ガザ入域、活動開始

ガザに入りました。

エレズの検問所は1年ぶりでしたが、完全に一眼レフカメラが持ち込めなくなっていました。つまり「レンズが兵器利用されている事実があるので、単独で外れるレンズの持ち込みは禁止」となっているわけです。

うちは今回GH-4という4K動画撮影のできる一眼レフ機材を持ってきていましたので、急ぎアシュケロンで泊まったホテルのオーナーに預かってもらい1時間遅れで検問所を抜けました。

国防のためだから仕方ないんでしょう。この制限を伝えるイスラエル軍の兵士も実にすまなさそうに「ごめんね~」といってくるので、怒る気力もわきませんでした。

実際僕たちはこのカメラのレンズを兵器には使わないけれど、誰かが盗み出してハマスに渡し、ロケットランチャーの軌道維持用に使う可能性もあるわけです。これがガザの現状です。

さて、今年からラファのチームは2つの団体に「指導」ということで入り、毎日の活動を舞台に、心理社会的ケアを行っています。最初はハインユニスの「シャルキーヤ」という団体です。代表のメドハットさんが言いました。

「いや~、こんなに子どもたちが集中できる心のケアは今まで見たことがないよ。心理社会的ケアは常に”何かをつくる”毎日だ。それが子どもたちをうまく刺激していて、あっという間に時間が過ぎていく。

特に今取り組んでいるジオラマは、子どもたちの願いと共に、今問題となっていることが何なのかがあぶり出せている。そして何よりも形になるので、突然の訪問客にもすぐに説明できる。全くたいしたものだよ、心理社会的ケアは!」

とても好評でした。

ジオラマの「樹」は出来合いのものは高価だし、つくろうとすると手間がかかるしということで、困ったスタッフは考えてスポンジに緑の絵の具をしみ込ませて、三角に切り、それを爪楊枝に刺して設置するという方法を編み出していました。

資材がなければ、その国で調達できるもので満たしていく。まさに「考え、想像し、形にする」という心理社会的ケアを地で行くような発想でした。でも、まるでおでんのこんにゃくのようにすぱっと三角に切られた形の樹はないわけで、しばし考えてそのスポンジを指の先でちぎってへこみをつけ、形も樹木らしいものに変えてみました。

ちゃんと樹っぽくなり、みんなから拍手をもらいました。

「こうやって自分で考え、想像し、形にしていくことが、心理社会的ケアの醍醐味ですよ~!」

こういったスーパーバイズが今回の僕の役割です。

続いてもう一つの団体「ワリード」へ。

こちらのジオラマは既に完成間近でした。みんなでこの「理想の街」にかける思いや意味をディスカッションしましたが、現在の問題は占領による完全封鎖で電気を起こす油が滞っており、ひどいときは1日4時間くらいしか電気が来ない生活であること。子どもたちみんなが訴えていました。

電気不足。それは生活の根底を崩し、人間らしい生活を滞らせている最も大きな問題の一つです。これの解消には封鎖を解き、自由な往来を可能にすること、つまりパレスチナ問題の改善が必要です。どれほどの道のりが必要なのでしょう。

この子たちが大人になったとき、

「私は生まれてから電気がまともに来たことがありませんでした。そんな暮らしを20年もしながら大人になりました。」

そんな自己紹介をしなければならない事態なのです。

ガザにおける問題。それは5年おきの空爆(次の”予定”は2019年のはずです)だけではなく、日常的な電気不足。それを一刻も早く解消しなければならないと強く感じました。そしてそれは特に資源の枯渇でも自然災害でもない、人間の争いによって起きている意図的な問題であることを改めて提起しなければならないと思っています。

桑山紀彦

 

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