今日、東ティモールに着きました。
早速午後からバイロピテ診療所に入り、早速診察を始めました。
ダン先生は、僕が来たのを確認すると、
「ケイ、すまん今日はこのあと予定があるんだ。あとの患者さんをよろしく頼む!」といって出て行きました。
いきなりの院長代行です。
テトゥン語もフル稼働させながら、なんとか診察が波に乗って、20人を超えたあたりから、
「なんでこんなに高熱の人が多いんだ?」
と思い始めたのです。
もちろんこの雨期のまっただ中なので、マラリアを疑うのが当然なのですが、それにしても39.8度、40.1度だの、尋常ではない熱の患者さんがやってくるのです。
ある家族は4人の子どものうち3人が40度近い熱を出していました。マラリアを媒介するのは「蚊」です。同じ蚊にさされたのでしょうか・・・。
「これは、新型インフルエンザが激発しているのではないか」
そう思わざるを得ない事態。いくら雨期でも、こんなに高熱の人が続いて受診するのはどう考えてもおかしいです。しかもマラリアと新型インフルエンザの症状はとても良く似ています。
しかし残念ながら、インフルエンザの簡易診断キットは国立病院にごくわずかあるだけ、タミフルも、この国にはほとんど在庫がありません。もちろんバイロピテ診療所にもありません。
「これは、一体どうするといいのか」
初日からいきなりの危機的局面です。
マラリアを疑って、全員にマラリアの検査指示を出しましたが、みんな「陰性」だったら新型インフルエンザを疑うしかありません。でも診断手段も、治療手段もこの国にはないのです。
「東北国際クリニック」として、新型インフルエンザの診断をし、治療を行い、そして予防接種にまで取り組んでいる僕たちが、国が違うだけで、新型インフルエンザを手をこまねいて見ているだけなのか・・・。
とにかく対処療法を試みて、症状が重くないことを祈りながら付き合っていくほかありません。この不平等と不条理が、世界の現実です。
桑山紀彦
う~ん…。世界の現実か…。でも、人が対処していくしかないんですね。人と人がつながって対処するしかない。とすれば…つながるしかない。何ができるんだろう。わからないけど、問題解決のために…少なくとも悩む人が増えていけば…。とにかく、桑山さん、がんばって。桑山さんにしかできないこともあるんだから…。わたしは、今のところ、祈ることしかできません…。山しん。
もし新型インフルエンザだったら・・・?
今の私にできるのは、子ども達に伝え一緒に考えること・・妙案はないけれど、この気持ちが桑山さんの活力の一部になれたらいいなと思います。
インフルエンザの簡易診断キットや、タミフルを日本から送ってあげることはできなのでしょうか。
そうですね、診断キットやタミフルがあると助かる命もあるとは思うのですが、正直数が半端じゃないとも思います。
100や200という数ではないので、半端に持っていくと、それが故に助かる人と、在庫が切れて助からない人が明確になってしまうわけです。
じゃあ、みんなが助からないということで「平等」が保てるのか・・・という論議になってしまって、これまた悩み込んでしまうわけです。
そんなときに有効なのが、山しん神父様がおっしゃるように「この国の中でできること」を考え、それを拡大していくことかもしれません。
今は「実はそれがマラリアではなく、新型インフルエンザの可能性があるのだ」という情報をみんなが共有することではないか、と。
そうすることで、効かないマラリアの薬を飲んで半端に時間を過ごすよりも、インフルエンザを疑い、適切な水分補給と適切な解熱剤を使うことで、助かる命が増えていくと思います。解熱剤はたくさん東ティモールにもありますが、マラリアに使う解熱剤の一部は、インフルエンザには効かないものだったりするので、情報の共有だけでも、有効な手だてが打てるものです。
そして何よりも、こうして皆さんが東ティモールの実情に関心を寄せてくださり、コメントを書き込んでくださったりすることも、この地で働く僕たちに勇気を与えてくれます。
「孤立」こそ、病気から立ち直るために一番回避するべきことだと思うので。
ありがとうございます。
桑山紀彦