東ティモール3日目

今日は我が「地球のステージ」の現地スタッフみんなが集まっての大ミーティングでした。

 年に数回しか開かないみんなが集まる日ですが、こうしてみんなと会うと彼らを日本から支えているという気持ちになり、とてもやる気が出ます。
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 彼らの給与だけでも結構な金額になりますが、JICAからの資金だけでまかなっているわけではありません。半数のスタッフの給与は「地球のステージ」の公演費用から捻出しています。つまり皆さんが公演を開いてくださることで、この彼らの生活を保障し、その彼らが良い仕事をすることで、東ティモールが豊かになっていくわけです。公演回数を減らすわけにはいきません。

 さて、今日のミーティングで最大のテーマは、

「やる気のない保健所スタッフをどうやったら動かせるか。」

 でした。

 私たちは包括的健康増進事業を支援しています。それは東ティモールの政府が提唱している保健に関する事業ですが、基本的に各地域にある保健所がそれを管轄し、一生懸命運営していかなければなりません。

 しかし、その保健所に勤める行政スタッフに全くやる気がなく、全国的にこの健康増進事業は停滞しているわけです。それを少しでも活発にするために、私たちは保健所のスタッフに寄り添い、何とかやる気を出してくれるように活動を重ねています。

 しかし、現実はうまく行かず、保健所スタッフは月に1回の村への巡回診療やワクチン接種にも来てくれません。そこで、この要となる保健所スタッフに、どうやったらやる気を持ってもらえるか、国際協力の現場で常に問題になる、「やる気」「モチベーション」の問題に取り組みました。

 うちの陽さんがうまくみんなからの意見を引き出していきます。それぞれの意見は付箋に書かれ、この「課題チャート」に貼っていきます。すると、うちのスタッフは本当にやる気があって、どんどん意見が出てきました。
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「ちゃんと明日来てくれるように、前もって電話する。」

 う~ん、そりゃそうだけど、根本的な解決にはならないかもなあ。

「ちゃんと来ないと私たちも付き添わないと、伝える。」

 う~ん、そりゃあそうだけど、これでは結局来ないということで終わってしまうかも知れないなあ。
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 みんなで頭を抱えます。行政スタッフのやる気を引き出すということは、本当に大変なことであり、また重要なことなのです。すると、サマラ村のディボルジオさんとこんなやりとりになりました。

桑「みんなのやる気はどうしてある?」

ディ「村の人の健康が増えれば、それを見るだけで嬉しいからだなあ。」

桑「みんなは、そこに住んでいる人だから、直接的にそれを感じるよね。」

ディ「そうだ、直接ありがとうをいってもらえるよ。」

桑「保健所の人たちにはそこが見えていないのではないかなあ?」

ディ「うんそうだと思う。」

桑「じゃあ、住民と保健所の人たちとの間に壁があるんじゃないのかな?」

ディ「そう、そうだね。そこがなくなるとやる気が出るのかも!」

 良い感じで理解が進んできました。

 つまり、保健所の人たちのやる気が上がらないのは、自分たちがするべき活動が、どんなふうに住民に影響しているのか全く見えていないので、やる気につながっていないというところまでわかってきたわけです。うちのスタッフはその村に住みながら活動を展開しているので、自分たちがやっていることの意味が見えているし、住民からの直接的なレスポンスがもらえているわけです。それは例えば「ありがとう、あなたのおかげで病気がよくなったよ。」などの”言葉”がもらえることで、”よしまた頑張ろう”と思えている自分の気持ちにも気づくことができたようでした。

 だから例えば、今後の課題としては保健所スタッフと住民が交流するような場面を設定するなどして、この両者の間にある「溝」を埋め、「壁」を低くすることがやる気を引き出す要因になるのではないか、というところに気づきが得られました。

 一つ一つ、共に悩み、考え、進んでいきます。お互いが意見を出し合って論議できる。これが国際協力の魅力だと思いました。

 

 モチベーションを上げるということは国際協力の永遠のテーマだと思います。しかも「お金の提供ではない形でモチベーションを上げていくこと」は、いつも大きな課題です。

 頑張ってもらうためにお金を払うことはできないことではありません。でもそれは持続可能性に大きな疑問を提してしまいます。つまりいつまで誰がその人にお金を払い続けるのだ?という最大のジレンマが襲ってくるからです。

 だから私たちは「お金ではない価値観」「お金ではないやる気」を探っていかなければなりません。途上国のみんなは食べていくことに必死です。でも、だからといってお金を払えばそれで解決なはずがない。途上国であれ先進国であれ、お金ではない価値観を追い求めていくことが大事だと思います。

 もちろん絵に描いたようにうまく行くものではないけれど、かといって安易にお金に頼った形を取らない道をどう見つけていくのか。それが大切です。

 とりあえず、今日の全体ミーティングでは、村人がどんなふうに感謝しているか、保健所の人たちが気づく機会に乏しいということが見えてきたことが、収穫だったと思います。

 東ティモールに関わって15年。まだまだ多くの課題を目の前に、私たちのやる気は上がり続けています。

 さて帰り道、グレノの街が見渡せる峠道でドローンを飛ばしました。
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 風もなく、穏やかな飛行になりましたが、すぐに子どもたちが集まってきてくれます。本当に東ティモールの子どもたちは素直で良いです。

 陽さんが、

「みんなでジャンプしよう!」

 とさそうと、みんなで頑張ってジャンプしてくれました。その時のドローンからの映像の切り出しと、その様子を明ちゃんがEOS 5D Mark-IIIで押さえた写真でお届けします。
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 明日は、本格的に東ティモールの自然の撮影のため、二機のドローンを使って撮影です。

 雨期の終わりの雨が今日は夜まで続いています。

 明日は晴れますように!

桑山紀彦

東ティモール3日目」への2件のフィードバック

  1. 問題点のつかみ方から教えていかなければならない~根本的なことからだか辛抱と根気が要りますね。
    自分の感覚では気が付きませんでした~大変でしょう。

  2. いつも、詳しいブログを読んで、知ることができ、振り返ることができます。
    子どもの頃、進んで勉強すると、先生からご褒美のスタンプやシールをもらい、ほめられるので、嬉しくてどんどん勉強しました。
    が、そのシステムがなくなると、嘘のようにぱったり勉強しなくなりました…
    しばらく経って、自分で知りたい!調べたい!ことに出合うと、ご褒美がなくても、嬉しくてどんどん勉強しました。
    人の役に立てたり、笑顔が見られたりすることは、大きな喜びです!

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