グレノの熱き集い

今日はグレノでPSF(健康推進員)の能力強化研修でした。

PSFは私たちの活動の要(かなめ)。村に住みながら健康に関する知識を活動して、村人の不調を少しでも早めに把握し、医療につなぐための存在です。

年に何回か、こうした「能力強化研修」を行い、学ぶ機会とその気持ちの高まりを支えていきます。うちの現地代表、アイダ医師が的確に指導を行っていきますが、今日嬉しかったのは村に配置されている医師たちの中で、やる気のあるクラウディオ医師がいい講義を行ってくれたことです。

村に配置された医師たちは以前のブログでも紹介しましたが、聴診器さえ当てない本当にやる気のない人たちがほとんどなのに、クラウディオ医師はとても評判の高いやる気の医師なのです。今日は「皮膚病」ということで自らパワーポイント原稿を作り、PSFのみんなに披露していました。

ビジュアルにも長けたこういった講義は村に住むPSFのみんなにとってはとても新鮮かつ納得の行くものです。非常に内容の濃い研修になっています。

後半はグループに分かれて健康に関する紙芝居のやり方などを具体的に教わっていました。こういった「人材育成」が国際協力では非常に大切。明日は2日目。なんとドクターKがPSFの活動を称え、やる気を出させる歌をつくるという、なんともすごいカリキュラムが用意されている、それが2日目です。

ダン先生とバイロピテクリニックのその後です。

今朝、オーストラリア人の理事たちはバイロピテクリニックに勤める東ティモール人スタッフに次のように伝えました。

「来週月曜日から2週間、病院を休みにする。しかしダン医師はそれに従わない。もしも月曜日ダン医師を支えるため、出勤したらその時点でその人物には給与を払わない。」

というものです。これは言い換えれば、

「ダン医師の味方をするものは月曜日に出勤するといい、それはすなわち解雇の対象となる。」

こんなことが行われています。

一方のダンは今晩、昔大統領や首相を経験したノーベル平和賞受賞者のラモス・ホルタを訪ね、打開策を探っています。そこにはダレの街で修道院を運営するシスター・ルデスも同席しているとのこと。地元の有力者です。果たしてこのアプローチが事態の改善につながればいいと思いますが、来週の月曜日、ダン先生はいつものように出勤し、患者さんを診ようとするでしょう。そこに東ティモール人のスタッフは合流するのか。合流すればお金を出しているオーストラリア人の支援団体からは給与を切られ、実質上の解雇となります。

出勤しなければ給与はつながるけれど、ダン先生とはもう仕事をしないということを表明することになります。そんな厳しい選択を迫られているバイロピテ・クリニックのスタッフのみんな…。

どうもオーストラリア人理事が問題にしていることの一つに「無償診療」ということがあるようです。この病院は確かに信じられないことですが、全て「無料」です。ディリ市内の国立病院だって表面的には「無料」をうたっていますがいろんなところで小銭が必要な状況です。そんな中にあって、このバイロピテだけは何があっても全て「無料」を貫いてきました。

それはダン先生の目指すもの、そして姿勢なのです。

理事たちはそれを問題にしています。一人1ドルでもいいからもらって有料診療にしろ、と。でもダンはずっとはねつけてきました。つまりダン先生は「無償」のために身体を張っているということです。理事たちにしてみれば「何を時代遅れな…。」という思いなのかも知れません。でもダン先生は、

「(経済的・健康的な)弱者からはお金は取れない。」

とずっと言い続けています。そしてダン自身も実は全く給与を受け取っていないのです。つまり彼は「無償で」働いているのです。この18年間。

みんな彼のことを応援するために、住居を無償で貸し、食事も周りの人が無償で提供しています。そんな「無償の中で成り立っている人生」を送っているダン先生。どんなに経済的に問題になっているといっても、そんな希有(けう)なことができているのは、世界広しといえどもここだけではないでしょうか。

そこに世俗の波がきたわけです。

適切なサービスを提供しているのだから対価を取れ、と。

この闘いは一体どこに落ち着いていくのでしょうか。

とにかく心配でなりません。

桑山紀彦

 

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