私たちにできる、支援の方法の一つに、そんな人々のことを伝え、そして、いつまでも忘れないことです。
    桑山先生、あゆむさんのことを伝えてください。
    そして、私たちは、忘れません。
        和歌山 中尾より

  3. 桑山さんの思いが 新聞やテレビを通じまた多くの人に伝わりましたよ!
    私も一人でも多くの人に知ってもらえるよう頑張ります。
    『地球の詩』を一緒に歌った子ども達もお母さんたちも このブログを見て応援しています。
    みんな繋がっています・・・ね!

  4. 天国の歩さんに、紀くんの思いはきっと伝わっていると思います。あなたから聞いた歩さんの話、自分も絶対忘れません。最後までお年寄りに津波のこと伝えるために乗って走りまわった消防車にも会いに行きます。歩さんのように、人を助けるために自分の命を落としまわれた方がこの震災できっとたくさんいるでしょう。その方達のこともずっと思っています。
    被災した方々の心のケアが今後大切になってきますね。紀くんの力が益々必要とされますね。今後、行って話を聞くこと、絵を描いてもらってはき出してもらうこと(アートセラピィー)など自分で出来ることはないか考えています。

  5. ブログでの情報とても助かります。お疲れのお体でいらっしゃるでしょうに。ありがとうございます。
    太くんの素直な言葉は寂しさを耐えるために、一生懸命皆を喜ばせようとしていると思います。子供には重過ぎる責任感をあえて自分から引き受けていると思われるかもしれません。でも誰かの役に立てていると思うと、その瞬間だけでんも、マイナスの心を忘れられます。
    周りの皆さんは受け止め寄り添って感謝の言葉を口に出してあげてほしいと思います。
    歩さんや亡くなった皆さんの早すぎる死を無駄にすることのないよう、大事な人生日々大切に生きて行きたいと思います。

  6. 昨夜、NHK名古屋のニュースで大口町での講演のことをやっていて、偶然拝見しました。
    私は愛知在住なので、事前に知っていたら駆けつけたかった!ととても残念でした。
    でも先生方の現地の様子やお気持ちを知ることができて本当によかったです。
    先生が言われていた、「被災地にしてほしいことは励ましのメッセージをくれること。取り残された気持ちになり孤独に襲われている被災地に寄り添っていてほしい」とのお言葉にすごく気付かされました。
    今まで「頑張ってください」「応援しています」という言葉なら誰でも言えるし、そんなの何もしていないのと同じ。
    なにか自分にできることを行動に移したい!とばかり思い、
    ざわざわと焦っているところがありました。
    が、心を込めた言葉だけでもいいんだ・・・と。
    もちろん自分にできる行動を起こしつつですが。
    日本中の人たち、世界中の人たちが被災された人たちや被災地で頑張っていらっしゃる方たちを孤独にはしませんよ!
    同じ日本人として、人として、いつも一緒にいますよ。
    心はいつも寄り添っています。
    先生のことを少しでも多くの人に知ってほしくて、自分のブログでもご紹介しました。拙いブログですが、1人でも多く知ってほしいと思いました。
    どうか、ご自身の体や心をほんの少しはいたわってくださいね。
    遠くからですが、お祈りしています。
    愛知県 西尾令子

  7. 太くん。。
    まだまだ甘えたいのに、このブログだけでもがんばりすぎが伝わります。
    がんばることが気晴らしになればいいけれど、そんなにしょいこまないで。。と思います。
    太くんみたいな子がたくさんいるんでしょうね。
    そんな子たちが元気になれるように出来ることがないか探さなくちゃ。

  8. おはようございます。必死に動いている現地をもっと、もっと多くの方にしって頂きたく思います。ブログを者シェアーさせてくださね!!今、PRAY FOR JAPAN動画が世界中から・・・届けられた・・祈り愛・・・です!!
    http://www.youtube.com/watch?v=sOsgaYzHOpU
    笑顔で・・・・今日も元気に・・・祈っております。。

  9. やっと、昨夜我が家に戻ってきました。
    家の中はまだグチャグチャです。
    あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと思いながら何もできずにもうこんな時間になってしまいました。
    カラダが動かないんです。
    テレビから流れてくる『頑張って』のメッセージが重いんです。
    でも、まだ私には家がある。服もある。靴もある。
    だから、頑張らなきゃって思うのですが頑張れなくて
    眠剤が飲めないんです。
    夜、地震が起きて逃げられなくなったらどうしよう…と思うと不安で不安で
    誰かに、どこかに吐き出したいのですがどうしたらいいかわからないんです。
    病院に行きたいのですが、家族と離れるのが怖いんです。
    離ればなれになったらどうしようと思うと怖くて
    車の運転もできないので、バスと地下鉄で病院に行かなければなりません。
    地下に下りるのが怖いんです。
    弱虫ですね‥
    応援メッセージじゃなくて、愚痴みたいになってすいませんでした。
    陰ながら、応援しています。
    早く、皆さんに笑顔が戻りますように

  10. 桑山さん、石橋さん、須藤さん
    本日、東村山第二中学校教員一同で義援金を送らせていただきました。少しでも助けになれば嬉しいです。
    みなさん、お体に気をつけて頑張ってください。
    東村山第二中学校 谷口弘美

  11. 太君のようなお子さんはきっと大勢いるのでしょうね。
    何かしていないと不安な気持ちになるのかしら。
    ちょっとした手遊びとか歌とか、小学生仲間でできたらいいんでしょうね。
    桑山さんや地球のステージのみなさん、そして、応援に来てくださっている
    みなさんも頑張り過ぎないでくださいね。
    私も何となく落ち着かなくて気が付くと甘いものを口にしています。
    皆さんが大変な時に、私はもっと普通に生活しなきゃいけないのにごめんなさい。

  12. 20日のブログをみました。NICCOの折居さんと会われたようですね。私は19日の土曜日にNICCOの事務所に携行ガソリンタンクが欲しいとの事なので持って行きましたが、ガソリン自体が何とかならないかとの話で、群馬でスタンドを20数軒持っている友人に電話しましたが、まだ19日の時点ではうまく行きません。色々な方法をやってますが、被災地の皆様に喜んで戴ける事ができていません。でも参加しているNPO・NGO以外の方も何とかお手伝いしたいと思っています。今は良い方向が見つかりませんが、日本人が昔の様な思いやりの心を取り戻す良い機会と思っています。被災地の方には頼りないと思われるでしょうが、私は人々の気持ちの変化が、今後日本を良くする足がかりになるのではと、ある面期待をしています。私は昨年から「助けるは助かる」とあちこちで言っています。助かりたいと助けるのではないですが、だんだんと賛同してくれる人が増えてきています。
    頑張ってください。マイク&由美子

  13. 先日こちらのブログを教えて頂いて、初めてコメントいたします。
    素晴らしい毎日の御活躍と、地元の皆さんの様子が手にとれるように
    わかる描写を読み手として感謝しております。
    子供の心がぎゅーっと押しつぶされそうになって
    いる時、どうしたらいいでしょうか。この9歳の
    お子さんと前記の19歳の少年のお話に胸がつまってしまいました。
    でも19歳のお兄さんにぜひお伝えください。
    わんちゃんはまだどこかで生きているかもしれませんよ。
    誰かに保護されて、今も飼い主さんを待ってるわんちゃんが
    沢山いますよ。宮城県には被災した動物を助けるために働いている
    ボランティアの方も多いそうです。でももし不幸にしてわんちゃんは天国に行って
    しまったとしても、犬を飼っている人たちはそれを「虹の橋を
    渡っていった」と言いますけど、飼い主を恨んだり憎んだり、
    悲しんだりまた病気で痛い思いをしたり、そんなことは全くない所だそうですよ。
    いつもきれいな水が流れていて、走っても走っても緑が続くきれいな楽園のような所だそうです。
    一緒に逃げられなかったけど、わんちゃんはお兄ちゃんが泣いて暮らしているのを
    楽園から見ています。「お兄ちゃん、元気だして!」って言ってると思います。
    避難所の生活はほんとに大変だと思います。
    お友達がいればちょっとは気持ちも楽しくなれるのにね。
    こんなに大きな災害を大変して、小さな子供の心はどうなっていくのか、
    ちゃんと対応して行ける子もいるでしょうが、潰れそうな子に目を忘れずに
    むけていかないといけないですね。
    桑山先生、スタッフの皆様、がんばってください。
    またブログ楽しみにしております。

  14. 太くん、本当にすごいです。
    頑張りやさんというだけじゃなくて、
    誰かの為に頑張ろう、元気な人は自分1人なんだ、と そういう思いで活動ができることがすごいと思います。
    桑山さんの公演から、たくさんの人が地球のステージを応援して下さって、
    桑山さんたちを応援していて、
    被災地にいる皆さんを応援しています。
    まだまだ、この輪が広がってほしいです。

  15. 太くん、自分がやらなきゃ?とがんばってしまうのですね。
    でも、がんばるしか今の彼にはないのでしょう。
    「お母さん」と甘えてる場合じゃないのでしょう。
    でも、少しずつ「怖いよ」「いやだよ」とキモチを出せるように。涙を流せるように。
    そのためには、この非常事態がとりあえず過ぎて、余震のない毎日になり、プライバシーが確保されること。通う学校があり、お風呂に入り、暖かい食事が彼のお茶碗でお箸でできること。彼の布団で寝返り打って眠れること…。
    その先のこと、みんなで考えよう。できるだけ多くの人が安心して暮らせるように。
    どうか、少しずつ春がきますように。揺れませんように。眠れますように。

  16. テレビもラジオも、元の番組に戻りつつあります。
    北海道は、物流も電力もさほど影響がないので、
    震災のことを忘れないように、
    自分で出来ることを探るために、
    こちらのブログを読んでいます。
    スタッフの皆さんや、
    被災者の方々の精神面の疲労が心配です。
    私も子どもに関わる仕事をしています。
    一日も早く、
    子どもが子どもらしくいられるようになることを、
    祈っています。

  17. 太くんはアカペトそのものの様で、はからずも地球のステージのミッションを体現していますね。大人が教えられなかった事を自然という大きな力が教えてくれたのでしょう。彼はもう桑山学校の卒業生です。他所にもたくさんの第2の太君が必ず居るに違いありません。多くの子供たちが将来の日本を背負ってたつ逞しい人間になる希望を感じています。
    「地球のステージ」永遠であれ!!!

  18. 26日、あいの里地域おやじの会のおやじ2人が出発します。 ご迷惑が掛からぬように子ども達の感想文と物資をお渡しし、28日ボランティアをしてから帰る予定です。 
    何を持って行くか思案中ですが、そちらの要望をうかがいたいと思います。
    お忙しいでしょうが、ご連絡下さい。

  19. 太くん 私がおじからもらった言葉を贈ります。
    頑張りすぎないように 頑張って。
    いつも笑顔で!!
    泣きたい時は がまんしないで泣きましょう。
    すっきりしますよ。
    私はよく泣きます。たくさん泣きます。
    すると・・・心から笑えるようになります。
    いつも応援してます。

  20. 桑山さん お久しぶりです。
    酒田の芳賀久子です。
     
    名取市の被害状況を見て
    桑山さんのことを思い出して
    そしたら・・・・・
    いつも被災者を助けている桑山さんが
    被災者になるなんて・・・ なんで!!
    でも立ち上がりの早い桑山さんは
    すでに救援者として活動していました。
    ご自身のお身体も大切にしてください。
    今のわたしになにが出来るのか、
    すくなくとも、
    この今の気持ちを持ち続けることだけはできるはずです。
    すべてこれからです。
    被害に遇われた方たちといっしょに歩んでいきましょう。
    息子さん、大きく、たくましく、賢くなったんですね!

  21. 地球のステージはすごいです。
    愛知に友人を連れて行き、その友人が大阪で地球のステージをやりたい、と言っている。
    それをこのブログに書くと、京都の教員のNさんから、ブログ見ました!是非やりましょう!を連絡を頂ける。
    勝手に人と人がつながっていく。
    地球のステージはすごい。
    周りにいる人はすごい。

  22. 桑山先生、他スタッフのみなさま。
    何と伝えていいか、Blogを拝見させて頂いて涙がとまりませんでした。
    皆様の心優しいお気持ちと行動を本当に感謝しております。
    今すぐ駆けつけて何かをお手伝いしたいですが、すぐに出来ないのが悔しくてたまりません。
    何も力になれない、情けないです。
    先生、スタッフの皆様もお体に気をつけられて下さい。

  23. 大口の公演ありがとうございました。
    みんなが頑張り過ぎてないか、心配です。桑山さんも大丈夫ですか?
    公演前に一生懸命友達にメールしたり、コミュニティーFMで宣伝させていただきました。いつもの何倍も頑張りました(^◇^)┛
    一昨日夜のNHKニュースの後はブログにつながりにくくなりました。東海地方の人がたくさん読んでくれたようです。
    友達からも「あゆむさんのブログ読んだよ」とか「義援金の送り先教えて」とメールをもらいました。
    私たちも復興を目指し、応援してます!!!見守り続けます!!!

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